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◆2007.5.20,21 「犀川辰巳治水ダム建設事業」公聴会で公述公述内容は過大な想定洪水量と辰巳ダムの洪水防止効果


【辰巳ダム日誌】2007.5.20「犀川辰巳治水ダム建設事業」公聴会で公述。
 場所:金沢市文化ホール(金沢市高岡町)、20日(13時半から20時15分)、21日(13時半から20時15分)
 公述人(中 登史紀)の公述予定時間:20日(日)17:15-17:45
(若干早めに開始)
 公述の内容:有史以来発生したことの無いような過大な想定洪水量公述原稿

公聴会の報告(6月17日更新

@この公聴会の意義
 この公聴会は、辰巳ダム事業が公益性のある事業か否か、事業の認定あるいは事業の認定の拒否をするか、事業認定に関する処分を行う北陸地方整備局長が判断するにあたり、一般の意見を聴取するために開催されたものである。小澤によれば「事業によるプラスの影響又はマイナスの影響が広い範囲に及ぶ事業については二十条の要件の認定、とりわけその三号の認定(利益の比較衡量)には微妙な価値判断が必要となる場合がある。この場合には、比較衡量の基準として社会に支配的な価値観を探求する必要がある。このため、、、、、利害関係人以外の者からも広く意見を求めうることとするのが適当である。」
平成13年の土地収用法改正以前では、第二十三条の公聴会の規定において「必要があると認めるとき」(裁量的開催)のみであった。事業認定庁が義務づけられてもいない、わずらわしい手続を遂行するわけはなく、開催されたことはなかった。
平成13年の土地収用法改正では、事業の公益性の認定が社会の変化に的確に対応するよう、事業認定手続において、住民参加の手続を保障することなどにより、その透明性・公正性を確保するため、第二十三条に「義務的開催」の条文が付け加えられた(下線がある部分)。

土地収用法(公聴会)
第23条 国土交通大臣又は都道府県知事は、事業の認定に関する処分を行おうとする場合において、当該事業の認定について利害関係を有する者から次条第2項の縦覧期間内に国土交通省令で定めるところにより公聴会を開催すべき旨の請求があつたときその他必要があると認めるときは、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない。

 この公聴会は上記の規定に基づき、辰巳ダム建設事業に異議をとなえる利害関係人の開催請求によって開催されたものである。北陸地方整備局担当者の話では、管内で初めての開催であるとのことである。

A事業の認可も事業の認定も同一の北陸地方整備局長(あるいは国土交通大臣)
 事業を認可した本人が、この事業は公益性がありませんよと事業の認定の拒否をするわけはないと思うのが一般常識である。この一般常識と異なるのが、この土地収用法のしくみである。事業の認可は「河川法」、事業の認定は「土地収用法」である。同一人格が、いずれの行政処分も行うことになるが、それぞれを別個の人格として観念することは公法学上の常識であるのだそうだ。この考えは、行政法の権威等もそれはまずいから、公正中立な委員会を設置して事業の認定の処分をやるべきであると指摘しているということだが、これは行政のしくみ全体にかかわる重大な影響をもたらすようなことでとてもできない相談らしい。
想像するに、@行政処分の適否をいちいち第三者に判断を仰ぐということは、行政は自身の判断と責任を持って業務を遂行できない存在であり、信用できない存在であるということになるがそうではない。Aまた、第三者機関が膨大な行政処分の適否を適正に判断できるか。B仮に膨大な処分を行う第三者機関を設置したとすれば、またこれをチェックする第二の第三者機関が必要となる? というようなことで結局は、振り出しに戻って、行政(国土交通大臣)を信用してくれということになるのか。
 一応、北陸地方整備局では、河川法の職務は「河川部」、土地収用法の職務は「建政部」であり、対等な位置にあり、公正性、中立性を担保できるとのことである。(北陸地方整備局担当者の弁)

B実際の公聴会
 北陸地方整備局の意志に注目していたが、最初と最後の公述人の配置にその意志が明確に反映されていた。
 最初は、起業者である石川県知事の代理人(ダム建設室長他)
 最後は、辰巳ダム推進連盟の会長である。
 住民の生命と財産を守るために辰巳ダムは必要であり、明日にでも洪水が起こるかも知れない、一刻も早く建設をするべきだというわけである。
公正性、中立性を保ちながら、情報を集め、公正な判断をするかどうか、注目していたが、公正性は無いと宣言したようである。これで事業の認定の拒否はなく、間違いなく、「事業の認定」だろう。

(続き)

(言い訳・・・・昼間は田舎で肉体労働?に従事して疲れているので少しづつ更新します(^_^;))

 聴講者を含めて賛成、反対が二分され、若干とげとげしい雰囲気の中で、ほほえましい光景?から紹介します。
 公述人は21人、うち賛成サイド10人、反対サイドは11人。おおよそ交互にサンドイッチ状に配置されていた。賛成サイドの方はすぐにわかる。一様に公述の始めに「事業の賛成の立場で公述します。」と宣言するからだ。反対サイドで、公述の始めに「事業の反対の立場で公述します。」と宣言した人は一人もいなかったはずである。当方も、言っていないが、なるほど公述は賛成、反対を宣言して始めるものであることを初めて理解した。勉強になりました、ということを言いたいのではなく、賛成サイドはすべて動員だろうと想像していたが、それを裏付けるようで可笑しかった。さんざん、打ち合わせや作戦を練って公述の予行演習をしていたのだろう。
 公聴会は一般の意見を聴取するために行われるものである。このように、行政から動員されて行政の意向に従った公述は一般の意見とはいえず、一般の意見を聴取したことにはならない。タウンミーティングでの「やらせ質問」と同じことである。稚拙なやり方でレベルが低すぎる?、こんな公聴会を公聴会として納得し、こんな行政を許している国民が馬鹿なのであろうか。

(さらに続く)
公聴会に若者がいない!
 若者がいない。起業者の石川県の職員は50歳前後であるが、後の賛成、反対を問わず、ほとんどが60歳以上の高齢者である。ただひとり、碇山氏が40代である。
賛成グループは、○×組合長、○○町会長、行政OB,推進連盟会長など、年寄りばかりである。公述の内容から受ける印象は、「しがらみと損得にまみれた連中」である(必要悪ということもあろうが、)。噂話たぐいの逸話で感情を刺激する話術の巧みな方々が多い。将来の地域環境をどうするかについて議論するにはこころもとない人達ばかりである。
 反対グループも高齢化している。当方も60歳。昭和55年に関心を持って勉強を始めてから、すでに27年である。いろいろ教えを頂いた方々も数多く亡くなられた。欲得とは無縁の硬骨漢で理想主義者であり、将来の地域環境についての夢に溢れた方々が多いが、これからの時代を担えるわけではない。
活力あり、批判精神の大いにある青年も多く、老齢化した金沢でないことを願いたい。金沢という町に、役所の圧力と言うより、役人の意向を汲んだ民間の自己規制による沈黙という風潮の無いことを願いたい。

公述

 各公述人は一人、30分与えられた。起業者に対する質疑を含めてである。
 質問はあらかじめ、前もって提出しておき、起業者はそれに対して答えを用意してきた。起業者の答えに対する質問、あらたな質問についても、起業者が答えることができる範囲で答えた。
 当然予想されることだが、賛成の公述は30分もかからない。10分もかからずに終わった公述もある。反対の公述は30分を超えるのがほとんどである。当方も公述を普通にやれば1時間以上かかることはわかっていたので、図表を示すだけで説明し、質疑を2,3点行ったが慌ただしく30分が経過した。
 公聴会の公述者が適正かどうかは別にして、賛成、反対の論点がわりあい、明確にあらわれたようである。以下の21人の公述者について、内容の概略を紹介する。

犀川辰巳治水ダム建設事業に係る公聴会 公述人の順
 ただし、●は賛成グループ、○は反対グループ
初日
 1.●石川県知事代理人 山本好能土木部次長
 2.○碇山洋(金沢大学教授、辰巳の会代表)
 3.●吉藤哲夫(二塚地区町会連合会、もと国交省OB)
 4.○木村久吉(もと金沢大学教授)
 5.○下郷稔(もと兼六園事務所所長)
 6.●平田博(米丸町会連合会会長)
 7.○中 登史紀(土木エンジニア、犀川の河川整備を考える会代表)
 8.○渡辺 寛(住民、ナギの会代表)
 9.●上村彌壽男(犀川期成同盟会)
 10.●金沢市代理人 藤崎強
二日目
 1.○宮江伸一(もと金沢大学教授、辰巳の文化遺産と自然を守る会)
 2.○本間勝美、辻村澄(住民、森の都愛鳥会)
 3.●雨坪裕孝(もと石川県職員OB)
 4.○吉岡勇(住民)
 5.○杉浦幸子(住民)
 6.●作田 勝(金沢市観光協会副会長)
 7.○北 賢二(もと水淵町住民)
 8.●野尻安司(金沢市漁業協同組合長)
 9.○中川清二(二塚住民)
 10.●向 外雄(辰巳ダム建設促進連盟副会長)
 11.●石井達夫(辰巳ダム建設促進連盟会長)、

 賛成サイド 10人、
 反対サイド 11人
 計21人

 まず、各公述人それぞれの内容の前に、全体の公述内容を要約すると以下のとおりである。
 
辰巳ダム反対の公述の主要ポイント
○辰巳ダムの根拠である想定洪水量が著しく過大である。
○ダム湖に接して超大規模地滑り地が存在しているが、豪雨で満杯の時に地滑りが発生して下流を危険にするのではないか?
○文化遺産の前にダムができて世界遺産に登録する資格を失うのではないか?
○ダム区域内でミゾゴイの営巣が確認されたが、ダム工事による自然環境への影響が懸念される。
○新辰巳ダムが実現するとその片足が相合谷砦後にかかり破壊される。発掘調査をやり、歴史的史跡として記録する必要がある。
○治水の安全と事業費用に重大な影響をもたらす「超大規模地滑り地」を含めた地滑りについて一度も専門家の委員会にかけていないことは問題ではないか(河川法違反の疑いも!)
○環境アセスメントが行うべきではないか?
○公共事業評価監視委員会の付帯意見で指摘されているように、住民参加を促し、県民の理解を得るように最大源の努力をしていないのではないか?
○ダム反対者に対して用地交渉をしないで(らしき交渉はあったが)土地収用法適用を進めたのは憲法違反(第14条ほか)ではないか?

