上水道のページ ■辰巳ダム日誌
                          辰巳ダム日誌(2005年6月23日(木))
犀川ダム見学
 犀川ダム管理事務所(229-0037)金谷所長

 犀川の利水について議論するに際して、実際のダムの管理についてもう一つ、理解が不足していることを痛感していたので、実際の現場で管理について話を聞くことにした。今日は犀川ダム管理事務所、明日は金沢市企業局発電管理センター、来週は内川ダム管理事務所を訪問して犀川の水管理について教えてもらうことにした。
 犀川ダム管理事務所は犀川ダムの堰堤に接して配置されている。そこへ向かうための道「倉谷土清水線」は去年の豪雨災害による土砂災害のため不通となった(2カ所で路肩の崩れ、4カ所で谷川が崩壊し道路が埋没)。少なくとも7月末までは一般の車は通行できない。
 そのため、バスで駒帰まで行き、そこから約8kmを徒歩で行くことにした。駒帰から、上寺津ダム(上寺津発電所、新寺津発電所)地点まで約2.5km、そこから新寺津発電所への送水管の取水口地点まで約2.5km、さらに約2.5km行くと犀川ダムに至る。昨年秋の豪雨災害による復旧工事も確認しながら、犀川ダムへ向かった。朝、天徳院前のバス停を9時14分に出発し、駒帰は9時35分に到着。駒帰からは徒歩で上寺津ダムまで約40分、そこから新寺津の取水口まで約40分、さらに犀川ダムまで約50分、計2時間強の道程であった。


 下に写真を載せてあります。



 見学および所長の説明
 ●ダムの治水に関する管理について
 洪水期間(6月15日〜9月30日)は、夏期制限水位340.0mまでは利水者(金沢市企業局)が利水者の判断で取水を行う。この水位を超えた場合、治水管理者(犀川ダム管理者、つまり石川県)が流入量と同じ量だけ放流する(ただし、95m3/秒以内)。この放流を行う前には関係者に連絡を取り支障のないことを確認し、その後、川に沿って配置してある9カ所の放流警報のサイレンを鳴らし知らせる。去年は、7,8回あった。警報は最初に一度だけ発する。放流はその後、平均的には1週間程度、流しっぱなしになることが多い。
非洪水期間(10月1日〜6月14日)は、常時満水位346.5mまで、利水管理者が利水。これを超える場合、治水管理者が流入量と同じだけ放流する。

 ●流入量と同じだけ放流する操作について
 流入量が刻々変化するのでこの変化をある程度、予測しながら操作する。自動でできない。予測するために、雨量(ダム地点および成ケ峰雨量局からテレメータデータ)、水位(ダム水位、倉谷水位局テレメータデータ)、気象情報などを勘案し、予測する。経験と勘が必要であり、むずかしい作業である。

 ●洪水時のゲート操作の困難さについて
 犀川ダムの場合、洪水時、95m3/秒に達するとそれ以後、95m3/秒の一定量にコントロールすることが管理規定で決められている。しかし、この調整は神業に近い。夏期制限水位340mにある場合、洪水は中央の2門のゲートを開けて放流する。洪水量がだんだん増えて95m3/秒に達するとそれ以降は95m3/秒に絞るため、ゲートの開度をあるところまで下げる。その後、ダム湖に流入する量が95m3/秒を超えて増える場合、水位が上昇する。水位が上昇すると同じ開度でも水圧が高まるので放流量が増える。これを95m3/秒に抑えるためにゲートを少し閉める必要がある。そうすると水位は逆に上がる。水位が上がると、今度はゲートをまた少し閉める必要がでる。つまり、水位が上がれば上がるほど、ゲートは逆に閉める必要がでてくる。これは、ゲートを閉める者(ダムを管理する者)にとって大変なプレッシャーになる。閉めすぎて、まずいと判断し、逆に開けようとする場合は、機械的に逆方向に回転することであり、一呼吸、置かなければ、大きな機械などで簡単に動かない。その点、一定率制御は簡単である。開けたら開けっ放しでいいからである。内川ダムは一定率制御であり、楽である。

 ●非洪水期間の操作のやりにくさについて
 10月1日から翌年6月14日までは非洪水期間であり、ダム湖は常時満水位346.5mまで利水管理者が水位を上げることができるようになる。利水管理者としては水位が高い方が、発電量が大きくなるからなるべく水位をあげるようにする。この場合、治水管理者としてはダム管理がやりにくくなる。常時満水位346.5mとサーチャージ水位347.7mとの差は1.2mしかない。この範囲の中で洪水調節をする必要があるからである。管理事務所の操作室から見るとこの1.2mはほんの数十センチの差しかないように見え、操作が非常にやりにくい。

 ●河川維持流量について
 去年から、ダム管理規定が変わり、河川維持流量として24時間、年間を通じて0.17m3/秒を直下の川へ放流するようになった(以前は0m3/秒、ダム直下は無水区間であった)。ダム堤体中央下部に位置する予備ゲートより放流している。ハウエルバンガーバルブ(径800mm)は開放しその前にバルブを取り付け調整し、0.17m3/秒を放流している。

 ●今日の状況
 ダム貯水位333.19m前後
 流入量0.48m3/秒、朝方は、1〜2m3/秒前後、流入量はダム湖の水位変動から計算しているので0m3/秒に近い数値は誤差がありそうである。
 1時から利水取水、表示は3.19m3/秒
 維持用水0.17とあわせ、3.36m/秒、この時、流入量は3m3/秒程度あり、流量がバランス。
 ●操作盤の構成について
 @ 水位(ダム湖)、貯水量(利水量、空き容量)、流量(ダム湖流入量、利水量、ダム放流量など)などの盤
 A ゲート操作盤
 B 放流警報盤
 C操作記録装置(雨量、操作の記録、1時間ごとの記録用紙がプリントアウト)

 ●流木について
 網場(アバ、浮きをロープでつないで、ダム堰堤の前面に配置してあり、流木を止めるもの)で止めてボートで集めて、クレーン車で引き上げている。年1回、トラックで10台弱程度で少ない。去年の豪雨による流木は何年もかかって出てくると考えられ、今のところ出てきていない。

 ●堆砂について
 年1回、調査している。超音波計測計で深さを測ることができるので、2〜3日ですむ。堆砂は水面に入るところで堆積する、つまり、ダム湖の上流付近で堆砂するが、ダム湖の水位が下がると堆砂も徐々に流れてきて、ダム堆砂容量の部分に集まってくる。

●水質調査について
 市の水道のための調査の他に、県はダム湖の管理のために義務づけられている水質調査を年5回実施している。
管理体制について

 ●予備ゲートの目的
 年1回、利水取水口を維持点検する際に水を流すことができなくなるので、上水分はこの予備ゲートから放流している。

 平成17年6月23日 中 登史紀


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通行止めの看板

上寺津ダム付近の通行止めゲート

崩れた後を残す沢、この手前のコンクリート壁が復旧ため築造された。

路肩の復旧工事。

上寺津ダム

途中の流況。

犀川ダムの遠景。中央下部から河川維持用水0.17m3/秒を放流。

ダム堰堤前面。

真ん中に水位標識、手前にそのテレビカメラ。

左岸から、中央に利水の取水口が見える。

左岸から管理棟を望む。

管理棟操作室からダム湖を望む。手前が網場(アバ)。


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