犀川の基本高水に関する公開質問状
 犀川大橋基準点の基本高水1750m3/秒は根拠無く、過大で、過去100年間の最大の出水約800m3/秒前後に対して、異常に大きい数値です。石川県が作成し、犀川水系河川整備検討委員会河川計画専門部会で議論されましたが、筆者が指摘した肝腎な点についてはほとんど議論されず、「計画論として妥当」という結論で決着してしまいました。解析の問題点について、石川県河川課ならびに5名の専門委員に対しても同様の公開質問状を送ります。
 ここで指摘している点は、選択した基本高水のピーク流量群から統計手法で決めるのではなく、恣意的に最大値を選択するという方法です。この方法では、発生確率がわからなくなります。辰巳ダムの例では、1/100確率ではなく、1/2400確率(
仮定条件を入れた数値)になるのではと指摘しています。水量にして、約1.7倍、約700m3/秒も多く、嵩上げされていました。「有史以来発生したことのない」水量と指摘しています。
 この解析手法については、一辰巳ダムだけではなく、ほとんど全国的に行われているようです。全国で過大な基本高水を決めるために使われている手法であり、無用の治水ダムの根拠となっているものです。
 良識ある学識経験者もわかっていながら、指摘できない、指摘すればほとんどの治水ダムを否定することになるからです。
 ほとんどの治水ダムはこの手法で嵩上げされて過大な洪水量を前提にダム計画がなされています。言い換えると、ほとんどのダムは根拠のないでっち上げといっても過言ではないのです。
 今回、河川工学の権威を集めた委員会での議論であり、軽々に問題点を指摘して、返り討ちをあびても大変だという考えから、約1年ほど、じっくりと
熟考していた問題です。そうそうたる権威に対して、どう立ち向かえるか、あまり、成算はありませんが、とにかく、無駄なダム事業を退治するために立ち上がります。(-_-;)
 といっても軽く、無視されるのがオチでしょうが(^_^;)

平成16年6月25日
石川県河川課長 殿

犀川の基本高水に関する公開質問状

犀川の河川整備を考える会
 代表 中 登史紀(技術士57歳)
(住所)金沢市小立野3-12-28

犀川水系の河川整備に関する方針の策定等にご尽力されていることに敬意を表します。
犀川の基本高水の考え方について、犀川水系河川整備検討委員会河川計画専門部会の「報告」(平成15年3月28日)、石川県のホームページ上で確認いたしました(平成16年になり筆者確認)。しかし、筆者らの疑問が解けませんので、専門委員の方々ならびに石川県河川課長に対して「犀川の基本高水に関する公開質問状」を提出いたします。
加えて、最後に筆者の判断を示します。
回答は7月末を目途にいただければ幸いです。なお、いただけない場合は、最後に示した筆者の意見を了承されたものと判断させていただきます。

なお、犀川の基本高水に関して専門家からなる河川計画専門部会の結論は、第3回犀川水系河川整備検討委員会(平成15年3月28日)の資料−2「犀川水系河川整備検討委員会河川計画専門部会報告」に記述されており、末尾に添付します。(以下、「報告」と呼ぶ。)
部会報告を受けて最終的な石川県の考え方がホームページ上で示されており(犀川水系河川整備基本方針に関するQ&A Q15:治水計画の中ではカバー率が100%となっていますが、これは過大な計画ではありませんか?)、末尾に添付します。(以下、「ホームページ」と呼ぶ。)

公開質問はつぎの3点です。
公開質問1 基本高水1750m3/秒の根拠となった平成7年8月30日型降雨の大きさ(2日雨量314mm)は確かに1/100確率ですが、この降雨波形が発生する確率は?
公開質問2 基本高水1750m3/秒は、実際の洪水よりもかなり大きいと見込まれる最大流量推定値1200m3/秒と比較してもさらに大きな差がありますが、「幸運にも過去に大きな洪水がなかった」と判断した科学的理由は?
公開質問3 基本高水1750m3/秒を決めるための最大重要要素の飽和雨量を平均値とする科学的根拠は?

公開質問1 基本高水1750m3/秒の根拠となった平成7年8月30日型降雨の大きさ(2日雨量314mm)は確かに1/100確率ですが、この降雨波形が発生する確率は?