(ダム反対の論点)
論点は、ダム根拠の異議1点、つぎがダム建設の懸念3点、そして手続について5点の計8点である。
犀川大橋基準点で1750m3/秒を100年確率の想定洪水量としているが、過去の最大規模の洪水は930m3/秒、どのような検討をしても900m3/秒前後。県の想定は有史以来発生したことの無いような数値。地滑りの危険、コンクリート壁が出来て世界文化遺産の資格を失う懸念、生態系への影響の懸念の3点については、県はできるだけやっていますという答えだけで結果責任に対する返事はない。歴史的遺産の記録保存、地滑りについて学識経験者による委員会に諮っていないこと、住民参加、憲法尊重義務について行政の手続が適正に行われていない。


辰巳ダム賛成の公述の主要ポイント
●先祖伝来の土地を提供して協力をしているのだから、一刻も早いダム完成をしてほしい。
●ダム反対の土地所有者は県外のよそものが半分以上ということだが、水害の苦しみも知らない県外のよそものに何がわかるか?
●福井、新潟水害のような雨が心配であり、いつ、起きるか分からない、起きてからではおそいので早くダムを建設するべきである。反対でダム建設が遅れ、その間に洪水が発生したら責任をとれるのか。
●大雨で水が引かないことが度々だが、ダムができれば川の水位が下がり、水はけがよくなる。ポンプ排水がよくなる。
●安全安心の町づくりのためにダム建設は最優先課題である。
●年間を通じて河川維持流量が確保され、景観がよくなり、魚類の生息産卵のための環境がよくなり、良い漁場になる。


(ダム賛成の論点)
最初の3点が感情論、つぎがダムと本質的に関係の無いメリット、手段を誤解した主張、そしてダムの矛盾するメリットが1点(下流の河川環境を回復させるために上流の河川環境を破壊するという矛盾!)の計6点である。
(先祖伝来の水没する土地は谷底の零細な田畑であり、ほとんど利用価値が無いといって過言でない程の土地であるが)提供した土地が放置されていることが感情的に許せない、水害の苦しみ(戦前、戦後の昔話で現在の治水整備水準について正確に理解していない?)を知らないよそ者がよけいなことを言うな、(科学的根拠なしで)明日起きるかも知れない、という論理というより感情論。ダムによる水位低下効果(水はけをよくするのは下流河川の改修、ポンプ排水をよくするためにはポンプの能力アップが当たり前の答えであるが、「橋替わりダム案」と同じ「キャラメルのおまけ」的発想)、ダムによる安全安心の町づくり(治水安全度を高めることが目的でダム建設することが目的ではない、目的と手段の混同)、ダムによる河川維持用水供給(河川維持流量は既存の水利用のやり繰りで行うべきで下流の水環境改善のために上流の水環境を破壊する矛盾である)。
○辰巳ダムの根拠である想定洪水量が著しく過大である。
○ダム湖に接して超大規模地滑り地が存在しているが、豪雨で満杯の時に地滑りが発生して下流を危険にするのではないか?
○文化遺産の前にダムができて世界遺産に登録する資格を失うのではないか?
○ダム区域内でミゾゴイの営巣が確認されたが、ダム工事による自然環境への影響が懸念されるが?
○治水の安全と事業費用に重大な影響をもたらす「超大規模地滑り地」を含めた地滑りについて一度も専門家の委員会にかけていないことは問題ではないか(河川法違反の疑いも!)
○環境アセスメントが行うべきではないか?
○公共事業評価監視委員会の付帯意見で指摘されているように、住民参加を促し、県民の理解を得るように最大源の努力をしていないのではないか?
○ダム反対者に対して用地交渉をしないで(らしき交渉はあったが)土地収用法適用を進めたのは憲法違反(第14条ほか)ではないか?


各公述人の内容は以下のとおりである。
司会
 北陸地方整備局建政部の瀬戸です。本公聴会は土地収用法第23条にもとづき、平成19年1月18日付けで、起業者である石川県から提出された事業認定申請について開催するものであり、今後、事業認定庁として事業認定の審査にあたり、勘案すべき情報を収集することを目的とするものです。(以下、省略。)

1.●石川県知事代理人 山本好能土木部次長
洪水に治水にも役立ち、既存のダム容量をやり取りして辰巳ダムは治水専用にした。常時は水を貯めないので水の悪化もない環境にやさしいダムという、従来からの説明のとおりなので省略。

(今回の説明についての筆者の問題指摘)
県は、治水に関して、福井豪雨を想定して辰巳ダムの効果を示した。1750m3/秒にほぼ相当する洪水となり、辰巳ダムがあれば氾濫を防止できると説明した。この説明は説得力があるようである意味、間抜けな説明である。福井豪雨のように時間80mmを超える雨が広範囲に降れば、平行している浅野川、すべての支川(伏見川、安原川など)が氾濫する。犀川流域においても約半分の面積を占める市街地では水路という水路はすべて氾濫する(内水氾濫)。未曽有の氾濫被害が発生する。結果として、辰巳ダムは洪水氾濫に何の役にも立たないことになる。
なぜ、このような馬鹿なことを思いつくのであろうか。それは、石川県が金沢市民の生命と財産を守るために治水を考えているのではなく、辰巳ダムを正当化するためだけを考えているからである。
 当方の公述の質疑の中で、浅野川、伏見川等についても福井豪雨を想定して検討しているのかと尋ねたが(金沢全体の治水の安全を考えているのかを確認するため!)、しているともしていないとも返事をせず、想像通り検討している様子はなく、単なる辰巳ダムの言い訳にすぎないことが明らかだった。
 本来、降雨は地域固有の自然現象であり、異なる地域の現象をそのまま適用することは誤解を招く。福井豪雨の降雨確率を犀川地域に適用し、説明するべきである。仮に200年確率であれば、犀川大橋基準点で1100m3/秒程度である。辰巳ダムが無くても十分に安全である。

 県は、利水に関して、平成6年の渇水状況を示してあたかも辰巳ダムによって水開発されれば、河川の枯渇が無くなるような説明を相変わらずしている。平成6年の渇水は約70年の観測で最大規模のものである。70年に1度の渇水に、辰巳ダムが想定する10年に1度の渇水に対応する計画ではとても間に合わず、ダムを造ったとしても相変わらず、渇水するのである。
治水、利水に関して、県民にいずれも過大な期待を抱かせる説明をしており、辰巳ダムを正当化するために、嘘の上に嘘を上塗りしているといっても言い過ぎではない。

2.○碇山洋(金沢大学教授、辰巳の会代表)

@過大な想定洪水
既往の最大規模の洪水は800m3/秒程度。大きくても900m3/秒前後であり、洪水を過大に偽装している。県は、他のダムでも同じ方法を取っている、専門家の審議会で議論している、国交省と相談しているなどと説明するだけで、市民の指摘について、誤っていると証明もしていないし、反論もしていない。
A地滑りの危険
ダムは穴あきダムで人為操作ができず、危険を増大させる。ダム湖に面して5百数十万m3の地滑り地がある。大雨で地滑りが発生しやすくなるが、その時にダムは満水である。貯めてはいけないときに貯め、下流を危険な状態にする。
B犀川の治水全体がイビツで、県は整備状況や危険箇所を把握していない
 犀川の危険箇所は、鞍月用水堰の上流部、JR鉄橋部である。我々が指摘するまでその危険性を認めていなかった。鞍月用水堰上流部は治水計画もなく放置されていた。辰巳ダムを正当化するために過大で無茶な計画としたため、自縄自縛で手が付けられなかったのではないか。隠しようがなくなってやっと犀川の危険箇所を示した。危険箇所を放置して県民を危険な状態にさらしてきたのは県である。
C世界遺産の資格を失うのではないか
 文化財である取水口が、コンクリートダムに抱きかかえられるようになる。これが障害になり、世界遺産の資格を失うのではないか。
D県の約束違反
98年度の公共事業再評価委員会で辰巳ダムだけが結論先送りとなり、「県民の理解を得るように最大源の努力をすること」の付帯意見がついた。99年、市民との意見交換会が7回開かれた。県と市民側で十分な時間をかけて話し合った。その後、新たな論点が出た場合、必ず、市民の側と協議することに県は同意した。にもかかわらず、秘密裏にあらたな資料を公共事業評価監視委員会に提供し、委員会は「事業継続妥当」の結論を出してしまった。これについて何の謝罪もない。「だまし討ち」であり、住民無視である。
E県民の理解を得るように最大源の努力をすること
 住民の疑問にまともに答えていない。住民無視である。公共事業再評価委員会の付帯意見である、「県民の理解を得るように最大源の努力をすること」に従っていない。
F用地交渉困難の事実はなかった
 7年間、用地交渉の連絡はなかった。昨年の5月、強制収用を決めてから用地交渉らしきことを始めた。事業にご理解くださいというもので用地を売ってくださいというものではなかった。筆頭の土地所有者である私(碇山)はまだ一回も用地交渉のテーブルについていない。用地交渉が困難だから、土地収用法を適用するとしているが、7年間、何もしていない状態で困難もなにもないはずである。

