石川県教育委員会文化財課へ意見申入書
石川県教育委員会 文化財課長 殿
平成12年1月24日
建設コンサルタント(技術士)
中
登史紀(金沢市在住)
意見申入書
辰巳ダム計画に関する県文化財保護審議会の
「東岩取水口の水没やむなし」という"意見具申"について
昨年、石川県河川開発課と市民団体によって、「辰巳ダム計画」に関する「意見交換会」が数回にわって開催されました。当方も、「辰巳ダム計画」に疑問を持つ一人として、土木技術者の立場から参加しました。土木技術的な観点に関しては、「意見交換会」の後も問題提起を続けていますが、土木技術以外にも様々な問題があることを知りました。折角の問題の掘り起こしであり、今後の公共土木事業を有効かつ円滑に進めていく上でも、貴重なノウハウが得られたと考えます。この議論を通じて得られた知見を整理して残しておくことは住民の責務であり、公共土木事業に関わる者にとっても有意義なことであると考えました。
今回、辰巳用水という歴史的土木文化遺産の保護と新規の土木事業による開発をどう調和させるかという観点から、行政の文化財保護行政、文化財保護審議会の役割について焦点をあててまとめてみました。
石川県文化財保護審議会は、「辰巳ダム計画」に関する最終結論を「東岩取水口の水没やむなし」としました。石川県河川開発課は、この結論をゴーサインと受けとめ、県民に「辰巳ダム計画」の理解を求める際の切り札にしてきました。県の説明あるいはパンフレットにもその旨が記載されています。
しかし、県文化財保護審議会は文化財の評価・保存を諮問されて教育委員会に建議することが役割であって、「辰巳ダム計画」の是非や「水没やむなし」といった行政判断をする機関ではないはずであります。
どうしてこのようなことになったのでしょうか。
文化行政が開発行政に振り回された結果なのでしょうか。
渡辺寛氏によって掘り起こされた行政文書などの資料を精査した結果、明らかになったことは、文化財保護審議会が正式の諮問も無く、審議を始め、審議するべき内容は全く、審議せず、公共土木事業の是非の議論に終始したことです。権限も判断力もない審議会が公共土木事業の調整の前面にでて当事者のように振る舞った挙げ句の果てに収拾がつかず、辰巳ダムによる「東岩取水口の水没やむなし」という結論を出さざるを得ないような状況に追い込まれてしまったというのが実態でありました。そして、文化課も追認せざるを得なかったのです。そして、石川県河川開発課は、お墨付きをもらったとして事業の妥当性の根拠としてきたものです。
この間のいきさつを小冊子『幻の辰巳ダム計画ゴーサイン―県文化財保護審議会の「東岩取水口の水没やむなし」という"意見具申"について―』平成12年1月1日 にまとめました。今後、このような"行政上の誤り"が二度と起こらないように、「意見申入書」に添えて冊子を提出します。もし、内容に誤り等がありましたら、ご指摘ください。
以上