公開質問状の提出
平成13年5月9日
金沢市企業局長
小泉 賢一 殿
金沢市小立野3−12−28
中
登史紀(建設コンサルタント)
公開質問状
昭和40年度に犀川ダムで開発した上水(10万5千m3/日)、昭和48年度に内川ダムで開発した上水(10万m3/日)について
―1日あたり約10万m3が未利用。ダム貯水池約450万m3が遊休。―
「辰巳ダム」に関連して犀川水系のダムに関して継続して調査中ですが、「辰巳ダム」は治水目的の他に利水目的(河川維持用水の開発)もあります。犀川水系のダムの利水についても調べております。その中で、「犀川ダムおよび内川ダムで開発した上水」が現在、どのように活用されているのか、気になっておりました。この件について金沢市企業局(担当部署:金沢市企業総務課)へ情報公開請求したところ、以下のことが判明いたしました。
(ダム貯水池の上水容量)
自己水源の犀川ダム貯水池の上水容量:499万m3
自己水源の内川ダム貯水池の上水容量:410万m3
自己水源のダム貯水池の上水容量:909万m3
(1999年現在の上水配水能力)
自己水源:20.5万m3/日
犀川ダムで開発した上水で末浄水場から配水される水量:10.5万m3/日
内川ダムで開発した上水で犀川浄水場から配水される水量:10万m3/日
県水から受け入れている水量:11.9万m3/日
合計の配水能力:32.4万m3/日
(1999年現在の上水使用量)
実際の使用水量:17.5万m3/日(一日平均配水量)
県水受け入れ水量:8.3万m3/日
自己水源からの水量:17.5万m3/日−8.3万m3/日=9.2万m3/日
(現在の余剰水量)
現在の全体の余剰水量:32.4万m3/日−17.5万m3/日=14.9万m3/日
現在の自己水源(犀川ダム/内川ダム)の余剰水量:20.5万m3/日−9.2万m3/日=11.3万m3/日
これを模式図にしたものが、図1 である。
図1 上水配水能力と実際の配水量(1999)
全体の上水の余剰も問題ですが、ここでは「辰巳ダム」に関連して金沢市の自己水源の水あまり問題に焦点をあてて考えてみます。「浄水場の遊休化」と「ダム貯水池の遊休化」が問題となります。ダム貯水池は年間を通じて安定的に用水を確保するために設けられたものです。「浄水場」が遊休化するということは、「ダム貯水池」も遊休化していることになります。まず、「浄水場」について見てみます。
(浄水施設の遊休化)
自己水源による配水能力は、末浄水場と犀川浄水場を合わせると、20.5万m3/日に対して,実際の配水量は9.2万m3/日にしか過ぎません。日最大量にしても、1.15〜1.20倍,です。1.2倍して、11万m3/日にしても、約10万m3/日が余剰となっています.配水能力20.5万m3/日の約半分に相当します.犀川浄水場(10万m3/日)がまるまる遊休化していることになります。
(自己水源のダム貯水池の遊休化)
同様に、浄水施設が半分遊休化しているということは、ダム貯水池も半分遊休化していることになります。自己水源のダム貯水池の合計が909万m3です。この半分ということは,約450万m3ということになります。
さらに、重大な問題があります。将来的に、この余剰分が減少し、開発した水が活用される見込みがあるかということです。将来的にますます、余剰が増大するのではないかという懸念があります。その理由を以下に記述します.