碇山と起業者(石川県)との質疑
@地滑りについて
Q(碇山):大雨で満水状態の時の大規模地滑りのリスクをどう理解しているのか。起きたときに下流にどんな被害をもたらすと認識しているのか。その被害に対して誰がどのように責任を取るのか。地滑り対策を考えているなら、その費用と事業期間はどれだけか?
A(起業者):満水の時よりも水位低下の時に危険となる。国の専門家と相談し、盛り土などの対策を考えている。事業費240億円以内で対応する。あってはならないので万全を期す。
Q:大丈夫と太鼓判を押せるのか?
A:、、、、、、、、(無言)
Q:答えなさい。
A:専門家の方々に指導いただきまして大丈夫だとの答えを確認しております。

A計画高水について
Q:計画高水1230m3/秒が流れれば鞍月用水堰で氾濫し、犀川大橋まで来ない。越堤、破堤をどう考えているのか。その責任の所在はどこにあるのか?
A:30年以内に堰を撤去して掘削し、堤防をかさ上げする。

B世界遺産について
Q:文化遺産の前にダムができて世界遺産に登録された例はあるか?
A:調べた範囲では、ダムのために登録されなかった例はない。
Q:登録された例を聞いている。質問に正確に答えていない。国語の問題だ。いつものように誤魔化すな。
A:、、、、、、、、(無言)
Q:議長、黙ってますよ。
A:、、、、、、、、(無言)

C市民との意見交換会の約束違反について
Q:「だまし討ち」をどう考えているのか
A:→誠意を持って対応してきている。

D用地交渉について
Q:ダム反対を表明した者に対しては一人の例外もなく、昨年まで交渉の相手としなかった。これは、法の下に平等であり、思想信条で差別されないとした憲法14条、19条に違反しているのではないか?
A:用地交渉は着実に一歩一歩行っている。差別はしていない。

3.●吉藤哲夫(二塚地区町会連合会、もと国交省OB)
 二塚地区は、犀川と浅野川の下流に位置してハザードマップ(避難地図)で浸水の色塗りがされているところは半分以上である。毎年のように川の警戒水位を超え、水害の心配をしている。水位が上昇し、内水が排水しにくい。既設のポンプ場の運転をするが足りない。工事用のポンプで排水してもらうこともある。
 木曳川な支川の改修は終わっているが、犀川の改修は終わっていない。犀川下流域河川改修促進同盟会を組織して、河口の堆積土砂の除去、犀川堤防の改修の早期完成のお願いをしている。予算がつかないので遅れている。
 昨年4月18日の梅雨前線で示野橋で警戒水位を突破し、水防警報が発令された。水位が上がって危険だと、住民を避難場所へ誘導して避難し、不安な一夜を過ごした。幸い、1時間ほどで水位が低下し、避難解除した。ポンプ場を運転したり、大変だった。
 早期に辰巳ダムを完成し、河口堆積土砂の除去、河川改修の完成をして、河川水位が低くなり、排水がよくなり、水害のない、安全な町を願っている。
 
(筆者の感想)
 この人は辰巳ダムが排水がよくなることにあまり関係がないことは理解しているようである。なぜなら、「河口の堆積土砂の除去」と「河川改修(堤防と河川断面の拡幅)」が排水をよくする手段と認識しているからである。それと排水ポンプを増強すれば排水はよくなる。それが解決策である。犀川ダムの時も、内川ダムの時も、同じような主張があった。上流にダムができれば、水の出方は違って大水が遅れて出てくるだけである。逆に水位が高い時間が長く続くことにもなる。
 また、腑に落ちないのは、警戒水位で住民を避難させたことである。普通は、特別警戒水位が避難の目安である。堤防が危険な状態になりつつあることをみんなに知らせ、自主的に避難を行ってもらうことになる。警戒水位は、水害に備え、各水防機関が出動し、警戒に当たる水位である。消防団員がパトロールをすることになる。水防警報が発令されたと言っても、水防法に基づいて水防活動をしてくださいという程度のことで、住民避難とは直接、結びつかない。4月の前線降雨で河川が氾濫するほどの出水も普通は予想されない。そもそも、近年、これほど河川の氾濫による水害の危険があるのであろうか。
 公聴会のブービーの公述の方が同じ、二塚の方であった。その方の感想は、二塚で浸水被害らしい被害があったのは、昭和20年代ごろ、2回くらいあった記憶があるだけである、不思議な話をするなーという率直な意見の公述があった。これで納得した。

(追記)
 ある方から、以下のメイルをいただいた。
「示野観測地点では特別警戒水位の3.50mを僅か4p上回ったため、避難騒動となったものです。最高水位3.54mが記録されています。当時下菊も米泉も特別警戒水位よりもはるかに低かったわけで、下流側が狭いために観測地点の水位が堰上がるようです。ことし、伏見川の合流点より上流側左岸の低水敷きや高水敷きの掘削及び草刈りが行われています。
こうなると、さらに示野観測地点の水位が上昇するはずです。県は何度か特別警戒水位を突破させて住民に避難をさせて、やはりダムが必要だと言わせたいような気がします。さらに下流側の草刈りや拡幅を急げばよいだけの話しなのです。」
 これでさらに事情がよくわかった。下菊橋から犀川大橋では低水敷内(県の説明では2年確率)で収まるような川の水で下流が特別警戒水位になるのか。示野橋から下流の水はけが悪いからである。現在進行中の河川の拡幅、堆積した土砂の浚渫(干潮河川で常に水が停滞し土砂が堆積しやすい。)、流水抵抗を少なくする草刈りをすれば解決する問題である。そうすれば犀川大橋地点と同じ程度の安全度となる。犀川大橋地点の現在の治水安全度は、筆者の解析では現時点で3000年確率(ただし、27年間とデータ数が限られているので、各種確率分布で求めた数値は700年確率から万年確率までにばらついている)である。


4.○木村久吉(もと金沢大学教授)
 昭和40年頃、城力の区長であった新谷正雄さんが、地域の交通の不便を解消するために相合谷に橋を架けるように行政へ働きかけて行ったのが始まりで、いつの間にか橋替わりダムになった経緯がある。辰巳ダム建設の前に考え直して欲しい。
 昭和29年の暮れに熊走で大火があった。道が不便なため、消防車が行けず、3/4ほどの家屋が焼失した。何とかできないかと地元の市会議員などと話を進めるうちにダム建設となり、地域発展の起爆剤になると言われるようになった。
 金沢大学で環境経済学の講座を持った佐原甲吉は、全国240のダムを自らの足で訪ね、ダムは水を汚し、水の上げ下げでダムサイト斜面の土砂を不安定にし、決壊させるおそれがあることを指摘した。
 石川県郡史によれば、明治初期に山林を住民に無償で提供したため、山の木をべらぼうに切って山が裸になり、洪水や渇水が起きた。同じ事が戦後にも発生した。山の保水力がいかほどあるのか、回復してきた犀川の原生林の洪水防止効果がいかほどか、ダムの計画では触れていない。
 大正11年に犀川大橋地点で氾濫が起きた。計画の説明では、氾濫したことは載せているが、原因について書かれていない。どのような理由で起きたのか書いてない。前年の大正10年に陸軍大演習があり、重車両で大橋が崩れないように沢山の足を付けた。これに上流から流れてきた木の橋が引っかかりせき止められて氾濫したものである。
 県は犀鶴林道建設を強行し、犀川の支流で猛烈な破壊をして土砂を谷へ流出させた。打棒ダムも造られたが、河川課の計画では計算に入っていない。
 昭和55年に金沢大学の宮江伸一からはじめて辰巳ダムの話を聞いた。文化財保護審議委員会の一員として、辰巳用水を調べ、国の文化財にしようと検討していた矢先である。委員長の本岡三郎と山科杏亭が中西陽一知事と話しをした。知事から口頭で村の人と話をしてくれとの依頼があり、小委員会を作り、地元の公民館で話し合った。地元では、辰巳用水取水口を壊してもいいから、ダムを造ることで地域発展の起爆剤にするという話になっていた。それまでの変化のいきさつはわからなかった。昭和47年頃から、第4次犀川治水5カ年計画が進められて文化財保護審議委員会にも一般県民にも知らされていなかった。
 植物の専門家としてダム予定地周辺の植物の調査した。絶滅の危惧のある植物についても調査報告したが、削除され、計画書に何も記載がない。都合の悪いことは書かないのか。
今まで、夕日寺の公聴会と内灘砂丘のアーバンホテルの公聴会で公述した経験がある。植物の専門家として調査したことに一言も答えなかった。この公聴会の公述をどのように処理するのか聞きたい。

5.○下郷稔(もと兼六園事務所所長)
 昭和51年(1976)から兼六園に勤め、2007年まで31年間のつきあいである。兼六園を愛している立場から公述する。
 平成4年の皇太子を含め、いろんな方を案内した。一番の特徴として説明するのは、水泉と眺望である。水が豊富なところは谷であり、見通しが悪いのが普通であるが、兼六園は水が豊富あるにもかかわらず眺望がよく、両方を兼ね備えている。その水はご存じのように辰巳用水から来ている。寛永9年に三代利常が板屋兵四郎に命じて造らせたものである。水泉の美の象徴である霞ケ池や曲水はなかった。豊富な水を確保し、千歳台を造ったのは十三代斉泰である。それまでの古河口から約600mの水トンネルを造り、川が90度に折れた東岩に取水口を設けた。これによって豊富な水が確保され、現在の兼六園の水泉の美ができたのである。兼六園と辰巳用水東岩取水口とはこのような深い関係がある。これを県は十分に認識していないのではないか。

