ゆとり叢書ジュニア編の発行

ゆとり叢書ジュニア編作成の理由

 われわれは豊かで安定した高度な社会システムを作り上げてその恩恵を享受している。しかしながら、そのほころびが随所に見られる。官による無駄な公共土木事業もその一つである。土木技術者あるいは工学者は土木事業の大半が官の仕事であるため、官が行う公共土木事業を批判することはタブーであり、ほとんど批判的な意見を発信してこなかった。これが、無駄な公共土木事業と大きな批判を浴びる結果となった一因である(土木に限らず、他の分野でも大きな相違がないだろうが?)。
土木事業を正当に評価できるのも批判できるのも、情報と判断力を持つ土木技術者である。評価と批判をバランス良く対峙させることによって正常な発展を促すことができるだろう。小さな改善を積み重ねながら(良しとする評価だけなら改善がない!)効率の良い工場の生産システムを構築することに類似している。
一土木技術者として辰巳ダム問題に対して意見を発信することを通じて、役割分担化・細分化された高度で複雑な社会システムを正常に機能させるためには、その分野の中の組織に埋没することなく、社会の一構成員として客観的な意見を発信することの重要性を改めて痛感している。
 改善の兆しはあるが、まだまだ、「民(企業)」と「政治」と「行政」のトライアングルが強固で既得権益に執着し、身動きがとれないような状態が続いている。状況の変化に柔軟に対応できる一人一人の市民が直接民主主義的な手段と発想によって改革をすすめる必要があろう。情報通信の進歩によるインターネット社会の出現によって飛躍的に改革が加速するかもしれない。
しかしながら、旧来の書籍による情報発信手段も手軽さと人々の思考を補完する機能性からその重要性が低下することはないだろう。公共土木事業およびその派生関連事項に関して一土木技術者、納税者の立場から意見や情報を発信する手段として「ゆとり叢書シリーズ」を作成している。ひとまとまりの議論を一気に取りまとめることはなかなか難しい。これを補完する形で、小テーマごとに10数枚程度の小冊子としてまとめることにした。小テーマ群で構成される全体がまとまった段階で「ゆとり叢書」としてまとめることにした。
 小冊子No.1「幻の辰巳ダム計画ゴーサイン」は、1999年4月から7月にかけて市民と石川県が「辰巳ダム計画」に関して意見交換会を行った議論の中の問題点として取り上げられたテーマの一つを取り上げている。ちなみにNo.2も同様に「工事実施基本計画なしの辰巳ダム計画」を取り上げる予定である。
 本小冊子が読者の思考を深める上で一助となれば幸いである。また、一言付け加えるならば、議論した知見をもとに文書として残すことによって、後世の人たちが同じ愚を起こさないという効果も期待できよう。
 

 中技術士事務所ゆとり叢書ジュニアNo.1

幻の辰巳ダム計画ゴーサイン
―文化財保護審議委員会の「東岩取水口の水没やむなし」の"意見具申"について―

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