上水道のページ ■辰巳ダム日誌
    辰巳ダム日誌(2005年7月25日(月))
内川ダム見学
 見学日時:平成17年7月25日13時〜15時
 内川ダム説明者:後藤所長、山本氏、吉田氏
 見学者:中、渡辺

 内川ダムは利水、治水目的の多目的ダムである。利水については、金沢市企業局が管理、治水については石川県(内川ダム管理事務所)が管理している。今日、訪問したのは、治水の内川ダム管理事務所。


【内容】
管理体制:職員は所長を含めて3名。くわえて、運転手1名、雑務担当の女性1名、宿直2名(交代)、計4名の嘱託。合計7名。
日常の主な業務:
 基本的には、「内川ダム操作規則」による。
@ダムのゲート、機器、通信設備、監査廊の点検
A気象観測業務(ダム地点、菊水地点(雨量だけ)、風向、気温、天候、気圧、水温、、)
 B関連施設、公園の管理、周辺地域の観察、管理要員の生活のための雑務(清掃、飲料水の消毒、トイレの清掃など)
年間の定期的な点検:水質検査等(年5回)、毎月水温、)
大きなトラブル:主要な設備に関するものはなし。
監視室の主な機器:操作卓(監視TV、雨量/貯水位/放流量、ゲート操作)、気象観測記録装置、サイレンの警報装置など。
ダム管理: 
貯水位204mから224m(非洪水期間は224.5m)までの区間は、利水サイド、つまり金沢市企業局が取水口(右岸側)を通じてダム貯水量をコントロールしている。
 貯水位が224m(非洪水期間は224.5m)が近くなる、あるいは台風などにより、ダム湖への大きな流入が予測される場合、放流の準備を始める。洪水(40m3/秒以上)に備えて治水容量を確保しておく必要があるので、通常は224mの水位を超えないようにコントロールすることを求められる。ダム湖から直接放流する場合は、サイレンで下流へ警報を発する。ダムの堤体の下の方にあるコンジットゲートから放流する。一旦始めると2〜3日は続く。去年は10数回の放流。今年は4回。
(筆者追記:毎秒8m3/秒までは利水の取水(発電取水)を通じて放流、これを超える部分はダムから直接放流。)
現在の水位等:
 貯水位220.80m、
 直接放流量0m3/秒
 利水(発電放流と言っている。)の放流量0m3/秒(企業局、1時頃たまたまた取水を停止、毎日少なくとも上水と長坂用水分は取水)
 この水位で、約83m3/秒が1時間流入すればダム水位が1mあがる。
ということでした。


内川ダムを右岸上流から望む。中央の対になっているのがクレストゲート。左側の白線に見えるものが水位標識。現在の水位が221m。
クレストゲートの下端が225.4m。1.4m下がりの224mが夏場の制限水位。ダム天236mから2m下がりの234mが洪水時の満水位、サーチャージ水位。
この水位と制限水位の間で、洪水調節を行う。

【見学者の感想など】
 以後は、お聞きしたことを後で「ダム操作規則」を確認しながら、頭を整理して考えたことである。筆者の憶測も含まれているので以下の内容のすべての責任は筆者にある。

●ダム操作の困難さ
 計画の洪水440m3/秒であれば、12分で1mあがる。
 洪水調節容量は、224mから234mの10mの区間で洪水調節。
 課長がただし書きの操作に入るのは、232.2m、234m(HWL)まで1.8mしかない。時間にして20分くらい。一瞬の躊躇も許されないという感じである。
●治水のためのダム操作
 内川ダムにおける洪水の定義は、40m3/秒以上。洪水(40m3/秒以上)になれば、まず40m3/秒に抑えて放流、それでも洪水が増大すれば、40m3/秒以上の分を定率(0.225)の量を40m3/秒に加えて放流、残りの0.775の分は徐々にダム湖に貯まる。最大は、130m3/秒。貯水位の水位が上昇して、232.2mを超えると第十六条のただし書きの規定により、課長の判断で放流できる。洪水調節をやめて、ダム湖へ入った分をそのまま放流できる。
ダム流入量を把握し、同量をダム中央上部にある、2門のクレストゲート(下端225.4m)の開度を調整して放流する。クレストゲート開度は湖面水位から決める。この操作をして、湖面水位が上昇も下降もしなければ、流入量=放流量と言うことになる。
●洪水調節ダムがいざという時に役に立たないどころか、逆に洪水を拡大させる理由
 ところが問題がたくさんある。流入量は時間と共に変動する。そして、その量はダム湖の水面の上昇速度という、間接的で感度の悪いデータでしか知ることができない、それも大嵐で強い風によりダム湖の水位は揺れているので精度は極めて悪いと推測できる。また、クレストゲートから放流を始めるとダム堤体裏にある水位計の付近の水位が急激に下がる、このためダム湖への流入量がわからなくなる(これは湖面全体の水位を代表しなくなるため)、クレストゲートから放流量も変化する、操作によりつぎつぎ影響が広がる、結果的に放流量も流入量も的確に把握できない。
 ダム管理者はダム湖が満水になり氾濫する恐怖から、大きめにゲートを開けて早くダム湖の水位を下げたいという、大きなストレスがかかる。ダム湖へ流入する水量もダム放流量もよくわからない上、さらに今後の流入量の推移は、気象庁の気象予報、空模様、ダム地点と菊水の現時点の雨量データ等の情報と経験と勘でしか、予測できない、言い換えればよくわからない。このような状況の中で結果的に的確な操作は無理で、できたとしたら、神業である。
 実際は、流入量以上に放流してしまう危険性は大である。
 洪水調節ダムが洪水を引き起こす!

●最新式のダムは人為的に洪水調節をしない!
 最近のダムは、人為的に洪水調節をしない(できないため!)。
 ・計画洪水まで→ダムの下あたりにある穴から自然放流
 ・計画洪水以上→ダムの天端からオーバーフロー
 ダムが満水になるとオーバーフローする形式は実際の流入量がそのまま放流されるのでダムで流入量以上の放流することはない。
できないので、最近のダムは操作しない構造。今年完成した九谷ダムは満水になるとダム全体からオーバーするようになっている。五十嵐川の最新式の大谷ダムは穴あきでダムの天端には横幅の大きな越流部分がある(ロックフィル式ダムでダム全体からオーバーさせない、コンクリート構造ではなく、岩と土でできているので越流させると崩れる。)。ダムが満水になるとコンクリート構造の越流部分から自然にオーバーする。

■クレストゲート
 クレストとはダムの堤頂部のことで、ダムの堤頂部に設置されるゲート。計画規模以上の異常洪水時にダム天端からの越流を防ぐための非常用ゲートとして使用し、非常用洪水吐として使われる。

■コンジットゲート
 堤体中の下部に設置され、放流管ゲートのこと。洪水調節用の高圧放流設備として設けられるゲート。常用洪水吐として使われる。

 平成17年7月25日 中 登史紀


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