Q(下郷):歴史的経緯を認識していないのではないか。
A(起業者):起業者としては、東岩取水口などの歴史的、文化的価値を認識しており、ダム軸を150m上流へ振った。デザイン的にも配慮している。
Q:犀川の自然を破壊してしまうのではないか。高さ51m、長さ200mの巨大なコンクリートの構造物ができて景観が破壊される。
A:9つの代替案を検討し、最も適切、合理的な案と判断している。
Q:文化財保護法による史跡指定されるべきと考えるが、県は目指しているのか、申請する意志はあるのか。近世四名用水(五郎兵衛用水、箱根用水、玉川上水、辰巳用水)のうち、玉川用水が史跡指定されている。辰巳用水も史跡指定の資格は十分に持っている。
A:ダム起業者として答えるならば、東岩取水口を文化財として認識しており、配慮しながら工事を進めており、史跡指定の障害になるとは考えていない。
Q:石川県は財政の巨額借金のためにいろいろなところで経費削減をしているが、無駄な土木事業のために負債が拡大するのは問題ではないか。借金は、石川県民一人93万円、金沢市民一人67万円、合計160万円である。民営化による福祉の切り捨て、行政サービスの低下、兼六園事務所を分室にして金沢城管理に統合してしまった。1兆1千億円の借金をつくり、金がないといいながら、問題あるダムで借金を作るのは許せない。知事は今年の1月16日の建設業協会のあいさつで、強制収用を念頭に粛々と進める必要がある、国は少し腰が引けている、大きな決断の時であると、知事の姿勢を示した。無駄で理由のないダムで借金を増やし、県民を苦しめるべきでない。
A:安全安心の観点から、ダムが必要と考えている。

知事が進めようとしていることでも明らかに誤っていることは職員であっても県民の利益のために勇気を出して声をあげてもらいたい。 


6.●平田博(米丸町会連合会会長)
 一刻も早く辰巳ダムを完成してもらいたい。一部の反対意見のため、事業が遅れ、福井豪雨のような事態になった場合には、県の行政の責任を問われるのではないか。これ以上、遅れないように県にお願いしたい。本体を完成し、下流の地区住民が安心した生活ができるようにしたいと思う。米丸地区の代表としてお願いします。


7.○中 登史紀(土木エンジニア、犀川の河川整備を考える会代表)
 辰巳ダムの根拠である想定洪水量1750m3/秒は有史以来発生したことのないような規模である。過去100年間で最大規模の洪水は930、流量記録を解析した100年確率流量は963、県解析を基準に従ってピーク流量を決定すれば946である。いずれも900程度である。1750の流量確率は超過確率年で1000年以上である。
辰巳ダムが出来たら浸水被害がなくなるのは大変な誤解である。未曽有の洪水が発生する。内水、支川が氾濫するからである。時間40mmの雨が1時間、あるいは時間30mmの雨が2,3時間降ると市内のあちこちで氾濫する(市作成の浸水実績区域図を見ればわかる!)。辰巳ダムが想定する雨はさらに時間60mmを超える雨が襲うので市内の全域で氾濫する。水路を氾濫しながら流れ下り、犀川本川に流入する。県は、犀川本川に流入した氾濫水が再び犀川堤防を越えて氾濫しない、氾濫した後に氾濫しないと説明しているに過ぎない。
Q:最初の公述で県は、犀川で福井豪雨なみの降雨による想定洪水は1750m3/秒程度でこの洪水を防ぐために辰巳ダムは有効と説明した。それでは、伏見川や浅野川での検討結果はどうか。(単に辰巳ダムを正当化する話ではなく、県民の生命と財産を守ることを念頭においているならば、市内全域の川について検討されているべきだが。)
A:資料を持ち合わせていないの答えることができない。
Q:1750m3/秒の流量確率はどれだけか?公述人に試算に寄れば、この洪水流量確率は約1000年から万年確率の間にある。
A:(答え無し)
Q:降雨確率(1/100)と流量確率の差が著しい場合は、「基準」によると「他の手法で検討する」としているがしていない理由は何か。
A:(答え無し)


8.○渡辺 寛(住民、ナギの会代表)
辰巳ダム計画の場合、この鴛原の地すべり地の存在が認識されたのは、辰巳ダム計画初年度(昭和50年)から実に12年後の昭和63年の調査でした。しかもこの調査で「鴛原町北東地区は、3地区のうち、最も地すべり誘発の懸念の高い地区であり…」と記されていますが、本格的に調査が行われたのは、それからまだ14年も後の平成13年、つい6年前の話です。……
しかも、重要なことは地質学者も参加している犀川水系河川整備検討委員会や流域委員会で一度も鴛原の地すべり地の存在が議題になったことがありません。「一番安上がりである」として選択決定された辰巳ダム計画そのものに重大な情報隠しがある。つまりこの鴛原の超大規模地すべり地と辰巳ダムの関係が検討されていれば、費用の面からダム以外の整備計画が採用された可能性があるからです。……地すべり地の情報を隠匿し「一番安上がりだ」として計画決定した委員会、また県知事の判断に重大な過失があります。

Q(公述人):地滑りについて学識経験者の委員会でなぜ審議しなかったのか?
A(起業者):国と相談をし、指導をいただき、地すべりは問題がないから委員会にかけなかった。


9.●上村彌壽男(犀川期成同盟会)
 28年前の昭和54年、犀川治水計画によって伏見川合流点から河口までの4.1km改修促進を目的に戸板、二塚、大徳、金石地区の町会、生産組合、土地改良区などによって結成された。
 1930年から数十回の氾濫を目撃している。昭和24年(1949)にはキティ台風によって赤土町の左岸堤防が決壊した。当時、裸に下帯一つで命綱をつけ、土嚢を投げ入れるなどして洪水と戦った。その後も度重なる水害で橋梁が流出し、農地は荒廃した。昭和40年第一次治水事業で赤土の左岸の湾曲したところで6700m2の農地をつぶして拡幅した。二ツ寺橋も架け替えた。その後、上流の開発が進んで昭和54年(1979)、治水計画の見直しがあった。下流で2100m3/秒になると県から提示を受けた。肥沃な美田2haを提供した。先祖伝来の田畑を手放すことは農民にとって死活問題であるが、堤防決壊を防止し、100年先の洪水のために苦渋の決断をして土地提供を決意した。辰巳ダムを想定しての洪水量であるから、中止になれば600トンが上乗せになり、堤防が決壊するかも知れない。
 古川の水を排水して60haの田の冠水を防止するための排水機場がある。本川との間に自動水門があり、口径500mmのポンプが2台ある。本川の洪水時、辰巳ダムが未完成ならば内水面と外水面との落差が大きくなり、53m3/minの能力が低下する。60haの水田が1m近く長時間、湛水する。農地提供したのだから、ダム計画はきちっと実行して頂きたい。
反対する地権者であっても、水害防止に対する願いは上中下流住民も同じであろう。悲惨な水害にあった住民の叫びを理解していただきたい。
 起業者に対しては、地権者との交渉努力も必要だが延々と不毛の論議をしていては、県税の無駄遣いでもあり、いつ洪水に見舞われるかも知れない、土地収用法で早期に解決し、事業の推進にあたって欲しい。
法のもとに平等である法治国家である。正しい者に法は味方する。

(筆者の感想)
 静かな語り口といい、適度に数的根拠を示しながら、理性よりも感情に訴えながらの公述は何となく説得力がある。理屈では全く無意味の辰巳ダムもこの手の感情論にかかると必要不可欠のものになる。
辰巳ダムの効果は大橋で290m3/秒で600トンではない。辰巳ダムに足をとられているから、下流の河川の拡幅が進まない、足を引っ張っているのは石川県である。100年に1回の豪雨の時になぜ田の水を急いで排水する必要があるのだろうか。雨が上がってやおら排水しても間に合うくらいでほとんど農作物被害もないはずである。辰巳ダムを正当化するための、県の入れ知恵か?


10.●金沢市代理人 藤崎強
 辰巳ダムは犀川の治水、利水の機能を高める。最近、異常気象で甚大な被害が発生している。昨年7月に時間80mmを記録、九州では1200mm、鹿児島では24時間600mmを記録、大きな人的、物的被害が出た。金沢では年2500mm、いつどこで大きな被害が発生するかわからない。平成8年、10年には、高畠で内水被害、昨年7月には、特別警戒水位を超え、29,000人を対象に避難準備情報が発令された。
 石川県は、犀川で昭和54年から平成28年までの38年間、300億円の予算で整備事業がなされ、進捗率は57%(171億円)である。金沢市は、木曳川で平成35年までに135億円をかけて整備、現在の進捗率は31.7%である。大徳川は1/50で完成。
 ソフト対策として洪水避難地図を作成した。万一の場合の避難場所、避難方法、関係連絡先を示したもので抜本的な対策ではない。
 大水害を防ぐための抜本対策は全市民の願いである。昭和40年以降、河川改修が進められてきたが、抜本対策は昭和58年に着手された辰巳ダムである。平成17年5月に辰巳ダム計画が裁定された。犀川ダム、内川ダムに加えて辰巳ダムが完成すると、
治水能力が780万トンから1130万トンに、
利水能力が50万トンから362万トンに拡大する。
 浸水地域を解消するため、平成13年に高畠、戸板雨水ポンプ場、平成15年に保古、古府雨水ポンプ場を完成させた。市内の102水門を24時間管理し、操作している。本川の犀川の水位が上昇すると排水を止めざるを得ない。
 浸水被害を解消するため、河川改修、ダムが必要である。ダムによらない方法では、膨大な費用と期間が必要で、一日も早い安全安心のため、ダム建設が必要と考えている。
 浅野川の安全度をあげるため、導水路を実効性のあるものにするためにも辰巳ダムは必要である。市長は、総合的な治水対策として辰巳ダムは、河川の水位を下げ、伏見川などの支川の排水能力をあげると議会答弁をしている。辰巳ダム建設促進同盟会長として、毎年、国へ要望している。一日も早い完成のため、関係者のご尽力をお願いしたい。