基本高水について「報告」では、
・「ピーク流量が最大となるもの(平成7年8月30日型)を「基本高水」と考える方針」
・「カバーすべきところは「棄却した残りの降雨の最大のもの」で、これを採用するのは当然と判断」
とあり、「ホームページ」では、
・「ピーク流量群の中で、最も大きい1,750m3/sを基本高水のピーク流量として決定し計画を立てています。」
「いわゆる『カバー率』を用いて計画を決定したのではありません。」
とあり、カバー率を用いて決めたのではなく(筆者注:統計的に決めたのではないと同義)、異常値を棄却したピーク流量群(24ハイドログラフ)の最大である平成7年8月30日型を採用して基本高水ピーク流量は1750m3/秒としています。

この解析では、計画2日雨量314mmの1/100確率降雨が発生したときに、平成7年8月30日型降雨波形になると決めていますが、平成7年8月30日に2日雨量157mm降雨があったので、将来、計画2日雨量314mm降雨がこの降雨波形で発生するという科学的因果関係はありません。

平成7年8月30日降雨を反映させて将来の洪水を想定すると出水は1750m3/秒であるとはいえますが、将来降るであろう1/100確率の降雨は必ず、平成7年8月30日型になるとはいえません。ここでは24個のうちの1つを選択していますので、平成7年8月30日型になる確率は単純に考えて24分の1です。2日雨量314mmの降雨があり、平成7年8月30日型降雨波形になる確率は、1/2400となります。

計画2日降雨が発生し、平成7年8月30日型降雨波形となる、正確な確率はどれだけですか?

追記: 1/100確率の降雨が24波形あると仮定します。仮に24波形が全体を表し、それぞれの発生確率が同じと仮定すれば、一つの発生確率は1/100×1/24=1/2400となります。筆者が「有史以来発生したことがない洪水である」と主張する由縁です。実際は地域特性により発生しやすい降雨波形があるので個々の発生確率は違います。

公開質問2 基本高水1750m3/秒は、実際の洪水よりもかなり大きいと見込まれる最大流量推定値1200m3/秒と比較してもさらに大きな差がありますが、「幸運にも過去に大きな洪水がなかった」と判断した科学的理由は?

基本高水と既往の洪水の比較に関して「報告」では、
・「この流域では幸いなことにこれまで大洪水が出る降り方をしていないため」
とあり、「この基本高水のピーク流量1750m3/秒の妥当性を検証するために、既往洪水(昭和36年の第二室戸台風など)の推定値1200m3/秒と比較した結果、差はあるが幸運にも過去に大きな洪水がなかったと判断した」ということになります。

まず、比較するときは同条件で判断するべきです。推定値1200m3/秒は飽和雨量(Rsa)を0mmと仮定した数値です。これに対応する基本高水ピーク流量に相当する流量は約2100m3/秒です。基本高水ピーク流量1750m3/秒と比較するのであれば、実際の出水量800m3/秒前後の水量と比較するべきです。

飽和雨量(Rsa

0mm

基本高水Rsa=100mm

基本高水ピーク流量

2100m3/

1750m3/

第二室戸台風(S36

1211m3/

流量記録無し

700±50m3/

台風10号(H10

1192m3/

流量観測記録

842m3/

台風20号(S47

1058m3/

流量観測記録

389m3/

注:第二室戸台風時の出水推定値は、「犀川中小河川改修事業全体計画書(昭和47年度)」の添付文書「犀川河川改修計画報告書(計画高水流量編)」p.22による。飽和雨量0mmの基本高水ピーク流量≒2100m3/秒は犀川水系河川整備検討委員会検討資料からの類推値。
したがって、実際には基本高水1750m3/秒と既往洪水との差は2倍以上あります。この相違についてどのように判断されるのですか。

実際には基本高水1750m3/秒と既往洪水は約2倍の相違があります。この相違についてどのように判断されるのですか。

つぎに、既往洪水を最大流量推定値1200m3/秒として比較した場合です。
 基本高水1750m3/秒を検証するために既往洪水1200m3/秒と比較し、著しい差があり、この結果から判断は二つに分かれます。
 @ 1750が妥当である。(1200が過小)
A 1750が過大である。(1200妥当)
「この流域では幸いなことにこれまで大洪水が出る降り方をしていない」として@を選択していますが、1750m/秒が妥当で1200m3/秒が過小、「大洪水が出る降り方をしていない」と判断した科学的理由は何ですか? 
もともと、1750m3/秒が妥当かどうか、既往洪水1200m3/秒と比較したわけで、既往洪水と違いが大きければ、1750m3/秒を見直すのが科学的な判断です。

