辰巳ダム日誌(2003年12月)

【辰巳ダム問題の進展:12月13日掲載】 

辰巳ダム問題は、県が犀川の河川整備に関して検討するために開催した、昨年10月から「犀川水系河川整備検討委員会」(2002年12月〜2003年11月)、続いて先般12月の「犀川水系流域委員会」を通じて、若干の進展が見られた。
河川整備4項目(治水、利水、環境、歴史/文化財)について、従来から県が主張していた点と異なった点は、つぎのとおりである。
【治水】
●犀川大橋地点の基本高水流量の見直し1,750m3/秒(従来は1,920m3/秒)、
●犀川の治水上の弱点は犀川大橋ではなく、鞍月用水取水堰から大桑橋区間、流下能力500〜1000m3/秒(1,230m3/秒必要、「未整備区間」であることを表明)、
●治水のための「辰巳ダム」を小規模化して辰巳用水取水口の上流に移動して築造。

【利水】
●農業用水の見直し(かんがい面積が約1/3に減少)、
●未利用の工業用水の活用(犀川ダムで開発したが約40年間未使用)。
【環境、歴史/文化財】 省略。

〈解説〉
 基本高水1,750m3/秒は誤りである。
県の解析結果を正しく読むと100年確率の洪水流量は、1,043m3/秒。
 当方が調査した、20世紀100年間に発生した最大出水量は、842m3/秒(平成10年の台風7号)。
 1,750m3/秒は有史以来発生したことのないような異常値であり、当方が従来から指摘しているように、統計の考え方の誤りによるものである。

 鞍月用水取水堰上流の流下能力の不足については、初めて県から説明があった。それも、一市民からの指摘がきっかけである。県の計画担当者も知らなかったのではないか?当方も10年以上、議論していて初めて知った。流下能力が500〜1000m3/秒程度であるという。

 辰巳ダムの立地点は、辰巳用水の取水口を避けて上流に造るという結論は委員会の議論の中ではほとんどなかった。方針案が出されて、突然にでてきたものである。もともと筋書きができていたのかもしれない。

農業用水の見直しについては、水量の根拠に疑問は残るが、既得権の打破の観点から大進歩である。いままで、既得権の強化はあっても低減はなかった。

 工業用水の活用については、12月の「犀川水系流域委員会」の説明で突然出てきた。工業用水の水利権は金沢市が保有しており、県は関与外としていたことからは大進歩である。

 利水に関しては、上水の水余り(約1.3m3/秒、工業用水の約3倍)の点の見直しが残されている。県は河川維持流量1.19m3/秒必要と主張しているが、上水の水余りの大きさがわかるだろう。犀川で開発した上水の水余りの理由は、県水による手取川からの受水0.96m3/秒(将来2.26m3/秒)である。市の上水需要の伸びが見込めないので、将来的には、犀川で開発した上水2.37m3/秒がすべて余るだろう。

                                                                  平成15年12月9日
                                                                      中 登史紀

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