(筆者注:利水能力は犀川ダムの工業用水分の転用をするので、辰巳ダムとは関係はなく、拡大は257万トンから362万トンである。)


二日目
1.○宮江伸一(もと金沢大学教授、辰巳の文化遺産と自然を守る会)
  「新辰巳ダム計画についての問題点」と「東岩対岸の相合谷砦の調査が行われていないこと」について述べる。
 金沢で文化遺産を世界遺産へ登録しようという機運が高まっている。登録条件の支障にならないかというのが第1点である。兼六園は特別名勝でこれは国宝級のものに相当する。辰巳用水は城水、市内の防火用水としても利用され、兼六園へ水を供給している。自然河川の犀川から自然流下によって取水している。今、あちこちの公園は、井戸あるいは水を循環している。自然河川から、今もとうとうと水を流しているのは貴重な財産である。金沢市は辰巳用水、兼六園、金沢城趾を三位一体の核として寺町、小立野の寺院群を加えて金沢市城下町文化遺産として世界遺産へ登録しようとしている。追加リストが継続審議となっている。文化庁の記念物課長が市内を視察し、東岩取水口から兼六園までの辰巳用水、これは加賀藩の技術を評価する重要な要素であると述べ、世界遺産登録の必要性を強調している。ところが、辰巳ダムについては、景観上、どう評価されるか気になると言っている。申請条件としてどんなにすばらしい文化財であっても自然環境およびその景観が損なわれては失格である。もし、辰巳ダムが原因で世界遺産の申請が見送られるようなことがあれば、文化県としての石川県は千載に悔いを残すだろう。
 このような背景から、金沢市は歴史遺産研究室を開設した。6人のメンバー、この中に辰巳ダムの検討委員会委員長の玉井先生が入っている。片方では辰巳ダムを進め、片方では文化遺産を守る、方向違いの二足のわらじを履いた方である。
 一向一揆の相合谷砦は東岩の対岸にある。県は昭和58年に記録保存のために『加賀辰巳用水』(240頁)を刊行した。ところが、水没破壊される東岩と導水路については半頁、記録保存の調査でありながら、破壊されるところの記事が半頁では極めて不完全であることを指摘した。指摘を受けて、県は『加賀辰巳用水東岩隧道とその周辺』(284頁)を刊行した。周辺と断っているにもかかわらず、その対岸、左岸にある、相合谷砦後の史跡については全く調査されていない。新辰巳ダムが実現するとその片足が相合谷砦後にかかり破壊される。発掘調査を是非やっていただきたい。歴史的史跡として記録する必要がある。掘り割りがあり、三枚つまり火葬場があり、当地の人にとって聖地だった。
 東岩取水口は斉泰が造らせた。地層がずれて川が屈曲してよどみができていて取水に都合がよい。このダムが出来ると斉泰の行状が全く意味をなさなくなる。
 新辰巳ダム案の位置は、旧辰巳ダム計画で辰巳用水を残せと要求していた時の第6案にあたるもので、当時はこの案は費用がかかるから駄目だと県が否定した案である。
 世界遺産登録されているドイツのエルベ峡谷では、下流に新しい橋を建設しようと言う計画が持ち上がった。これが出来ると景観が損なわれるのでユネスコは危機遺産に指定した。このまま、計画が実行されると世界遺産登録が抹消される。折角、2004年に登録されたが、取消になる。また、ケルンの大聖堂の周辺に高層ビルが計画され、景観上の問題から危機遺産になっている。辰巳用水が残ってもその前に壁があると到底、世界遺産の資格はない。県や市は地域に残る文化遺産をきちっと残していただきたい。
 辰巳ダム以外の治水対策の代替案を示して頂きたい。大橋で1750m3/秒はあり得ないと思うが、現状の1230m3/秒を拡大するための対策としてダム以外の方法がある。平成7年5月に元衆議員の高見氏が県に質問した。「犀川大橋付近の拡幅の足りない分は、遊水池、森林保水機能、雨水貯留など総合的な対策は環境負荷の小さい形であると考えるがそのような対策はしているか。泉、中村高畠、大野庄用水まで現在の技術を持ってすれば拡幅できるのではないか、可能か検討したか。」これに対して県は 曳き提案、河床掘削案、堤外水路撤去案について回答した。
 引き堤案は省略する。河床掘削案の回答は「1.4m切り下げる必要がある。そのため、水面低下によって河川の景観が悪化し、親水機能が損なわれる。」であるが、大橋のすぐ下流には転倒堰がある。ですから、底が深くなっても水面は変わらないはずである。
堤外水路の撤去案の回答は、「大橋付近の左右に3m,7mの小段がある。これを撤去すると1630m3/秒が可能である。しかし、これは河川の景観として最悪なものである。両側は歩道やサイクリングロードとして利用されている。したがってこの案も治水偏重のそしりを免れない。」である。ここでのポイントは1630m3/秒流せると言っていることである。景観はそんなに優れているのだろうか。小段を撤去してもその上に遊歩道をつけて防護策をつければサイクリングロードは実現する。長町の鞍月用水の歩道がそうなっている。一つの方法によらなくても、少し、底を削り、横を広げればよいわけで、1630m3/秒を流せれば、1750m3/秒との差はわずか120m3/秒であり、内川のスポーツ広場などを遊水池として活用するなどの対策で何とかなるのではないか。
 玉井先生は、犀川の拡幅か、ダム建設かの二者択一の考えであったが、国は総合治水に転換しつつあり、伝統技術の活用も考慮する時である。越堤しても破堤しなければ、二線堤や輪中堤を活用して守ることもできる。
 下流域の浸水や冠水の心配についての話があったが、内水の問題でしっかりしたポンプをつければ十分に排水できる。

Q(宮江):世界遺産の資格を失う懸念があるのではないか。
A(起業者):ダム事業者が回答する内容ではないと思いますが、起業者の立場で言いますと、東岩取入口の価値を認識しており、できる限り配慮していくつもりであり、世界遺産登録の支障になるとは考えていない。建設計画についてはデザイン検討委員会などでさまざま検討しており、東岩取入口の文化的価値を損なわないように配慮している。
Q:相合谷砦の発掘調査をするべきではないか。
A:平成2年、石川県埋蔵物センターで試掘し、調査を実施している。その結果、埋蔵文化財は確認されなかった。
Q:辰巳ダム以外の治水対策を検討したか。
A:平成14、15年に9つの代替案を総合的に検討し、適正かつ合理的な案として、現在のダム案としたものである。
Q:内川のスポーツグランドを遊水池として考えないか。
A:遊水池案も検討したが、その規模から遊水池案は難しい。
Q:平沢川砂防ダムの活用を検討したか。
A:将来は土砂で埋まるものと考えており、治水対策としては困難である。


2.○本間勝美、辻村澄(森の都愛鳥会会長ならびに会員)
 辰巳ダム周辺の現状と建設後の状況を写真で紹介。7年間、ダム予定地付近でミゾゴイ調査をしている。東南アジアから夏に日本に飛来し繁殖する夏鳥である。アジアのレッドデータブックで1000羽未満の絶滅危惧種である。辰巳ダム事務所と平行して2000年から調査をしている。2002年には6,7羽がダム予定地付近に広く点在していた。2006年には3羽程度となり、上流に集中している。この変化は、2003年から行った水淵から相合谷の付け替え道路を建設したがこういう工事の過程の中で奥に追いやられて数も減少したと考えている。このトンネル工事にともない、餌場となっていたと思われる沢をコンクリートで固める工事が実施された。
 昨年、辰巳ダム事務所は、ミゾゴイの営巣を見付けたが、ダム区域外であり、ダム計画に影響ないとした。今年の5月、辰巳ダム区域内で営巣抱卵中のミゾゴイを発見した。新たな展開である。
 当地域は、サシバ、ハチクマなどの生息場所でもあり、市街地近郊の唯一貴重な里山の自然環境を維持している。

 ミゾゴイなどの希少種や野生動物などの生態系保全のため、ダム建設に反対する。種々の公共事業のため、生態系を無視した開発が行われ、里山の貴重な自然が消失してきた。ゲンゴロウなどの身近な小動物も絶滅の危機に瀕している。全国各地で自然再生法による取り組みがなされる時代である。30年も前に計画されたダムにこだわるべきでない。周辺は多種多様な生物のすぐれた生態系を維持する。当局はダム区域内でのミゾゴイの営巣が確認され、あらたな展開であり、重く受け止めるべきである。多目的ダムから穴あきダムへと大幅な変更があり、法の適用外として環境アセスメントのないまま、影響を把握しないまま、自然破壊をしようとしている。洪水毎に繰り返される冠水によって良好な生態系が損なわれる。トキの例もある。それを救うことはできなかった。絶滅の危機に瀕した生物を救うことがいかに困難か。ダム建設による大規模な破壊がミゾゴイの生息地に決定的なダメージを与える。大切に保全し、生物多様性を確保し、十分な対応無くして強行してはならない。

Q(本間):大規模工事によるミゾゴイへの影響とその対策はいかに。
A(起業者):法的に義務はないが、自主的にすべての項目について検討し、専門家の意見を聴きながら対策に万全を期している。この結果、環境保全目標を達成することが予想される。希少種への影響は軽微であるとの専門家の意見であり、今後、モニタリングをしながらさらに検討対処する。
Q:工事による川の分断、洪水によるダム湖の冠水による生態系への影響はいかに。
A:1年に1度のダム湖の水位上下は現状の河道とあまり変わらない。100年に1度は24時間程度の湛水はあるがダムアップの流れは遅く、小動物は避難可能で深刻な影響はない。希少種は移植する。水質悪化もなく、水流の連続性も確保されている。環境負荷を大幅に軽減している。
Q:環境アセスをやったのは新ダム以前の話であり、場所も内容も変わっているのでやったというのは間違いではないか。
A:新ダムでの影響を調査し予測した。
Q:調査をしているのは認めるが、ダム建設でどのように影響があるか評価されていない。
A:専門家の意見を聴きながら判断したい。
Q:区域内で営巣が発見され新たな段階に入ったのだから専門家の意見を明確になるのか。
A:ご趣旨にそうよう努力したい。