「この地域では幸いなことにこれまで、、、、」と主張していますが、第二室戸台風は20世紀の100年間で最大級の豪雨です。犀川流域の南側に隣接し、地形的、気象的に類似した手取川の解析ではつぎのとおりです。(手取川のデータは、社会資本整備審議会河川分科会第六回河川整備基本方針検討小委員会 (平成15年7月18日)で行われた議論によるものです。)

[手取川の基本高水]    [既往洪水の推定値]
      6,000m3/秒  < 7,900 m3/秒 第二室戸台風(S36.9.15)
(注:既往洪水は流域全体が湿潤(飽和雨量0mm)と仮定して算出した推定値)
です。これに対して、飽和雨量0mmの同条件で行った犀川の解析では逆に、基本高水が著しく大きくなっています。
[犀川の基本高水]    [既往洪水の推定値]
     1,750m3/秒 > 1,211 m3/秒 第二室戸台風(S36.9.15)
(注:既往洪水は流域全体が湿潤(飽和雨量0mm)と仮定して算出した推定値)
手取川の例を犀川のケースに当てはめると、第二室戸台風の既往洪水の最大流量推定値1,211m3/秒に対して、基本高水は920m3/秒に対応します(1,211×(6,000/7,900)=1,211×0.76=920)。
[犀川の基本高水]    [既往洪水の推定値]
      920m3/秒 ← 1,211 m3/秒 第二室戸台風(S36.9.15)
 この比較からも、1,750m3/秒が異常に大きな数値であることがわかります。

なお、「報告」では「ちなみに、浅野川流域では、計画値とこの推定法による「最大流量」はほぼ一致」とこの解析法が妥当だと記述しています。この根拠である「浅野川放水路から犀川への放流量検討資料」(平成15年3月5日、石川県)の記述には、以下の点から、妥当性に問題があります。
@ 昭和43年から平成12年までのデータを使用しているが、昭和42年以前のデータが解析で示されていない。一方の犀川の解析では、24の計画ハイドログラフ群のピーク流量上位10位中の半数にあたる5ケースが昭和42年以前(昭和34年〜昭和39年)のものである。昭和31年以降の時間雨量データがあるにもかかわらず、排除した理由が示されていない。
A 基本高水638m3/秒の根拠となった平成7年8月30日型降雨のケースでは、引き伸ばし後の短時間雨量は、大野川機具橋4時間115.1mm、浅野川放水路2時間80.7mmである。それぞれの棄却基準170mm、93mmとの差が大きいため、流量が小さく計算されているに過ぎない。この差を埋める降雨パターンがあれば、基本高水流量は大きくなる。
B S.49.09.07降雨では1/100確率2日降雨260mmとほぼ同じ251.6mmの降水があった。その時の浅野川放水路地点のピーク流量はわずか63m3/秒にしかすぎない。基本高水ピーク流量の1/10である。「計画値とこの推計法が一致していない」。

公開質問3 基本高水1750m3/秒を決めるための最大重要要素の飽和雨量を平均値とする科学的根拠は?

地表の湿潤状態を表す飽和雨量(Rsa)について「報告」では、
・「Rsa値の算術平均(100mm)」
とし、基本高水ピーク流量を決める際に最も重要な要素であり、著しい影響をもたらす飽和雨量は犀川大橋基準点で平均値100mmとしています。
 基本高水1750m3/秒の根拠となった平成7年8月30日型降雨のケースで、飽和雨量30〜100〜190mmに対して犀川大橋基準点のピーク流量はそれぞれ2043〜1741〜1193m3/秒で極端な差があります。石川県の解析では、わずか5ケースの平均をとって100mmと決め、基本高水のピーク流量1741m3/秒を決定しています。
仮に、飽和雨量を安全側に考えて30mmとすれば、ピーク流量は2043m3/秒となります。「ピーク群の最大をとる」という考えにもとづけば、ピーク流量は2043m3/秒を選択しなければならないはずです。平均値を採用するということは、安全側でもなく、中途半端な数値です。
 また、平均値とすれば、統計的にはすべてをカバーしておらず、おおむね1/2となります。統計的には、1/200確率(1/100×1/2=1/200)となり、1/100確率値を求めるとした最初の条件と矛盾します。
 このような矛盾が発生するのは、もともと飽和雨量は決めるものではなく、それぞれの降雨の属性として与えられたものであり、実際の降雨の飽和雨量値を採用して解析すべきものであることを示しています。
この解析で飽和雨量を平均値として決め、これを妥当と考えた根拠は何ですか?

