辰巳ダム裁判4周年集会について


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「辰巳ダム裁判4周年集会」についての予定と内容
「辰巳ダムは必要ない――裁判でますます明確に――」
 八ッ場ダムと辰巳ダムの過大な基本高水は計算手法「貯留関数法」のためか?
日時:平成24年7月8日(日)午後1時半〜4時
場所:石川県教育会館(香林坊、大和裏)
会場:第1会議室(2F)
講師:関 良基 拓殖大学政経学部准教授
久保田康宏 辰巳ダム裁判治水担当弁護士

プログラム(予定):
議事次第 
 1.団長挨拶 (5分ほど)
 2.「過大な想定洪水と基本高水の一般的な問題」(仮題) 関 良基 拓殖大学政経学部准教授 (約1時間)
 3.「辰巳ダムの過大な基本高水」(仮題)久保田康宏 治水担当弁護士 (約35分)
 4.質疑応答 (約45分)
 5.閉会の挨拶
 合計 2時間半

関 良基先生の紹介
1969年生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。拓殖大学政経学部准教授。森林政策学。昨年『世界』10月号に「基本高水はなぜ過大なのか」を寄稿。八ッ場ダムの根拠となっている基本高水の虚構ならびに貯留関数法という計算モデル自体の信頼性が低いことを指摘。日本学術会議などの学会に波紋を。関心領域は、「コンクリートから緑の公共事業への転換」で、次代の若手の理論的リーダーの一人。

久保田康宏先生の紹介
辰巳ダム裁判弁護団の治水担当弁護士で若手のホープの一人。治水の準備書面で力作を披露。辰巳ダムで用いられた貯留関数法による基本高水について過大になった問題を指摘し、基準で求められている検証を懈怠していると行政裁量の逸脱濫用を追及。


八ッ場ダムと辰巳ダム
いずれの裁判でも地すべりの危険、過大な基本高水が争点となっている。全国でダムの裁判が多々あるが、基本高水ピーク流量を最大の争点としているのは、八ッ場ダムなどわずかな例があるばかりである。
基本高水の計算手法は、八ッ場ダム、辰巳ダムいずれにおいても、「貯留関数法」という計算手法が取られている。辰巳ダム裁判においては、この手法による計算結果について一部批判をしているだけであるが、八ッ場ダム裁判では、手法の適用そのものを問題視している。
 八ッ場ダム裁判で複数の意見書を出されている関 良基拓殖大学准教授は、「貯留関数法」について、
 「貯留関数法では、飽和雨量に達して以降の雨水はいっさい地下には浸透せず、全ての水が河川に流出すると仮定されているが、この仮定は自然の実体とはかけ離れた非現実的なものであるため、計算流量が過大になりやすい。」(『世界』10月号)
「貯留関数法という計算モデルは信頼性が低く、国交省に都合のよいように恣意的に運用されている」(八ッ場ダム裁判の意見書)
などと指摘している。
 八ッ場ダムの利根川の八斗島基準点の基本高水は、既往最大洪水である昭和22年のカスリーン台風の17,000?/秒であったものが、「貯留関数法」による計算が採用されてから22,000?/秒となった。これに対して、関拓殖大学准教は、(日本学術会議が明らかにした事実を反映して)国交省の新モデルでカスリーン台風の再来計算流量16,663?/秒となると指摘している。(添付図参照)
 その結果、カスリーン台風の再来があっても、八ッ場ダムがなくても八斗島基準点で洪水を流すことができる。
 一方、辰巳ダムでは、過大に算出される「貯留関数法」の計算結果を用いたとしても、1312?/秒であり、既存2ダムの洪水調節により犀川大橋基準点で洪水を流せる量を大幅にしたまわる。貯留関数法による1312?/秒自体が過大ということになれば、さらに余裕ができる。そもそも、八ッ場ダムの利根川とは異なり、既往最大規模洪水でも現状の川の大きさで余裕を持って流すことができている。

 関准教授は「貯留関数法」に関して、さらに「緑のダム効果」や「中規模−大規模」問題があるという。前者について、国交省は「森林の効果はたいしたことはない」、「森林変化が流出モデルのパラメータに与える影響は認められない」などと主張して、計算のパラメータに反映していないが、戦後の荒廃した状況から明らかに自然が回復した状況で、森林の保水力は著しく回復しており、保水力を考慮すれば計算値はもっと低下するはずとの指摘をされている。犀川の治水基準点の流域面積の9割は山地であり、犀川でも森林の保水力を反映させれば計算結果は小さくなる。また、「中規模−大規模問題」は、小さな出水の計算モデルで極端に大きな洪水の計算には適用できないという。辰巳ダムにもあてはまり、実際の出水量は210?/秒に過ぎないにもかかわらず、平成7年8月30日型降雨によって基本高水ピーク流量1750?/秒が決められている。

岩波書店のホームページより
『世界』10月号「基本高水はなぜ過大なのか」
──国交省の作為と日本学術会議の「検証」を問う──
関 良基
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「基本高水」という記号は、ダム業界の側から見ると「ダムを造り続けるための打ち出の小槌」のようなものである。一方、納税者から見ると、基本高水が現実から乖離した過大な値に設定されているとすれば「税金を吸い込むブラックホール」になる。
 八ッ場ダム住民訴訟で、国交省による利根川の流量モデルの検証作業に携わった筆者が、「算術遊び」で法外な数値をひねり出す国交省の作為とそれに追随する日本学術会議の姿勢を厳しく問う。そこからは、「原子力村」と同じく、ダム建設を推進する「河川村」においても、「学」は「官」「業」と一心同体であり、この「官業学複合体」が血税に寄生し、国家財政を破綻に追いこもうとしている実態が浮かび上がる。
せき・よしき 1969年生まれ。京都大学農学研究科博士課程修了。拓殖大学政経学部准教授。森林政策学。関心領域は、コンクリートから緑の公共事業への転換。主著に『複雑適応系における熱帯林の再生』『中国の森林再生──社会主義と市場主義を超えて』(ともに御茶の水書房) がある。
辰巳ダムと八ッ場ダムの基本高水の比較
2012.6.4,naka

 

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