(筆者の感想)
環境アセスメントは事業の前にあらかじめ影響を予測し評価するものである。影響があることが予想されればあらかじめ対策を行うためのものである。県の行っているのは調査にすぎない。動植物の種類、個体数、場所のリストを作ったにすぎない。実際に本体工事ではない、小規模な「付け替え道路工事」だけで希少種ミゾゴイの生息状況が大きく変化して大影響を受けている。専門家は希少種の影響は「軽微」とコメントしていたにもかかわらずである。本体工事でどれほどの影響を受けるか、環境アセスメントを実施して把握する必要があろう。ダム本体工事でミゾゴイの生息に決定的なダメージを与えるのはほぼ間違いないことが明確になりつつある。起業者(県)はうやむやにして強行したいのであろう。



3.●雨坪裕孝(もと石川県職員河川課長OB)
 10年前まで県職員であり、辰巳ダム早期完成の立場から公述する。
 ダム本体の位置が上流へ変更され、辰巳用水トンネルに支障がなくなった。安定的な取水で豊かな水流を期待する。
 地球温暖化などの影響で渇水や洪水などの自然災害が心配である。その心配が的中したのが、3月25日の能登半島地震である。未曽有の大災害であったが、県の災害に対する危機管理体制で迅速な救援ができた。県民の安全安心確保のために辰巳ダムは待ったなしである。ソフト、ハード対策いずれも準備しておくべきで、しないで災害にあってしまえば、それこそ行政の怠慢である。
 しばらく氾濫していないことも事業がすすまない理由の一つだろう。ダム計画があったにもかかわらず、進まず、そのうちに被害にあったという例がる。大聖寺川の九谷ダムである。用地交渉が難航しているうちに、昭和56年に下流で大水害が発生し、2000戸を超える浸水被害があった。福井県の足羽川ダムも事業が進まず、平成16年7月に大水害にあった。ひさしく氾濫が無いからと言って事業を進めないのは行政の怠慢だろう。
 犀川にはすでに犀川ダムや内川ダムがあるから十分だとはいえない。大聖寺川にも我谷ダムがあった。
 どの程度の安全を目指すのか。専門技術的な判断が必要だから、専門家の意見を聴きながら行うのが信頼できる、適切な方法である。河川整備検討委員会、流域委員会で専門家の意見を聴いている。適切な手続を経ていると考える。
 昭和60年、平成6年にはJR橋付近で水がなくなった。観光や魚の生息のために、川には水が流れていなくてはならない。渇水時の水の確保のために辰巳ダムは必要である。
 辰巳ダムのパンフには、現在使用していない工業用水の活用することが書かれているが、コスト縮減のために有用である。
 失われる利益として、自然環境への影響が考えられる。土砂のせき止め、河床の洗掘については従来のダムのように水を貯めないのでほとんど影響ないだろう。動植物への影響も軽微な影響だと聞く。水を貯めないので水も汚れない。
 この公聴会は未買収の土地があるから開催されたものである。未買収の土地は1%未満であり、地権者は共有地主で約600人、県外の人が半分以上、石川県内の人についても犀川に縁が少ない人が多いのではないか。最近、にわかに地権者になった人達であり、洪水の怖さも知らない人達ではないか。全国のこのような方に、ダムの了解を得ようとする時間と労力はむだではないでしょうか。

(筆者注)
 犀川ダムで開発した工業用水0.46m3/秒は、40年間使用していなかったもので、河川維持用水へ転用するものである。ソフト対策、つまり書類上の書き換えの手続であり、辰巳ダムとは無関係である。

(筆者の感想)
 「しばらく氾濫していないことも事業がすすまない理由の一つだろう。ダム計画があったにもかかわらず、進まず、そのうちに被害にあったという例がる。大聖寺川の九谷ダムである。用地交渉が難航しているうちに、昭和56年に下流で大水害が発生し、2000戸を超える浸水被害があった。福井県の足羽川ダムも事業が進まず、平成16年7月に大水害にあった。ひさしく氾濫が無いからと言って事業を進めないのは行政の怠慢だろう。」
と述べているが、これは明かな誤りであって、行政を弁護する都合のよい論理である。支川三谷川左岸が破堤氾濫したのであって大聖寺川本川が氾濫したわけではない。したがって、九谷ダムが完成していなかったから洪水氾濫が起きたのではない。九谷ダムにはあまり関心がなかったが、このような、住民を欺くような主張は断固排除しなければならない。公開質問状を初めとする対応を取らざるをえないだろう。近々に文書を用意して対処したい!


4.○吉岡勇(住民、金沢自然観察会代表)
 犀川を観察して回っている。洪水、浸水などを経験している。昭和36年の片町の洪水の浸水被害の戸数が1500とも2000とも、公文書では不明確である。床下500、床上1000、疑問がある。 戦後、木炭の大増産の影響で山の木が切られ、山が荒れ、大雨のときに大きな水が出て洪水が起きたのである。このことが原因で片町の水害も起きた。
 大橋から上流に枝川が1、2本であり、8kmくらいのところにダムが5つもあり、密集している。荒川は70,80本の支川に5つくらいのダム、大井川は20km区間に5つくらい、犀川はダムが密集して生態系を破壊している。海の水産資源にも影響を及ぼしている。
昭和46年から53年の犀川の工事で犀川神社の伏流水が枯れた。3,4年後にヨシが大発生するなど、川を破壊していろいろな問題を起こしている。
東岩は昔からミステリアスで神聖な場所である。取水方向も、雉や古河口のように横から取水するのではなく、まっすぐ入るのですばらしい。完成品である。歴史遺産を傷物にするべきでない。ここが文化遺産にならずに、犀川大橋が遺産に登録されたのは理解できない。
Q(吉岡):犀川の検討委員会のメンバーはダムに賛成しているとは思えなかったがいつの間にかダム案になってしまったのはどういう理由か。
A(起業者):最新のデータで代替案を検討して、総合的な観点からダムの必要性を認められたものであり、委員がダム案に消極的という事実はなかった。
Q:委員会に河川の専門家以外にいないのか。
A:環境をはじめ、各界各層の学識経験者からなりたっている。
Q:水淵の付け替え道路の工事に関して、市と県職員の家にかかるBコースに決まったのはおかしい。情報公開請求で不存在といわれ、異議申し立てを2回したら、さがしたら出てきましたと文書が公開された。異様な臭いがする。
A:平成10年のルート選定検討で3ルートを検討し、整合性、環境への影響、施工性、事業費などを総合的に検討して決定したものである。
Q:付け替え道路の移転補償が1億4200万円はどんな見積もりをしてもらっても大きすぎると思う。
A:ルート選定における選定項目の中で提示しておりましてあくまでも概算金額で、住家産?の工事、移転費用である。
Q:県の調査で日本にいないであろうと思うワキアカツグミが確認されているのはおかしい。
A:平成10年のダム調査で9回のうち、2回、ツグミの群れの中で存在を確認している。その後、確認されていない。
Q:欧州では1975年にダム建設資金援助を禁止しているが。
A:辰巳ダム建設起業者としては回答する立場ではない。


5.○杉浦幸子(住民)
 土木とは何だろう、自分の経験を語ってもらおうと1200人の土木部長経験者へアンケートを送った。300くらい返事が来た。「人のこころのわからないものは土木もわからない。現場百回、周辺を観察する、土木の人は自然現象をよく見て、目に見えない生物にも気を配り、工事に責任を取らねばならない。」など感心した。土木の方が好きになった。そして怖い話もあった。「構造物を造って元の自然と調和し丁度いいと思っていたら、つぎからつぎと造って後はどうなるんだろう。次世代の子孫の目が覚めた時、すべて人工的なものになっていたら心配である。」最近の子供たちは自然に触れることが少なくなっている。子供が川に入って水に触れて遊んだりすることが少なくなってきた。昭和15年に金沢に来た時は、犀川大橋付近も美しかった。東岩の前の景観も美しい。子供たちは自然の美しい風景に触れて育つ。子供が自然の美しさに触れることによって育つのは9歳までで、その後では美しいと感ずるような気持ちが育たないという説もある。
 東岩取水口の前が美しいのは億年もかけて削るものは削られて折れ曲がった川の流れができあがり、水の流れが急に弱くなって静かに取水口に入っていくところである。ダムはこの美しい光景を破壊する。
Q(杉浦):大聖寺川のダムが満杯になり、ダムから放水し、大聖寺川が氾濫した。ダム所長に電話をしたが、転勤で連絡がとれなかった。ダムの操作はむずかしいと思うが、みんなに説明して欲しかった。大聖寺川のダムの操作について教えて欲しい。
A(起業者):持ちこたえられないほどの流量だったのでダムを守るために放流操作をした。これは我谷ダムと下流の河川の能力以上の雨が降ったということで、事前にそういうことがおこるのではないかと危惧されていましたので九谷ダムの計画があった。想定以上の雨が降れば洪水になる。
Q:公聴会の予算はいくらか。
A:公聴会は国交省の支出で県は支出していない。
Q:公聴会の話で気になっているのは、ダムができたら洪水が無くなることを頭から信じ切っているところである。どこそこではどうだったとか、ダムの働きについて具体的に教えてください。
A:(時間切れ)


