アメリカシロヒトリ駆除のための農薬散布に疑問を持ったいきさつ

空から農薬が降ってきた!

 平成11年6月中旬のある日、自宅で新聞や雑誌に目を通しながら、くつろいでいると拡声器がさかんに叫んでいる。「アメリカシロヒトリの駆除のため薬剤散布を行います。洗濯物を入れて、窓を閉めてください。……」。気にもとめないでいた。古い家だから、シロアリ(アメリカシロヒトリがシロアリのことだと誤解していた。)などいないと!。突然、拙宅の小さな庭にバシャバシャという音ともに薬剤が降り注いできた。何事かと飛び上がり、急いでガラス戸を閉めた。危うく、薬剤を頭からかぶるところであった。

 薬剤を散布している作業者に事情を尋ねると、アメリカシロヒトリ駆除のために農薬を散布しているという。この時期には、金沢市内一斉に薬剤を散布しているという。まさか、町の中で農地と同じように農薬を大量に散布しているとは思いもよらなかった。散布業者とともに町内会の代表が立ち会っていた。ちょっと疑いをはさむと口論になってしまった。話を聞いてみると、管理していない樹木に毛虫がたかり、葉がむしばまれるばかりか、大量の毛虫が地面を這っていたこともあって、町内会全体で駆除を実施しているとのことであった。散布業者にアメリカシロヒトリが繁殖している柿の木の状況などを説明してもらった。散布している農薬は安全で問題ないということ、詳しくは市役所の「緑と花の課」へ行けばわかるということであった。安全だからといっても農薬に違いないのであり、安全であるという疑問を拭い去ることができなかったので、少し調べてみることにした。

 インターネットで若干の情報を収集して予備知識を入れた後で、早速、つぎの日に金沢市役所「緑と花の課」を訪ねた。アメリカシロヒトリ駆除は町内会の事業で町内会が業者に委託して行っており、町内会に対して市が費用の3/4を助成している。昭和47年ころから継続しているという。薬剤の安全性については、低毒性で国の基準にも適合しており、問題ないと言うことであった。安全性についてそれ以上詳しくはわからないとのことであった。質のことの他、量の問題もあるので、金沢市全体での薬剤散布量を把握するため、情報公開請求した。6日後の6月22日、行政情報公開決定通知書を受領し、資料のコピーを受けとる。アメリカシロヒトリ駆除は県でも実施しているので、県の公園緑地課でも安全性に関して尋ねたが、市で受けた説明以上のことはわからなかった。石川県農業総合研究センター病害虫防除室の笠島氏によると、適正な使い方をしたうえで、安全が担保されるとのことであった。しかし、個人差の大きい化学物資過敏症の問題や複合毒性、環境ホルモンとしての働きなどについてはわからないとのことであった。

 安全性を考慮しての対応というわけではないようであるが、金沢市は薬剤散布に頼るばかりではなく、いろいろな試みを始めていることもわかった。額新町では、数十年にわたり害虫駆除のことに携わってこられた石崎久次氏の提案と指導で新しい取り組みがなされていた。以前、石川県農業総合研究センターに在籍され、現在は社団法人石川県植物防疫協会試験室県試験員をされているという。アメリカシロヒトリの生態、実際の駆除方法、チャドクガなどの害虫駆除について現場で懇切な説明をうかがった。また、実際の駆除の状況を知るため、市内各地で行われている駆除の現場を数カ所で立ち会った。さらに、他の自治体の対応、使用されている駆除のための機器などの情報などを取り寄せて検討した。

 安全性については、結局、上級官庁任せ、で誰もよくわからない。上級官庁の担当者もよくわからないのではないかと危惧した。

 筆者の簡単な調査の結果、実は主としてアメリカシロヒトリの駆除をしているのではないとこと、アメリカシロヒトリの駆除に限れば簡単であることがわかった。アメリカシロヒトリの駆除は素人でもちょっとした説明で簡単にわかり、駆除ができる。筆者がアメリカシロヒトリをシロアリと誤解して、シロアリがいないのにどうして拙宅の庭に農薬をまくのかと憤慨したのは、3週間前のことであるにもかかわらず、わずかな学習で駆除に関して大半のことが理解できた。

 筆者の考えでは、アメリカシロヒトリ駆除のための薬剤散布量は1桁小さくできるとみる。百歩譲って、実務上、これだけの削減は無理という意見を受け入れたとしても半減は簡単であろう。

平成11年7月31日
金沢市小立野在住
中 登史紀

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