●筆者の意見
解析法である「引き伸ばし法」も便宜的な方法であることは、つぎの2点で説明できます。
@過去に発生した降雨波形を引き伸ばして、1/100確率の降雨波形を求めますが、この降雨波形が将来、発生するという科学的因果関係はありません。
A解析の前提となる、データの取り扱いに解析上の無理があります。
計画降雨の継続時間は、一連の降雨全体を捉えがたいというデータ上の制約で、48時間(2日雨量)です。当地の実際の降雨特性を見ると、第二室戸台風や平成10年台風7号に代表される台風豪雨は短時間(12〜24時間程度)で終息する傾向にあります。総雨量が12時間で降る場合と48時間で降る場合とでは密度が4倍も異なります。150mm程度の雨を計画2日雨量314mmへ2倍に引き伸ばせば、12時間程度の短期集中型はほとんど異常降雨として除外されてしまいます。現に、20世紀の最大級の豪雨であった昭和36年第二室戸台風、平成10年台風7号ならびに昭和47年台風20号(県作成の「近年の最大流量推定値表」に掲載された3ケースすべて)はすべて異常降雨として棄却されています。
データ取り扱い上、2日雨量を基準にし、引き伸ばし倍率を決め、特徴の著しくことなるデータを処理した結果、発生した不都合です。異常降雨という結果が異常なのではなく、逆に、仮定した条件が異常だと言うこともできます。

「引き伸ばし法」は便宜的な方法であり、この解析の途中の結果を、一つ一つが起きる、起きないと確認する意義は無いと考えられます。石川県は33降雨波形から異常値を棄却して24降雨波形を選択していますが、上記の理由から意味がありません。2日雨量を基準にしたのであれば、33降雨波形をもとに統計解析するべきです。33降雨波形を統計処理して求めた答えが合理的な答えです。33降雨波形の頻度分布曲線から求めた中央値は、1043m3/秒となり、これが求める基本高水ピーク流量です。

ただし、これは飽和雨量100mmと設定して計算した数値です。飽和雨量は各降雨の属性とし、選ばれた33降雨の持つ固有の飽和雨量を採用するべきで、実際の飽和雨量を入れて計算すればもう少し小さくなるはずです。既往洪水800m3/秒前後とも付合します。
以上

添付資料−1 犀川水系河川整備検討委員会河川計画専門部会報告
第3回犀川水系河川整備検討委員会(平成15年3月28日)の資料−2

河川計画専門部会 部会長 辻本哲郎
「河川計画専門部会」では「犀川水系河川整備検討委員会」の要請を受けて、平成15年1月25日,3月5日の2回にわたり部会を開催し検討を行った。以下に検討項目と結果を報告する。
なお,専門部会委員構成は下記の通り.
部会長:名古屋大学大学院工学研究科教授 辻本哲郎
金沢工業大学土木工学科教授 川村國夫
岐阜大学流域圏科学研究センター教授 藤田裕一郎
京都大学大学院工学研究科助教授 中北 英一
福井工業大学建設工学科教授 宇治橋康行