6.●作田 勝(金沢市観光協会副会長)
 ダム推進の立場で公述する。県都金沢は北陸の文化、経済の中心であり、重要な都市である。2014年には新幹線が開業し、町の活気を期待している。犀川、浅野川や用水の清らかな流れがあり、子や孫へ守り伝えなければいけない。兼六園、金沢城など、歴史と文化の香りがあり、有形無形の文化財が重なっており、すばらしい遺産を後世へ残し、この環境を維持するために、安全安心の町づくりが何よりの優先課題である。万一、犀川が溢れるようなことになれば、社会や経済に与える影響は重大である。昭和28年の淺野川の水害で床上浸水を体験し、恐ろしさを知っている。平成16年7月、新潟福井で集中豪雨があり、甚大な被害が発生した。観光都市の金沢へ来てよかったと実感していただくためには大雨のとき、洪水が起こらないように犀川の治水安全度を高めることである。また、渇水時には大豆田の水が枯れ、景観が損なわれる。洪水対策、渇水時に年間を通じた水供給し、景観を守り、観光促進のためにダム建設を促進するべきである。


7.○北 賢二(もと水淵町住民)
私はダム建設の地元、辰巳町に在住している。20年前くらいに騒がしくなり、はじめは関心がなかったがどうなんだろうと調べているうちにかかわることになった。十分に納得できる議論になっていない。
今日は4つの立場で公述したい。1つは、国民、県民、市民の立場、2つ目は、地元住民の立場、3つ目は、県の土木行政の取り組み姿勢に疑問を持つ者としての立場、4つ目は、土地、水、景観、文学碑などの利害関係者としての立場である。

Q(北):まず、辰巳ダムについての洪水の被害は堤防が壊れて起きるのか、越水して起きるのか。
A(起業者):想定氾濫区域は11km2位で、鞍月用水上流部で破堤を想定しており、そこで氾濫した残りが大橋地点へ流れ、計画高水流量を超えるが堤防高ぎりぎりにおさまっているという想定をしている。辰巳ダム未完成のまま、鞍月用水部の改修が終了した段階では、犀川大橋基準点での破堤を想定している。

水害は天災なのか、人災なのか、その区分はどうなるのか、公共事業の名でこのような事業が推進されてよいのだろうか。あるいは災害ということならば保険制度とか、共済制度とか、そういうものも考えて対応していく必要があるのではないか。
犀川ダムの建設でも洪水調節、内川ダムでも犀川の洪水調節をする、このようにつぎつぎと犀川にダムが建設されていって安全度を高めるというふうな発想にたつならばまだつぎつぎとダムを建設しなければならないのではないか。むしろ、洪水を受け入れるという発想の転換が必要ではないか。私は子供のころ、すぐ川へ行って川で遊んでいた。水淵から魚を追って十兵衛の下(雉)、黒岩(発電所)、東岩まで上がって帰ってくるのが毎日の生活、川遊びだった。大水の時は流木拾いをして薪にした。魚が岸に寄ってくるので網で採った。2、3日すると川がきれいになる。生命と財産にかかわらない大水は受け入れていいのではないか。加賀藩は300年間維持し、そのような町づくりをしたのではないか、それなりの対応をしていたのではないか。川には漁師がいて川の渇水は無かった。どこの川でも夏でも川が枯れることはめったに無かった。
アメリカでは政策の転換があり、ダム建設の時代は終わった。日本には2千有余のダムがあり、ダムを見直しする時代である。財政も逼迫している。問題ある公共事業は見直していかなければならないと思う。犀川には他に全国でも最大規模の砂防ダムである、平沢ダムがある。県民のほとんどが知らない内に建設されている。世界遺産登録の運動もあり、大きく見直しする必要があると考えている。

2つ目は地元住民の立場で。
犀川の美しさは犀川ダムの建設によって消えてしまった。地元の人で本音からダムを望んでいる人は皆無ではなかろうか。ダムよりも道路、橋、公民館、集会場が願いである。このダムの発端については、相合谷町、上鴛原町、下鴛原町は陸の孤島のような実態があった。対岸に県道が見えながら、そこへ行くには渓谷を降りてまた上がって行かねばならなかった。この交通の障害に対して架橋したい、左岸には道路がないので道路が欲しいという願いがあった。地元から市会議員を立候補させてその人が公約として取り組みした経過がある。その時には、渓谷の底にすでに橋があって、その上に橋を造ることができないということで苦労していた。また、過疎にも悩んでいた。ダムなら、何百億円の事業になり、地域の発展にもなる、そして、ダム堰堤が橋替わりになるというので、辰巳ダムとなった経過がある。ダムの目的は、交通の利便のための橋であり、いわば、目的と手段があべこべになっているというのが実態である。

3つ目は県の土木行政の取り組み姿勢に疑問を持つ者としての立場で。
この実情をもとにペーパーを作った。それがいろいろな矛盾となって、今日の形になっていると思う。土木のみなさんも内心はやはり、この辰巳ダムについて問題視していらっしゃるのではないか、その事実が所長の1年交替に表れていたのではないか。
それから、現場での私の取り組みですが、例えば、これは天保七年の古図です。ここに辰巳橋、ここに下辰巳村付け替えと書いてあります。この付近に工事用道路が計画されたので、私はこの「付け替え」というのは大変なこと、是非調査して欲しいと要望した。この山が続いていたわけですね。ここに山がありますから、この犀川を掘り返して付け替えをしたということですね。こんな時代に犀川の流れを変えたのは大変な土木事業ではないかと、工事用道路をつけるなら、このことを調べて欲しいと申し上げたが調査してもらえなかった。
また、相合谷砦の件です。調査書が出ている。ところがここに水淵城があります。104と105です。水淵城の山のうえに相合谷城が移されている。この水淵城を金沢市が調べて水淵城の存在を認めていただいた。そうしますと、水淵城と相合谷城と2つ存在することになる。地図の相合谷城のところは私の土地です。こんなところにお城の形式は存在しません。相合谷砦のところにダムが建設されると困るというのでこういうところにいつのまにか、移動させている。こんなことでいいのか。
周辺に石切場跡がたくさんある。一応、調査されているが貴重な文化財ではないか。誰も知らない穴もあるはずである。ダム湖の水が入るとどうなるのか。
水淵は和紙の里で、加賀藩の藩札を作っていた。道路工事で大きな穴が2つ出てきた。十分な調査がなされないまま、県は道路建設を強行した。
このようなことで犀川上流域には貴重な文化財がまだまだたくさんある。これに対して十分な調査をしていただきたい。

4つ目は、土地、水、景観、文学碑などの利害関係者としての立場で。
ダムができると地域の発展につながるという話があったが、具体的な提示がなされていない。私は8項目の地域振興プランを提案している。
私の土地の境界を確定しないまま、道路工事が強行された。
私の農作業場の水溜の水が写真で示しているように、10m先の道路作業で汚されたわけですが、県の業者は、工事で汚したのではないと主張する。これが県の作った地図だが、農作業場が車庫になり、水源地が違うところに表示されている、こんなことが頻発している。公共事業推進と言うことでよいのか、住民の同意を得て作業してもらえないか、昔の犀川の自然に戻すべきではないか。


8.●野尻安司(金沢市漁業協同組合長)
 ダム賛成の立場で公述する。金沢市の犀川、浅野川、森本川の漁業権を有している。まず、犀川上流の現況について述べる。昭和41年に犀川ダムが完成した。ダムから取水して5km下流の上寺津発電所で発電、水は上寺津ダムにとどまり、下流に流れない。発電のために再び5km下流の新辰巳発電所に送られる。この10kmは発電取水による減水区間であり、水が無く枯れ川で魚の生息にきわめて厳しい状況にある。さらに発電の水は導水トンネルを流れることから普通の河川水に比べて約3度から5度低い。この水が下流の川へ流れていくことから魚の成長が遅く、弱っている。今回のダム計画では普段、下の穴から水が流れる魚道が設置され、魚の遡上も見込まれる、さらに生息産卵に必要な維持水量を確保されることになっていることから、すみやすい環境になると期待している。犀川ダムの完成以降、釣り人が訪れることもなく、漁業権者として心苦しかった。辰巳ダムの完成で淵や瀬の水が確保され、また、市街地に近いことから、よい漁場として太公望たちが多く訪れ、ひとむかし前の犀川がよみがえることを確信している。梅雨時、台風時に暴れ川となり、過去幾度となく大水害をおこしており、辰巳ダムは犀川の治水対策として重要な位置を担っているのでダムの一日も早い完成を願っている。


9.○中川清二(二塚住民)
(注:辰巳ダム反対と主張されてはいない。)
 納税者の立場から、起業者(県)に質問する。抽象的ではなく、具体的に回答すること、万全を期すなどという返事はいらない、誰それに聞いたらこう言っていたなどという返事ではなく、起業者自身の考えが聞きたい。

