宇野邦夫と辰巳ダム

(宇野邦夫石川県議が辞職)
今月7月17日、宇野邦夫石川県議が辞職を表明した。元議員秘書(公判では、事務所スタッフで秘書ではないと主張)の選挙違反事件の責任を取り、辞職することにしたようである。
元議員秘書が公選法違反(供応買収)に問われて15日に初公判があり、被告の元秘書は起訴内容を認めていた。24日に結審、31日に判決言い渡しの予定となっていた。
 地元の料亭で支持者を集めて新年会を催した際に、2000円の会費で7660円相当の食事で接待した容疑である。

(宇野邦夫とは)
 歯に衣着せぬ発言をする名物県議と言われた。森喜朗と奥田敬和は、石川県政界の保守を二分して戦いを繰り広げたが、宇野氏は奥田敬和陣営の先頭に立って戦い、最後までその立場を貫き通している。また、負け戦をひっくり返して、谷本県政の生みの親の一人ともなった。一見、野武士然とした印象があり、戦国時代であれば、それなりの活躍ができたかもしれない。

(辰巳ダムとの関係)
 この県議の地盤は、犀川の上中流の地域であり、辰巳ダム建設ともかかわりがあった。総事業費240億円にもなる、土木工事主体の事業であり、地元の土木関連事業者が大いに潤うので、地元の利益誘導に大いに汗をかいたと思われる。地元へ流れたお金は当然、政治献金などの名目で本人にも還流されたであろう。辰巳ダムからほど近い料亭で行われた新年会のおもてなしは、そのお礼であると推測できないこともない。意味の無いおもてなしはない。政治屋と地元土建業者とのなれあいがあり、その延長線上に今回の事件がある。

(行政の監視をしない議会)
 政治家が支持者への期待に応えようとするのは当然であり、ある地域を代表して選出されたのであれば、その地元への利益誘導に働くことになる。行政に働きかけて道路や橋を造らせたりすることに尽力する。しかし、これが非効率、無駄なものであれば、行政の行き過ぎに歯止めをかけるなどの行政の監視も政治家の役目であり、「行政の監視」が議会に課せられた大きな仕事であるはずである。
 ところが、ほとんどの石川県議会議員は、この「行政の監視」という意識がなく、地元利益誘導にしか関心はないようである。無いのは当然かもしれない。新年会に集まるたかりの支持者がいて、この人たちがこの県議を支えているのである。

(「カチ殺せ」発言)
 辰巳ダム裁判でこの宇野邦夫議員による事件があった。辰巳ダム訴訟を提訴した3日後の平成20年5月23日の石川県議会土木企業委員会で、訴訟原告団代表の一人である下郷稔氏について、「石川からたたき出せ」、「カチ殺せ」などと不穏当な発言をして非難した。元県職員でありながら、県の公共事業に反対の立場を取ったことが理由のようであるが、辰巳ダム建設事業が円滑に進まない(地元にお金が流れるのが滞る?)ことを懸念した理由もあるようだ。
この事件で、驚くのは、ほとんどの議員はこの過激な発言を制するのではなく、聞き流しており(ただし、共産党の一県議は事務局に発言撤回を求めている)、言いたい放題を放置していたようである。マスコミも1社が、議員の発言を批判するのではなく、翌日の新聞で議員の心情を肯定的に報道している。
 27日に至り、辰巳ダム訴訟原告団の下郷稔、碇山洋両共同代表が県議会で宇野氏に抗議をして、宇野氏は一部に過激な発言があったことを認めて議会事務局に議事録削除を求めることになった。懲罰も求めたが、委員会終了後3日以内という規定があり、できないということでこの事件はうやむやに終わってしまった。

(地元利益誘導しか頭にない政治屋)
 この事件も当議員が事業を円滑に進めて地元利益誘導しか念頭にないことを表している。県OBであろうが、なかろうが、県全体にとって不利益となると考えれば反対するのは当然であろう。県全体にとって利益となるか不利益となるかではなく、地元あるいは自身の利益か不利益かしか関心がないからこそ、その不満が不穏当な発言としてでてくるのである。無礼講の酒の席でもこのような発言は許されるものではなく、まして公式の議場での不穏当な発言を制することなく、苦笑して聞いている人たちにあきれるばかりである。

(辰巳ダムがあぶり出す)
 辰巳ダム建設の公共土木事業があぶり出した問題の輩の一人である。大きな金が動くだけに蜜にありつこうとする住民、土建業者に同類の政治屋たちがこれを支えている。問題を指摘できない、マスコミも頼りない。これらのすべてが、石川県民の鏡であり、その精神風土の水準を表している。

宇野邦夫と辰巳ダム(続)
――宇野議員の辞職と「カチ殺せ」発言の経緯――

 2015年(平成27年)7月15日、宇野邦夫石川県議陣営の選挙違反事件(公選法違反/供応買収)の初公判が開催。
【翌日のニュース】
 「秘書の立場を否定 県議選違反杉山被告公判」北陸中日新聞2015年(平成27年)7月16日(朝刊)→pdfファイル
【翌々日に辞職へ】
 「宇野氏が県議辞職へ」北国新聞2015年(平成27年)7月17日(夕刊) →pdfファイル

辰巳ダム訴訟提訴直後の事件
 2008年(平成20年)5月20日辰巳ダム事業認定取消訴訟を提訴。
 3日後の石川県議会土木企業委員会で宇野邦夫議員が、「石川からたたきだせ」、「カチ殺せ」発言。
【翌日のニュース報道】
 「辰巳ダム訴訟の波紋」北陸中日新聞2008年(平成20年)5月24日(朝刊) →pdfファイル
【4日後のニュース報道】
 「辰巳ダム訴訟で宇野県議に抗議 原告団『不適切発言』」北陸中日新聞2008年(平成20年)5月27日(夕刊)
 「宇野県議の発言に抗議」北国新聞2008年(平成20年)5月27日(夕刊)
pdfファイル
【5日後のニュース報道】
 「辰巳ダム発言で原告団長ら抗議」北陸中日新聞2008年(平成20年)5月28日(朝刊)
 「宇野県議の委員会発言に抗議」北国新聞2008年(平成20年)5月28日(朝刊)
pdfファイル


 

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