最新版の『金沢市水道事業新基本構想―21世紀からの金沢水道をめざして―』金沢市企業局(平成10年3月)13頁の図「人口及び給水量」では、つぎのような図が掲載されています。
省略
給水人口の伸びに比例して一日平均配水量も伸びるように想定しています。ところが、情報公開請求等で入手したデータを用いて、同じ図を作成してみました。1975年(昭和50年)から1999年(平成11年)の25年間の給水人口と給水量(一日平均給水量)を示したものが図2 です。確かに給水人口は25年間で1.19倍、年率0.7%程度の伸びを示しています。ところが、給水量は1980年頃から、ほとんど横這い状態が続いています。
企業局が平成10年に作成した図では、給水人口の伸びに比例して、平成9年(1997)以降、給水量も平行して伸びていくと想定しているようですが、これは希望的観測にすぎないように見えます。
金沢市の現在までの水道水配水能力に2015年までの予定を加えて(1975年から2015年までの約40年間)、実際の使用水量(1975年から1999年までの25年間)と比較した表1、図3に示す。
水の需要が伸びないのは、低経済成長への移行、省資源・省エネ型の企業経営への転換などの影響もあるかもしれませんが、筆者は,金沢市民の節水意識の浸透が最も大きな要因を予測をしています。もし、この予測が正しいとしたらならば、今後も水の需要は伸びず、余剰はますます拡大すると予測されることになります。
筆者がこのような予測をする理由は以下のとおりです。
1.金沢市の上水の用途先は家庭用が7割を占めるので、家庭での水の使用が全体の水の需要に大きな影響を与えること。
2.家庭での水使用は、節水意識が浸透につれて今後ますます減少が予想されること。節水意識が拡大する要因は2つある。
その一は、水道料金の上昇。
その二は、下水道の普及である。
(その一)水道料金の上昇
金沢市では、昭和50年(1975)からの25年間に7回の料金の改定が行われ、標準家庭(30m3/月に想定)で790円/月から3,690円/月と4.7倍にも上昇している(図4)。消費者物価指数(全国・総合)はこの間に1.8倍強に伸びているにすぎない(図5)。比較すると、いかに水道料金が高くなったかがわかる。
今後も県水の値上げなどの要因で上水道料金が継続的に上昇すれば、ますます市民の節水意識が働き、上水の需要が抑えられると予測する。
(その二)下水道の普及
下水道普及も節水の大きな要因である。なぜならば、水道使用量に応じて下水道使用料金を払うしくみになっているからである。図4に示すように、水道料金とほぼ同額の下水道料金を支払わなければならない。新規に下水道に加入すると、料金は一気に二倍になる勘定である。
金沢市の下水道普及率と1人1日平均給水量の経年的な変化をしめしたものが、図6である。下水道の普及に従い、水の使用が頭打ちになっていることが読みとれる。
また、下水道は上水道に比較して、建設費や維持管理費は2倍以上に嵩む。ところが住民感情から、下水道料金は飲み水よりも高い料金徴収が困難なので上水料金よりも意図的に安く設定されている。潜在的に、料金を上げざるを得ないことが予想される。
以上のような観点から、一市民として、今後の上水道の運営に不安を抱いております。以下の質問にお答えください。行政当局の誠意ある御回答をくださるようにお願いいたします。1週間程度でお答えください。御回答しないということであれば、その理由を書面で御回答ください。
質問は以下のとおりです。
(水需要予測について)
1.水道施設の遊休化は、税の無駄遣いと同義語であり、市民にとって重大な問題です。この問題を解決する前提となる「水需要予測」についても重要な問題です。金沢市における、今後の水需要の予測を、技術的な根拠にもとづいてお示しください。
同時に、企業局が平成10年に作成した「人口及び給水量」図では、給水人口の伸びに比例して、平成9年(1997)以降、給水量も平行して伸びていくと想定しているようですが、このように想定した技術的根拠をお示しください。
(料金の改定について)
2.上水道料金の改定について
水道事業経営を安定させるために、今後、2015年までの料金改定あるいは使用量収入の予測をお示しください。
3.下水道料金の改定について
下水道料金は,過去25年間に11回の料金改定を行っており,標準家庭(30m3/月に想定)で360円/月から3,370円/月と9.4倍になっております。今後、2015年までの料金改定あるいは使用料収入の予測をお示しください。
(犀川ダム、内川ダムの貯水池について)
4.自己水源の水ガメが450万トン余っていると判断しましたが、行政当局は実際にどれだけ余っていると判断しているのか、データをもとにお示しください。
5.この余剰を改善するためにこれまでとられた対策のすべてをご説明ください。
6.2問であげられた対策の成否についてご説明ください。
7.今後、どのような方策をとられようとしているのか、その方策によってどのくらいの成果を期待しているのか、その理由を具体的にお示しください。
(末浄水場、犀川浄水場について)
8.自己水源が日量10万トン余っていると判断しましたが、行政当局は実際にどれだけ余っていると判断しているのか、データをもとにお示しください。
9.この余剰を改善するためにこれまでとられた対策のすべてをご説明ください。
10.2問であげられた対策の成否についてご説明ください。
11.今後、どのような方策をとられようとしているのか、その方策によってどのくらいの成果を期待しているのか、その理由を具体的にお示しください。
12.当該事項について、市議会で議論されたことはありますか。あれば、その内容をお知らせください。
13.市当局内部で良い知恵がでないとしたら、広く、市民にアイディアを求めるべきと考えますが、その機会や委員会を設置する考えはありますか。あれば、具体的にお答えください。なければ、その理由をお答えください。
以上
できれば、二週間程度で誠意あるご回答くださるように要望いたします。