辰巳ダム裁判4周年集会報告

「辰巳ダムは必要ない――裁判でますます明確に――」
 八ッ場ダムと辰巳ダムの 
過大な想定洪水と基本高水
日時:平成24年7月8日(日)午後1時半〜4時
場所:石川県教育会館(香林坊、大和裏)
会場:第1会議室(2F)
講師:関 良基 拓殖大学政経学部准教授
   久保田康宏 辰巳ダム裁判治水担当弁護士

議事次第 
 1.原告団長挨拶 
 2.「過大な想定洪水と基本高水」 関 良基 拓殖大学政経学部准教授 →講演録音
 3.「辰巳ダムの過大な基本高水」(仮題)久保田康宏 治水担当弁護士 →講演録音
 4.質疑応答
 5.閉会の挨拶

 平成24年7月8日(日)午後13時半から,石川県教育会館で開催された。原発問題とは異なり、ダム問題は市民の関心も薄れつつある中、まずまずの参加者であった。「基本高水」はダム問題の核心でありながら、一般市民にわかりにくいのでどこでも敬遠されるとの話から始まり、八ッ場ダムを例に関先生のわかりやすい講演で盛り上がった。基本高水が大きく算定される理由の最大の原因は、「貯留関数法」であることを指摘され、この過大な基本高水(想定洪水)を修正しないと、ダムを造りつづける口実になり、税金を吸い込むブラックホールとなるという。八ッ場ダムと同様に、辰巳ダム裁判は、治水の「過大な基本高水」がメインの争点であり、辰巳ダム裁判で勝訴して基本高水の見直しに結びつけてほしいとのエールもあった。また、貯留関数法の方程式の問題について、T教授がすでに論文がまとめられており、近々月刊誌に発表されるとのこと。
「貯留関数法」に関する指摘
@方程式が物理的に誤り: 小規模降雨で求めた定数を挿入して同規模の洪水は再現できるが、大規模な洪水は再現できず、過大になる(小規模→大規模問題)。
A考え方の誤り: 飽和雨量を超えたら、降雨は100%流出するとの想定は実態にあわず、過大になる。
B最終流出率: 地質によって変化する。100%は過大。
「貯留関数法」で取り扱う降雨データに関する指摘
○引き伸ばし法の問題: 実績降雨を引き伸ばして計画降雨波形を決めるが、「引き伸ばし法」によって出現しない降雨波形ができる。この問題は引き伸ばしによる計画降雨波形全部に共通する。
「貯留関数法」の主要な定数である飽和雨量に関する指摘
○飽和雨量の問題: 森林の回復によって森林保水力が増大するので、飽和雨量は大きくなる。八ッ場では、はげ山(48mm)から115~125mmまで拡大。(森林土壌は普通130~150mmの雨量を貯め込める。)八ッ場では緑のダム効果で洪水量が20~25%低下した。一方、八ッ場ダムの効果は3%にも満たない。
 (林野村の住人である関先生は村八分覚悟?)。先生いわく、「河川村と林野村はお互いにに口を出さないという暗黙の了解があり、林野村の住人は森林の保水力(緑のダム)に口をつぐんでいたので河川村の住人はコンクリートダムを造りつづけることができた。」らしい。最後につぎのような結論があった。
 「既往最大洪水×1.1」といったゴマカシのないシンプルな計算式で治水目標を定めるのが合理的である。
 (ちなみに、辰巳ダムでは、既往最大洪水×1.9倍!)

 関先生の話に続いて、辰巳ダム裁判の治水担当の久保田康宏弁護士が、「辰巳ダムの過大な基本高水」について講演された。@過去の洪水記録との比較、Aカバー率50パーセントの数値との比較、B石川県が実施した流出計算との比較から、基本高水ピーク流量1750が妥当でないことが明らか。にもかかわらず、石川県は新基準で求められている検証を怠っており、行政裁量の逸脱濫用であり、違法である。  

 辰巳ダム裁判の治水では、貯留関数法自体の問題点についてこれまでは正面から取り上げていない。方程式に代入する降雨データが大きすぎるので算定値が過大との指摘はしていたが、方程式自体の欠陥で過大になるとの指摘はしていない。
 なお、貯留関数法自体の問題を新たに争点とするかどうかは検討中である。
 「辰巳ダムの過大な基本高水」
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  パワーポイントファイル

2012.7.15,naka

 

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