Q:治水専用ダムに変わった理由と時期は?
A:平成17年に多目的から治水専用に変わった。河川法の趣旨にのっとり、専門家に相談し、有るべき姿を検討した結果である。
Q:洪水災害の確率と規模は?
A:将来の雨を合理的に推測して治水安全のため1/100の規模とした。
Q:100年確率の根拠は
A:昭和31年から46年間のデータを統計解析して100年確率で2日雨量314mmとした。
Q:事業費用240億円とその財源内訳は
A:用地補償57億円、工事費128億円、財源の内訳は国費1/2、県費1/2である。
Q:財源は何をあてるのか
A:県費の10%は一般財源、90%は県債でその50%は交付税の措置がある。
Q:この工事についての費用効果の考えは
A:コストに対しての効果は、3.67倍である。ダムの無い場合、ある場合について、氾濫のシュミレーションをして、氾濫被害の年被害額を積み上げた金額をコストで割り算して求める。800億円の被害が出るというわけではなく、毎年の被害軽減額の総計であり、240億円掛けても、その3.67倍の効果を受け取ることができることを意味している。
Q:いま県債はいくらか
A:いますぐは、わかりかねる。
Q:県民の意識調査で公共土木事業はもう要らないという回答が要るという回答よりも多いが、県民意識をどう考えるのか。
A:流域住民に対して、平成16年6,7月に川づくり懇談会で、12月にはアンケート調査をしている。
Q:そうではなくて利害関係者を除く、県民一般の納税者に対しての調査についての質問である。調査をしないのか。
A:していない、今後もする予定はない。意志は県議会で認めていただいているのでそれが意志と考えている。
Q:業者の選定はどうするのか。
A:ダム本体は、WTOの一般競争入札を行って業者選定をする。
Q:談合はないか。
A:ないと思う。あるとしても民間の業者がやることで役所ではわからない。
Q:官製談合はないか。
A:ないと断言する。
Q:環境調査は
A:すべての項目について検討、予測を行っている。
Q:景観が悪くなって世界遺産登録できないということが起きたら誰が責任を取るのか。
A:文化遺産については有識者に聴いてできるだけのことはやっている。
Q:地滑りの影響は少ないとあるが、ということはあるということですね。
A:影響は少ないと考えている。

結論はこの事業に対していい感じがない。

昨日の公述を聞いて意外に思ったことがある。二塚で過去何回も浸水があったという話しがあった。たまたま、私は二塚出身である。過去に浸水被害の経験したのは、昭和27年頃、道路が少し水没して2,3日で引いた。床上浸水ではなく、床下浸水でもない。もう1回は昭和34か35年頃、少し、道路が100m2くらい浸水した。過去40年間水害はなかった。過去幾度も浸水被害があったというのは解せない。何でこんなところへ出てくるのかなと思った。

Q:用地取得が99%で見切り発車ということか?
A:現在も用地交渉を継続しています。
Q:その根拠を聞いている。姿勢そのものがおかしい。


10.●向 外雄(辰巳ダム建設協議会副会長)
 ダム用地提供者で辰巳ダム建設協議会副会長をしております。ダム建設賛成の立場で公述します。
 ダムの上流部に住んでおります。渓谷となっており、風光明媚なところです。ところが一旦、大雨が有りますと洪水が発生します。犀川ダムが出来る前は、大木や岩が流れてきて、川に面した田畑が大きな被害を受けました。
 谷間の小さいな集落ですが、辰巳ダムの受け入れにあたって激論がありました。地元にとって利益はないのではないか、われわれが犠牲者ではないか、先祖が苦労して切り開いた田畑を無くしたくないと町内は荒れました。
 洪水の怖さを実感しているものとしては、毎年のように洪水にあい、床下浸水や田畑の冠水でもその人達にとって死活問題であると思う。先祖伝来の土地を自分の代で少なくなることは本意ではないが、水害を体験しているものとして同じ金沢市民として下流の人達の生命と財産を守るために、辰巳ダムのため土地を英断を持って提供した。提供したのは平成8年、10年以上経つがダム建設の鎚音が聞こえず、提供した土地が活用されず、憤りを感じている。
 聞くところによると、自然を破壊するな、貴重な野鳥を守る、貴重な植物を守るとかで、全国に約600名の反対者がいるためにダム工事に着手できないとのことである。ダムに反対している人達に一言言いたい。地元に住んでいなくて地元のことがどうしてわかるのか、昔から住んでいるし、これからも住んでいく、あなたがた以上に考え、苦渋の決断をした。激論の末、下流の人の水害を守るために私達が犠牲になる選択をした。自然を守り、大切なことは理解するが、人の命と比べたらどうか、自分に火の粉がかからないから、好き勝手なことを言っているようにも思える。平成16年7月に新潟豪雨があり、5日後に福井大水害があった。白山を挟んですぐ近くであり、背筋を寒くした。上流にダムが出来ていたらこんなことにはならなかった。ダムに反対していた人はどう思ったのか。幸い、ダムを造るようにしたようだが。このような大水害が明日、金沢にも起きるかも知れない。一日も早く、ダム完成し、提供土地が有効に活用されることを願っている。

(筆者の感想)
 都市住民だった小生も農業の真似事をするうちに農村の事情がわかってきた。土地提供者の話の真実と嘘もわかるようになった。この公述の方の話には真実とおそらく嘘が混在している。
@先祖伝来あるいは先祖代々の土地を自分の代で減らせない
A苦渋の決断をして土地を提供した
B洪水の怖さを実感した
@は真実、Aは多分、嘘、Bは嘘あるいは誤解である。
@について:農民が自分の代で土地を含めた資産を減らすのは能力が劣る証拠であり、軽蔑の対象にもなる。先祖伝来の土地は後継の子孫へつないでいくことが求められる。かなりの農民は戦後の農地解放後、農地の所有者となっている。先祖伝来で所有権があったというのは正確ではない。戦後の農地解放で土地持ちとなった農民であっても先祖伝来の意味がある。というのは、地域の田畑は水源涵養の山林、水源から田までの用水路、田は三身一体のセットであり、これらを管理、維持してきたのは地域の農民達であり、田の所有権の如何にかかわらない。先祖伝来の土地に違いない。
Aについて:ダムのために提供された土地は谷底の条件の悪い、零細な田畑である。好条件の比較的広い田でも手間暇、採算の点から放棄される時代である。一生の大半をこれらの田畑と付き合ってきたお年寄りでも維持が負担になっているのが現状であり、後継者の若者は、大義名分があって耕作の義務からも開放される機会は、渡りに舟だったというのが実態だろう。
 Bについて:山崩れや土石流の怖さがあるかもしれないが、犀川の洪水による人家への影響は全くない地形であり、人命への被害は考えられない地域である。


11.●石井達夫(辰巳ダム建設協議会会長)
 ダム建設賛成の立場で公述する。私の住んでいるところは辰巳ダムのすぐ近くである。土地提供者の一人として先祖伝来の大切な土地を提供したにもかかわらず、提供以来20年も経ってしまった。ダム建設反対する人達のためにいまだ建設に着手できない状態に憤りを感じている。1975年に多目的ダムでスタートし、環境影響評価も行われた。ダム湖の汚濁について地元住民の間にも不安感を持つ者もいた。このことについては石川県は上下水道の整備をダム本体建設までにと約束していた。上水道については交渉中であり、推移を見守りたい。当初計画のダム堤位置は東岩取水口の取り壊しのため、反対の声があがり、辰巳用水移設復元等検討会で1年にわたり検討され、多額の費用がかかるので振り出しに戻った経緯がある。国政の変化もあり、一時中止になると思ったこともあった。工事用付け替え道路買収、道路工事に伴う騒音、貴重種のミゾゴイの問題を反対派は持ち出し、さらにダム建設が遅れた。地元住民も見たことのない鳥に県は振り回され、多額の経費を使わされたわけである。反対派は、土地を探し出し、反対運動を行い、一方で情報公開を繰り返し行って、それによる遅延も大きいものがあると思う。2003年の整備検討委員会の提言、流域委員会の整備計画、公共事業評価監視委員会で当初の計画を見直し、多目的ダムから穴あきダムに変わった。普段は水が貯まらず、反対派がいう東岩は残り、水質汚濁も解消するわけですし、環境や景観、生態系に与える影響も大幅に減った、反対する理由はない。今度は、大橋の基本高水量が過大だ、ダム建設は税金の無駄遣いだという理由で建設反対を叫んでいるのが実情です。反対による、行政の支出は莫大になっている、何も感じないのでしょうか、皆さんこそ税金の無駄遣いをしているのではないでしょうか。一度、反対の声をあげたら、状況が変わっても反対の手をおろすことができず、タイミングを失した感があると思われる。ここ近年、地球温暖化現象があるのか、平成16年7月に新潟、福井大水害が発生し、市民生活に大きな被害を出したことは記憶に新しいところである。ゲリラ的豪雨がいつどこで発生してもおかしくない、ここ犀川水系でも起こる可能性は否定できない。私は消防関係にいた。洪水時、水防活動を通じて、被災した住民の悲痛な叫びや恐怖を知っている。実際に水害にあった人にしかわからない悲しみや苦しみがある。反対するみなさんの大半はよそものであり、机上の理屈ばかりをならべておられるが、ダム建設が遅れ、その間に大水害が発生し、市民生活に大きな被害がでたらあなたがたはどうされるのか。おそらく、行政の対応が悪いと叫ぶでしょう。私は湛水したダム湖面に舟を浮かべ、周囲を散策することも夢見ましたが儚く消えた。ダム湖の水が引いた後の流木が心配の対象で、この対策を是非考えて頂きたい。私は先祖伝来の土地を言葉で言い表せないほど苦労して守ってきた。下流の人達を水害から守るために貴重な土地を提供した。災害の悲惨さは経験した人にしかわからない。反対派のみなさんは我が身に降りかからないから好き勝手なことを言っているのではないでしょうか。自然も大事、景観も大事、しかし、人命に勝るものはありません。安全安心の町づくりの一環として提供した土地が一日も早く活用され、下流住民が安心してくらせるように早期にダム建設が完成することを願い、公述を終わる。

(筆者の感想)
一言で言えば、一般的な河川整備について感情論を根拠に述べているに過ぎない。この方はダム建設に賛成しているようでダム賛成についての理由を一言も述べていない。その証拠に、「ダム建設」→「河川改修」あるいは「下流の河川拡幅」などと読み替えでも意味は全く同じと言っていい。
多分、一度、賛成の声をあげたので、状況が変わっても賛成の手をおろすことができず、タイミングを失した感があるのでしょう!



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