辰巳ダム日誌
公共事業評価監視委員会意見およびその付帯意見を受けて、石川県は最新の約20年以上の雨量データを整理したとのことである。このデータに基づいて、新たに犀川の基本高水量をチェックするとのことであり、工事実施方針を近々に県民に示し、理解を得るように努力をするとのことである。
その機会に備えて、新規まき直しをすることにした。特に、計算された洪水量があまりにも大きいのではないかとの疑問を持つので、今回は徹底的に議論をしたいと思っている。
100年確率の降雨によって、犀川大橋地点で1,920m3/sの出水が予想されると、県は主張していた。新たなに十分なデータで検討すれば、このような大きな数値がでないはずであると考えている。仮に、この数値が100年確率というのなら、200年確率の降雨に対しては、2,300-2,400m3/s、1000年確率の降雨に対しては、3,000m3/sにもなりかねない。このような洪水が実際に犀川大橋地点で発生したなどということは過去の歴史からも想像できない。いかにも大きすぎる。1,920m3/sでも有史以来発生したことはないのではないか。
現代では、解析手法やコンピュータの能力が飛躍的に向上した。しかし、データの質と量、解析に必要な係数の信頼性などが伴わないこともあり、解析結果の信頼性は必ずしも高くないように思われる。実際に既辰巳ダム計画のデータは「杜撰」と言っても過言ではないと思えた。そのようなデータに基づいた解析結果の信頼性は語るに落ちる。判断力のあるエンジニアであれば、解析結果を鵜呑みにするのはいささか問題ありと気づくはずである。実際の洪水量に照らして計算値の妥当性を判断することも必要である。実際にどれだけの洪水が発生したのか。大きな洪水があったのであれば、何か、現場に痕跡があるかもしれない。あるいはまた、古老に語り継がれた話があるかもしれない。今年は、実際に、現場で手がかりを探してみることにする。(平成14年4月10日記)
平成14年4月11日
去年の県の話では13年度中に降雨データを整理するとのことであった.すでに4月であるので、県の山本ダム建設室長に電話してその状況を尋ねることにした。データの整理は済んでこのデータを使って基本高水量の再計算等の検討は今年度の終わりまではかからないとの話であった。当方の主張では、県が既に算出した出水量(犀川大橋で1,920m3/s)はデータの杜撰な取り扱いなどに影響され大きすぎる。有史以来発生したことのないような数値である。今回、データをきちっとすればそのような大きな数値にならないはずであるから、計算が終わったら、教えてほしい旨を申し入れた。また、計算はあくまでも、ある仮定の上の計算であり、実際の出水量との比較はかかせない、そのために実際の過去の出水、大洪水の情報をまず、地元の人から入手したいので現場の辰巳ダム事務所を通じて事情に明るい人を紹介してくれるように頼んだ。(県民の生命と財産を守ることを第一義の職務としているのだから、現場の辰巳事務所では地元から、さまざまの貴重な情報が集めているはずであるから。)
後日、辰巳ダム建設事務所の中村課長から連絡があり、相合谷と寺津の方を紹介してもらうことにした。晴の確率が高いらしい緑の日4月29日に現場で案内してもらうことにした。
平成14年4月19日
現場の辰巳ダム建設事務所で、過去の大きな洪水に関する記録等の資料を調べたいと電話で問い合わせたが、建設工事に関する資料以外はないようであった。ただ、今年は実際の洪水の痕跡を求めて、何回も犀川上流を訪ねることにしていることや、最近、辰巳ダム予定地付近を訪ねたことがないこともあり、一度、建設事務所を訪れることにした。丁度、「ナギの会」の渡辺氏が、「ミゾゴイ」に関する件で建設事務所にでかけるということであったので、一緒に行くことにした。「ミゾゴイ」の営巣を妨げないように配慮した工事をしているということである。トンネル入り口を遮音扉で遮蔽、毎日の騒音測定などが行われている。
事務所の会議室で過去の洪水の痕跡調査についての説明の後、相合谷から水淵へのトンネル現場視察をさせてもらった。
平成14年4月22-25日
戦後の大きな出水時の気象データの収集(金沢地方気象台にて)、各洪水や年度の実際水害被害額の収集(県の行政情報公開センターにて、『消防防災年報』など)。
平成14年4月29日
犀川上流の洪水の痕跡調査のため、相合谷と寺津で地元の人から、過去の洪水の様子をうかがった。相合谷では、
現在の相合谷橋(コンクリート製)の橋を建設中、完成の前に洪水で流されたので、橋の高さを上げて造り直して現在の橋をかけたとのことであった。およそ30年まえのことらしい。市で記録を調べることにした。相合谷橋の近辺の写真。
寺津では犀川源流の犀滝へ数限りなく行っているという方に話をうかがった。大雨があると、その時の雨の強さばかりではなく、それまでの長雨で地盤がゆるんでいたりすると崩壊するし、逆に雨が強くてもゆるんでいなければ崩れない、条件によって大きく異なるが、山の崩壊は度々発生しているとのことであった。平成10年の大雨の時は、寺津の集落の2つの谷で大きな出水のために土砂で田が埋まったりしたとのことであった。特に、記憶にあるのは、犀川ダムの上流、二又川の上流、オオショウズとト谷(砥谷)の間で15年くらい前、大きな土砂の崩壊(幅約200m、高さ300mくらい)で川がせき止められ、ダムになっていたことがあるとのこと。寺津集落から目の前に見える、対岸の山も昔、崩れたことがあるとのこと。一角に樹木がないのでわかる。
寺津から、約2km上流に、上寺津発電所がある。そこを過ぎて200mくらい行くと、道路の正面に(左岸側)、最近、崩れたと見られる斜面があった。
その横の人道を降りると、新寺津発電所である。下まで降りて視察した。
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2002.4