検討項目1:基本高水
@ 計画規模1/100を了承、なお、治水基準点は犀川大橋。
A 2日間累積雨量の流域平均値について1/100相当を計画の対象降雨とし、流域に複数の観測点のある昭和31年から平成13年の雨量データをもとに統計解析、最も適切と判断されたグンベル分布へのあてはめによって、314mmを計画のための2日間累積雨量とすることを了承。計画規模1/100というのは、2日雨量で1/100と想定される降雨によって出現する洪水を対象として治水計画を考えるものであることを確認。
B 既往の「雨」の時間分布(ハイエト)から、引き伸ばし率が2倍程度をこえないものを33降雨選び出し、これらを2日雨量が314mmになるように引き伸ばし、計画の対象降雨とする。引き伸ばしの限度を了解。
C 上記33降雨から、地域分布や時間分布が異常なものを棄却し、24波形を選び出した。棄却水準は「偏差」の考え方を用いた推計学に基づく妥当なものと判断した。
D 流出解析に、「貯留関数法」を用い、そのパラメータを同定(基本の2つのパラメータに標準値を適用)し、流域の湿潤状態にかかわるRsa値(飽和雨量強度)の調整(30mmから190mm)で、基準点での洪水流量の時間変化(ハイドログラフ)が再現計算できることを確認することで、流出解析手法の妥当性(検証)を了解。
E 上記検証に用いたRsa値の算術平均(100mm)を計画に用い、棄却分を除いた対象降雨についての流出解析結果が示され、1/100の計画対象降雨に対するこの流域の流出流量性状(547〜1741m3/秒まで分布)を確認するとともに、ピーク流量が最大となるもの(平成7年8月30日型)を「基本高水」と考える方針を「計画論として妥当」と了承。基本高水ピーク流量として、値を丸めた1750m3/秒を了承。

第1回部会で検討を第2回に課題として残し、第2回に了解したもの。
@ 観測点としては不足するが今回計画に使った期間より以前(昭和30年以前、とくに戦後すぐの台風来襲頻度の高かった時期)の降雨についての検討を要請。検討結果によれば、この流域では必ずしもその時期の異常さは認められず、それゆえ影響もない。
A Rsaが流域の湿潤状態と相関しているかどうかを、先行降雨や降雨波形との関連で検討することを要請。その結果、明確なパターンは見出せなかったが、おおむねの傾向は読み取れる。
B 基本高水について、異なる考え方(流量確率ベースを含めて)での検討値を示すことを要請。犀川では流量記録が乏しく、その統計処理あるいは推計が難しく、十分な期間での値としての既往最大値も存在しない。また、便宜的な流出解析法である「合理式」との比較は、一部の小流域でしかできない。既往の降雨の時系列(ハイエトグラフ)からRsa=0(流域が完全に湿潤し降雨の浸透が期待できない状況)として「最大流量」を推定した結果は約1200m3/秒(昭和36年第二室戸台風)。この値は、上記の「基本高水」(案)のピーク流量とは差があるが、これは「この流域では幸いなことにこれまで大洪水が出る降り方をしていないため」と判断した(ちなみに、浅野川流域では、計画値とこの推定法による「最大流量」はほぼ一致)。

なお、基本高水の評価について、傍聴者から「意見書」が提出された。その主たる論点は「対象降雨から流出解析して得られた流量について最大のものを採用する(カバー率100%)のは「河川砂防技術基準(案)」の記載からみてもおかしい」とするものであったが、すでに棄却によって異常値を除いているので、カバーすべきところは「棄却した残りの降雨の最大のもの」で、これを採用するのは当然と判断した。


添付資料−2 石川県のホームページ上での回答
犀川水系河川整備基本方針に関するQ&A
http://www.pref.ishikawa.jp/kasen/saigawa/QA/Q15.htm

Q15:治水計画の中ではカバー率が100%となっていますが、これは過大な計画ではありませんか?
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A15:犀川の治水計画では実際の降雨パターンの中から
引き延ばし率2倍程度以下となる2日雨量150mm以上の実績降雨パターンとして33の降雨パターンを選定し計画降雨量314mmまで引き延ばす。
これらの33の降雨パターンにおいて、ピーク流量に大きな影響を及ぼす短時間の降雨量や、特定の地域の雨量が計画規模のそれと比べて異常に大きいと判断される9降雨を棄却。
 犀川では計画の対象とする降雨パターンを実際の現象として起こりえると考えられる24の降雨パターンに絞り、これらによるピーク流量群の中で、最も大きい1,750m3/sを基本高水のピーク流量として決定し計画を立てています。
 このように、実績降雨パターンを計画降雨パターンに引き延ばす過程において、一定の基準を設け異常と思われるパターンを棄却し計画を立てていることから、過大な計画とはなっていません。
 したがって、いわゆる『カバー率』を用いて計画を決定したのではありません。

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