試験湛水監視ツアー(2012年3月18日)

 今日3月18日の水位は水位114m、3月9日の水位は119mだったので平均の水位低下速度は1日あたり60センチメートル弱となっています。計画では、1メートルですが、雪解け水などが大量に流入しているためと見られます。
 
 今日のツアーに集まったのは総勢4名と少人数でしたが、辰巳ダム湖の周りを周回して地すべりの痕跡や兆候がないかを監視してきました。まだ、積雪が残っているので、地すべり場所の観察できるところは、瀬領集落内の道路面などに限られます。古いひび割れは多くありますが、湛水の影響による新しいひび割れは見つかりませんでした。最も、慎重に水位を下げて斜面の地層の残留水圧が発生しないようにしているのですべるわけはないというのが、地質専門家の見立てのようです。いまのところ、異常はなさそうです(^_^;)。

 実際の洪水では、もし満水になるような場合、20時間ほどで一気に空になることになり、残留水圧で斜面が不安定になるとのことですが、試験湛水では1ヶ月以上かけてゆっくりと水位低下させるために不安定になる恐れはほとんどないようです。試験湛水は堤体の漏水検査の役に立ちますが、斜面の安定を確認するためには役に立っていません。計算上は大丈夫だと石川県は言っているだけです。巨大技術は原発でも何でもそうですが、実物大で実験できないので実際のところ起きてみなければわからないところで、ここが無視できない未解決の問題点ですが見ないふりをするといったところでしょうか。もし、問題がおきれば想定外だったということになるのでしょうか。

 幸か不幸か、奈良県の紀伊川の大滝ダムが位置する地質の構造線が走って地層がグシャグシャに破壊されているところと違っているようでもう少し安定しているようです。とはいっても、そこらここらで斜面が小規模崩壊しているのが目につきます。降雨や融雪の度に崩れる、弱い地層であることは明らかです。崩壊が積み重なり、土塊が不安定になる可能性があります。これを防ぐために斜面安定のための法枠工ブロック工が施されています。鴛原超大規模地すべり地の末端の斜面約7千平方メートル、対岸の瀬領集落の斜面約2千平方メートル、ほかに1千平方メートルをあわせて約1万平方メートルで対策がされています。これに4億6千万円の費用が費やされています。これは実質、地すべり対策ともいえるものです。

 これと連なるダム湖の斜面で崩壊する土砂はダム湖に堆積することになるのでこれを防止するために斜面安定対策工が必要になりそうです。地すべり対策あるいはダム湖土砂堆積防止対策など様々な理由付けで、一部の斜面に安定対策を施したため玉突き状につぎつぎと安定対策をせざるをえないことになりそうです。これももともとは無駄なダムを造ったためですが、さらに無駄を増殖させていくようです。監視が必要です。

平成24年3月18日 中 登史紀

【写真】

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