(平成16年10月15日石川県知事申入書に添付した資料)
犀川および浅野川の治水の安全性比較について

(平成16年10月15日石川県知事申入書に添付した資料)
犀川および浅野川の治水の安全性比較について

 犀川の治水に関して、昭和36年、昭和46年、平成2年、そして今回の基本方針(平成16年)と都合4回、全体計画を見直している。犀川大橋地点の基本高水流量は、順に930m3/秒、1600m3/秒、1920m3/秒、1750m3/秒と推移した。

 一方、浅野川の治水に関しても、犀川と歩調を合わせるように、昭和30年、昭和53年、平成3年に全体計画を見直し、さらに、平成16年の犀川の基本方針にあわせて検討が行われている。天神橋地点の基本高水流量は順に460m3/秒、710m3/秒、710m3/秒、710m3/秒としている。

 犀川と浅野川の見直しに関して特徴的であるのは、犀川の辰巳ダム計画以降、犀川の基本高水は変化しているにもかかわらず、浅野川の基本高水は据え置かれたままであることである。犀川・浅野川の計画洪水量(犀川大橋地点、天神橋地点の基本高水流量)の推移を一覧表にするとつぎの表のようになる。

(表) 犀川・浅野川の計画洪水量の推移

(犀川大橋地点、天神橋地点の基本高水流量の推移)

 

 

第1次

第2次

第3次

今回

 

(犀川ダム以前)

(犀川ダム)

(内川ダム)

(辰巳ダム)

(新辰巳ダム)

 

犀川

 

昭和36

昭和46

平成2

平成16

 

1961

1971

1990

2004

615

930

1,600

1,920

1,750

 

浅野川

 

昭和30

昭和53

平成3

平成16

 

1955

1978

1991

2004

460

710

710

710




 これを図に表したものが、次ページの(図)浅野川・犀川の計画洪水量の推移
である。

 辰巳ダム以前は、犀川も浅野川も歩調を合わせて見直してきている。現在、浅野川はほぼ計画の整備水準を達成し、犀川に関しては犀川大橋上流部区間において一部を除いて計画の整備水準となっている。

 辰巳ダム以降は犀川だけの計画洪水量を引き上げている。この洪水量(基本高水流量)については、最終の決定過程に統計手法の誤りがあり、1/100確率値になっておらず、過大な数値となっている(筆者は再三にわたり、指摘している)。

 現在の両河川の治水安全性を評価するために、基本高水流量に対する過去の洪水量割合を計算する。両河川で20世紀の100年間に発生した上位4ケースの洪水を選択し、両河川の洪水量割合を(図)犀川と浅野川の治水安全性比較 に示す。

 犀川の場合、基本高水流量1600m3/秒に対して過去の最大規模の洪水量は44%〜58%に相当し、約半分程度である。治水安全性が高いことを示している。これに対して、浅野川は、基本高水流量710m3/秒に対して過去の最大規模の洪水量は、52%〜81%であり、こちらも比較的ゆとりがあることを示している。

 図で明らかなように、犀川の場合、浅野川に比較して著しく治水上の安全性を有している。1/100確率の洪水から、金沢市民の生命と財産を守るために、辰巳ダムがなければならないという県の主張は全く説得力がない。

 犀川と浅野川の比較において説得力がない上に、石川県が主張している基本高水流量1750m3/秒はよくある小さな雨である平成7年8月30日降雨を根拠にしている。この小さな雨を2倍に拡大して大きな出水があると説明しているが、平成7年8月30日に雨があったからといって、将来、この雨を2.0倍にした雨が降るという科学的因果関係はない。「辰巳ダム」の根拠は平成7年8月30日の雨であり、この雨ではなく第2位の雨を選択すれば、(図)辰巳ダムの科学的根拠は無し に示すように基本高水は大幅に小さくなる。
 箇条書きにして整理するとつぎのようになる。
@ 辰巳ダムの根拠としているのは、平成7年8月30日の雨である。
A 30,31日の2日雨量139mm(金沢気象台)、126mm(医王山観測所)、最大時間雨量29mm(金沢気象台)、26mm(医王山観測所)と小さい雨である。
B この時の出水(ダム調整無し)は、204m3/s(下菊橋地点)、86m3/s(天神橋地点)と小さい。
C 洪水被害はほとんどない。
D 県は、この雨を2.0倍に拡大した雨を想定して、1741m3/秒を導いている。
E 平成7年8月30日の雨が降ったからと言って2倍に拡大した雨が降るという、科学的因果関係はない。
F 辰巳ダムは、この薄弱な根拠に基づいたものである、
G 仮に、第二位の雨を選択すれば、429m3/sも減少し、辰巳ダムは不要の上に、288m3/sの余裕も生じる。


