日本科学者会議で辰巳ダム問題を発表!
――犀川の基本高水流量は異常に過大、適切な基本高水流量を採用すれば「辰巳ダム」は不要――
by Toshiki NAKA
会議名:日本科学者会議による第18回総合学術研究集会
期日:2010年11月19〜21日
開催場所:仙台
分科会:〔E-4〕ダム等の河川における大型公共事業の現状と環境保全
発表題名:「犀川の治水と辰巳ダム計画に関する問題」
発表者:上野鉄男/(中登史紀)
講演要旨 金沢市を流れる犀川においては、辰巳ダムの建設が進められており、これをめぐってダム建設に反対する市民運動が起き、事業認定をした国を被告として、「土地収用法に基づく事業認定処分取消訴訟」が建設予定地内の共有地の地権者有志によって行われている。 犀川の治水計画においては、異常に大きい基本高水流量が採用されており、行政が設置した各種の委員会に多くの学者が加わって、これを正当化してダム建設を推進する理論的根拠を与える役割を果たしている。適正な基本高水流量を採用すると、ダムは不要であり、また、計画で採用されている過大な基本高水流量を前提とする場合でも、環境に配慮したダムによらない治水対策が可能である。 以上の問題を明らかにするとともに、全国的な治水事業の現状と問題について報告したい。 |
【論文発表についての中の感想】 辰巳ダム計画では、その根拠となる100年確率の想定洪水を毎秒1750立方メートルとしているが、現実に発生した洪水とは甚だしい乖離があることが無視された。20世紀の過去100年間の最大規模の洪水は毎秒800から900立方メートル程度にすぎない事実が明らかでありながら、学識経験者と称する専門家らはことさら問題視せず、降雨データから間接的に求めた推定算定値は、異常値が棄却されている結果であるという論理で是認している。 いかに精緻な推定モデルであっても、いくつもの仮定が挿入されており、その結果が現実と大きく異なることは予想できる。これらについても問題点が指摘されながら、コンピューターによる推定計算値だけが金科玉条のように用いられている。これに対して、科学者による適切な科学的な発言がなされていない。 辰巳ダムが計画されている犀川では、約30年の流量観測記録があり、これを用いて流量確率の計算をすると、100年確率流量は800から1000程度となる。筆者は、石川県河川課に対して再三にわたり、流量確率から100年確率流量を求めてチェックするように申し入れをしていた。 筆者のおおよその主張はつぎのとおりである。 「1/100の基本高水について平成7年型を根拠に1750と決めているが、たまたま平成7年に150ミリほどの小さい雨があったからといって、100年に1回の雨が平成7年型になり、大洪水となるという科学的根拠は何もない。そんな計算するより、数十年の観測流量があるのだから、これで統計計算をするべきで、これが信頼できる確率流量だ。」、 これに対して当時のT河川課長はつぎのように反論していた。 「石川県が行っている基本高水の計算は、全国の中小河川で一般的に行われている方法であり、観測流量から求める方法は一般的ではないし、石川県ではやらない。中さんがおかしいとおもわれるなら、中さんの意見を学会などで発表されてはどうですか。」 発表の機会が得られることになった。2010年11月19〜21日に仙台で開催された日本科学者会議による第18回総合学術研究集会(於宮城)である。分科会〔E-4〕ダム等の河川における大型公共事業の現状と環境保全 において、「犀川の治水と辰巳ダム計画に関する問題」と題して上野鉄男先生が発表された。 【追伸】 日本科学者会議(JSA)という組織がある。科学の進歩が人類の幸福をもたらすばかりでなく、負の側面も多くある、科学者が自覚と責任を持ち、人類の負託に応えられることが求められているということで、半世紀ほどまえに創立された。科学を人類の真の幸福に役立たせるために、21世紀の学問のあるべき姿を探求し、成果を社会へ還元することを課題として活動している。 小生もこの主旨に賛同して、最近になって入会した。辰巳ダム問題を土木技術的な観点から検討して約15年、科学技術の進歩の成果が「人類の幸福をもたらす」のではなく、逆に大規模に自然環境を破壊するだけに寄与していることを痛感している。市民の安全安心のために辰巳ダムが治水に役に立つはずだと、行政や議会が信じること(ダム神話)があるとしても、これに対して学識経験を有する専門家までが冷静な科学的判断を提供できないことに深い懸念を感じていた。換言すれば、科学技術の進歩の成果を悪用されても、科学者は良心に蓋をして、口をつぐんできたともいえる。 平成22年11月24日 中 登史紀 発表論文と紹介文→pdfファイル 追記 日本科学者会議パンフレット1ページ目、パンフレット2ページ目 講演申し込み書(上野、中) |
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