上水道のページ ■辰巳ダム日誌
                          辰巳ダム日誌(2005年6月24日(金))

犀川ダム利水取水に関する運用管理についての聞き取り調査
 金沢市企業局発電管理センターにて、ダムの利水管理について、西所長他係員1名より、話をうかがった。
 金沢市企業局発電管理センター(三口新町3-11-18、電話223-3223)
 (発電施設計画建設当初、県外から技術者を要請した時代に宿舎として使用していたこところ、5発電施設の管理のために便利な地理的位置でもある)
 



 所長の説明の要約 

●犀川ダムからの直接放流している河川維持用水0.17m3/秒について
 7,8年前の水利権の更新の際に、県から依頼があって、無水区間(ダムから下流)に流し始めた。犀川ダム地点のすぐ下流に「大日尾(オオビヨ)」、「小日尾(コビヨ)」という沢があり、この沢水は集めてパイプで犀川ダム湖へ流していた。これを小日尾沢から0.17m3/秒だけ放流して犀川本川へ流していた。この水量の根拠は、国土交通省と経済産業省とが協議して決めた覚え書きに基づいている。内容は、発電ダムで河川維持用水を0.3m3/秒/100km2を放流するというものである。犀川ダムの流域面積57.8km2に0.3m3/秒/100km2を乗じて計算した数値である(注:この覚え書きについて情報公開請求)。約2km下流の新寺津発電所の水の取り入れ口(堰は去年の台風で土砂に埋まっている。ゲートは機能している。)があるが、この地点でもゲートで調整し、0.17m3/秒を放流している。その地点から約2km下流の上寺津ダム地点からは、0.21m3/秒(上寺津ダム流域面積に0.3m3/km2を乗じて計算)を放流している。
 小日尾沢と犀川との合流点から犀川ダムまでまだ200m程度、無水区間があった。これを解決するため、去年から県はダムの予備放流ゲートを改造して、0.17m3/秒の放流を始めた。金沢市はもとどおり、大日尾、小日尾の沢水はパイプラインでダム湖へ流している。工業用水分の0.46m3/秒とは関係ない。

●発電管理センターの役割
 5カ所の発電所を統合的に管理している。
 犀川本川には、上流から、3発電所がある。
 @新寺津発電所(小規模、取り入れ口は犀川ダム下流約2km地点、犀川ダムとの間の沢水を小さな堰でせき止めて取水し、パイプラインで約2km下流の上寺津ダムの横の小さな発電所に送り発電している。上寺津ダムへ放流。昭和56年運転開始。)
 A上寺津発電所(犀川ダムの右岸に取水口があり、ここから約4km下流の上寺津ダム地点の発電所まで水を送り、発電している。上寺津ダムへ放流。使用水量12m3/秒、有効落差161m、最大出力16,200kw、年間供給電力量は69百万kWh(日量約19万kWh、時間当たり約8,000kWの発電。昭和41年、犀川ダムと同時に運転開始。)
 B新辰巳発電所(上寺津ダムから取水し、辰巳用水取水口の下流数百mのところにある発電所まで約5km送水し、発電している。使用水量10m3/秒、有効落差73m、最大出力6,000kw。昭和46年運転開始。)
 内川には2発電所がある。
 @新内川第二発電所(内川ダムの上流の沢水で発電し、ダム湖へ放流、最大出力3,000kw、昭和63年運転開始。)
 A新内川発電所(ダム湖の取水口から下流約2km下流の地点で発電し、新内川ダムへ放流。使用水量8m3/秒、有効落差113m、最大出力7,400kW。昭和59年運転開始。)

 5箇所の発電所は無人である。原則、月2回、現場に出向いて点検維持管理をしている。常時の取水口は開けっ放し。所長を入れて12名の職員。夜間は交代で1名宿直。

●犀川ダム利水取水はルールカーブで運用
 ダム操作規則で洪水期間の制限水位、非洪水期間の常時満水位が決められている。
 洪水期間(毎年6月15日〜9月30日)夏期制限水位340m
 非洪水期間(毎年10月1日〜翌年6月14日)常時満水位346.5m
 である。この水位以上では、治水者(石川県、つまり犀川ダム管理者)が放水量を調節し、ダム水位を調節する。この水位以下では、利水者(金沢市企業局)の裁量で取水量を決め、取水している。
 ただし、毎年の各時期において確保水位(利水のためにここまでは貯めておいた方がいいという水位、実際は天候に左右される)が決められており、これを下回って取水はできない。
 これらの条件に、雪解け水の対策等を含め、運用のアレンジを加え、年間目標ダム水位図ともいうべき、「ルールカーブ」図を策定し、これにもとづいて取水を行っている。取水量はすべて発電に使用するので「発電ルールカーブ」と呼ばれている。
 スタートの1月は常時満水位の346.5m、3月31日までに雪解け水を受け入れるために、328.0mまで水位を低下させる。状況によっては、2月末までに下げることもある。取水口からは最大取水量12.0m3/秒を取水するが、雪解け水の流入に伴い、ダム湖の水位は上昇し、4月末ころには常時満水位の346.5mに達する。これを超える場合は、治水サイドで主ゲートから放流することになる。実際には雨の心配もあるので、常時満水位の1m下くらいのところまでに抑えている。6月に入ると徐々に水位を下げ、洪水期間の6月15日には、夏期制限水位340.0mまで水位を低下させる。その後はダム操作規則で決められた確保水位を守りながら、運用する。洪水期間が終わり、10月に入ると徐々に常時満水位まで水位をあげる。水位が高い方が有効落差が大きくなり、比例して発電量も多くなる。

●犀川ダム利水取水量の決め方
 かんがい用水量(犀川大橋地点で必要な量が決められている。2.04〜8.40m3/秒、時期によって異なる)、上水道用水量1.27m3/秒、工業用水量0.46m3/秒が水利権量として決められており、流域からの沢水等の水量を含め、犀川大橋地点でトータル、この水量になるように流さなくてはならない。
 犀川ダム(流域57.8km2)の流入量を計測しているので、それ以外の残留域からも同じような水量が犀川本川に流れ込むと仮定して計算して残流域流量を計算する。上記の水利権量から、この残流域流量を引いた流量が犀川ダム利水取水口からの取水量となる。少なくともこの水量を取水する。
 水が豊富な場合は、最大の12m3/秒を取水する。
 ちなみに、6月2日(木)は3.19m3/秒を23時間取水した。午後12時から13時まで1時間休止したのは、雨で上寺津ダムに水が入ってきたので、節約のため、1時間休止したものである。
 (注:正確に計算した根拠文書は情報公開請求をした。)

●渇水のため、ダム取水を制限しようとする判断はいつ、誰がするのか?
 特に決まりはない。天候、ダム貯水量、ダム湖への流入量などを総合的に判断し、県と相談して決める。この10年間で2回くらい。相談しただけで、取水制限まで至ったことはない。平成6年の渇水のときは、その時は担当していなかったのでわからない。

 平成17年6月24日 中 登史紀


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