犀川の河川整備計画の推移
 @昭和36年、犀川総合開発事業全体計画(犀川ダム)
 A昭和46年、犀川総合開発補助事業全体計画(内川ダム・浅野川導水路)
B平成2年、工事実施基本計画
 C平成16年、犀川水系河川整備基本方針決定

@について
・既往洪水対応の計画。
・基準となった洪水、昭和8年7月26日、日雨量154.6mm、計画総雨量184.2mm。
・犀川大橋地点の基本高水流量930m3/秒。
・犀川大橋地点の計画高水流量615m3/秒(犀川ダムよる調整315m3/秒=930-615)。
・犀川ダム(375m3/秒→95m3/秒へ280m3/秒調整)。
・事業費53.1億円(共同19.3億円、専用33.8億円)
Aについて
・流域平均2日雨量285mm
・1/100確率対応。
・建設に要する概算額(ダム約31億円、導水路約10億円)
・犀川大橋地点の基本高水流量1600m3/秒。
・内川ダム(440m3/秒→130m3/秒へ310m3/秒調整)。
・犀川ダム(570m3/秒→220m3/秒へ350m3/秒調整)。
・浅野川導水路250m3/秒。
・浅野川天神橋地点の基本高水流量710m3/秒。
・犀川大橋地点の計画高水流量1230m3/秒(主として犀川ダムよる調整370m3/秒=1600-1230)。
・事業費152億円(ダム53.5億円、上水道専用98.5億円)
Bについて
・犀川大橋地点の基本高水流量1920m3/秒。
・内川ダム(710m3/秒→170m3/秒へ540m3/秒調整)。
・犀川ダム(950m3/秒→480m3/秒へ470m3/秒調整)。
・辰巳ダム(800m3/秒→470m3/秒へ330m3/秒調整)。
・浅野川導水路250m3/秒。
・犀川大橋地点の計画高水流量1230m3/秒(主として犀川、辰巳ダムよる調整690m3/秒=1920-1230)。
・下流の支川流量の見直し。
Cについて
・平成16年、犀川水系河川整備基本方針について国が了承(基本高水1750m3/秒)


浅野川の河川整備計画の推移
 @昭和30年度浅野川河川改修工事(中小)全体計画
 A昭和53年度浅野川河道整備全体計画検討
 B平成3年度浅野川河川改修工事(中小)変更全体計画検討
 C大野川水系河川整備基本方針を検討中

@について
・昭和27,28年の洪水被害を契機に計画。
・各洪水の雨量は、昭和27年6月30日日雨量154.3mm、昭和28年8月24日1時間雨量78.1mm、昭和28年9月25日日雨量178.5mm。
・計画洪水量460m3/秒、河北潟から銚子口橋までの16.26km。
・改良工事費総額11.5億円。
・認可を受けて実施区間は、河北潟から鈴見橋までの9.7km。
Aについて
・昭和46年犀川総合開発補助事業全体計画(内川ダム・浅野川導水路)による浅野川河道整備計画。
・1/100確率対応。
・計画2日雨量250mm、ピーク時間雨量59.3mm、基本高水流量(天神橋地点)710m3/秒(改修流量460m3/秒、田上地点改修流量365m3/秒、田上地点放水路250m3/秒)。
Bについて
・中小河川改修事業の延伸
・鈴見橋から上流3.9kmを延伸して、総延長13.6km。
・基本高水流量は変更無し。
Cについて
・平成13年6月から平成16年5月にかけて11回、国との協議を行っている。平成15年11月18日付け検討資料においても基本高水は従来どおり。

添付データ(20世紀の過去の出水のデータ)
 (表)犀川大橋地点のピーク流量(洪水量)
 (表)浅野川天神橋地点のピーク流量(洪水量)


 

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