辰巳ダムで辰巳用水の安定取水ができたか! |
辰巳ダムの出来上がった姿は治水専用ダムであるが、利水目的もあり、犀川ダムの治水ダム容量と振り替えられて犀川ダムが辰巳ダムの利水ダム容量を受け持っている。したがって、辰巳ダムの完成によって利水、つまり辰巳用水への安定した供給に貢献することになるはずである。また、ダム建設前後で水質への影響はあるのかも含めて兼六園管理事務所の持つ辰巳用水取水実績を調べてみた。 過去10年間の取水実績を公開請求(2014年1月1日付け)し、その請求内容は、以下のとおり。 ・過去10年間の兼六園の辰巳用水からの取水実績(年間取水日数、毎日/毎月/毎年の取水量)、 ・過去10年間の兼六園内ポンプによる取水実績(年間取水日数、毎日/毎月/毎年の取水量) ・ならびに上記の取水に関する水質試験結果 (公開された文書) 請求に対して1月24日に行政情報サービスセンターで以下の公開を受けた。兼六園管理事務所のY氏、K氏から説明を受ける。 @ 地下水採取量報告書(平成24年度の1,2,3号ポンプ各1表) A 水質データ(1枚、2009年から2013年までの年2回、沈砂池地点で計測) B H24.4〜H25.10の記録紙(アナログ)のみ 参考:兼六園平面図一葉 (公開時の説明) 兼六園内ポンプによる取水実績は、保存年限が1年である。平成24年度のデータだけが公開できる。H24.4〜H25.10の記録紙(アナログ)があり、11月はメーターを取り替え、メーターの目盛りを見て確認したが、記録無し。開園時間内に毎秒70リットル以上の水が流れればいいので記録は残していない。流量計は辰巳用水からの最初の池にあり、流速、水位を測って流量に換算している。記録紙の赤色の線は、水位を表し、緑色の線は流量を表す、100%→150g/s、50%→75g/sの関係。 園内に3箇所のポンプが設置されている。 1号、2号はかんがい名目で曲水へ供給、3号は消雪用である。 1号、2号は、大雨警報で辰巳用水のゲートが閉鎖されて水がストップする時、あるいは、川水が濁って取水できない場合に使用する。 1号はかんがい用水名目で、ポンプ能力最大34リットル毎秒(30g/秒〜34g/秒) 2号はかんがい用水名目でポンプ能力最大22リットル毎秒(22g/秒〜20g/秒) 3号は消雪用ポンプ能力最大34リットル毎秒(30g/秒〜34g/秒) 水質は、毎年2回、沈砂池で調べられている。6月、11月に業者に委託。 (公開文書データを整理した検討結果) 平成24年度のポンプによる地下水採取を作成したものが表1である。単に平成24年度だけのデータであるので、辰巳ダムの建設前後で辰巳用水取水の安定度に変化があったかどうかはわからない。辰巳ダムが運用を開始したのは、平成24年6月である。6月のポンプ稼働日数は1日だけだったが、7月は8日、8月は8日、9月は10日と月のおおよそ3分の1はポンプを稼働しており、辰巳用水から取水できていない。辰巳ダムが辰巳用水の安定取水のために役に立っているとはとてもいえない。取水できないのは、犀川の水が濁っている場合である。大雨があると川の水が濁る、雨があがるとまもなく川の水の濁りも解消する、ところがダムに湛水した水までが濁ると回復が遅れることになる。 地元の人の話では、ダムがないときには、大雨の後の川の濁りは雨が上がると1,2日で清流に戻ったが、犀川ダムができてからは、大雨の後に犀川ダム湖の水全体が濁ったままになるので犀川ダムから放流される水で川の水の濁りが1ヶ月ほども濁ったままになることがあるということである。辰巳ダムで確保している水は、犀川ダムの濁った水である。 結論、辰巳ダムは辰巳用水安定取水の役に立たない! また、水質の変化についてはいまのところよくわからない。 水質データは年2回計測したものが5年分ある。6月は平成22年(2010年)から平成25年(2013年)、11月は平成21年(2009年)から平成25年(2013年)。6月と11月のそれぞれについて表したものが表2。辰巳ダム運用開始の平成24年6月を境に何らかの変化があるか確認したが明瞭ではない。
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