金沢の洪水を考える 29
by Toshiki NAKA
浅野川に比較して犀川の治水安全度は大幅に高い!
――新辰巳ダム不要の根拠(治水に関して)――
犀川の治水安全度は、犀川/内川両ダムが整備された現時点で、20世紀100年間で最大の洪水量は現在の流下能力の約6割に相当し、4割の余裕がある。県はさらに約1割の余裕の拡大が必要であるとして新辰巳ダム建設を主張している。一方、同様に金沢市街地を流れ、100年確率想定でほぼ慨成した浅野川の治水安全度は、既往の最大洪水量は流下能力の約8割に相当し、2割の余裕がある。実際は、浅野川大橋前後の流下能力は1割程度小さいので、現実の余裕は1割にしか過ぎない。現時点で、浅野川に比較して犀川は大幅に治水安全度が高い。さらに、安全度をあげなければならない緊急性は全くない。 |
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(犀川、浅野川の治水目標) 石川県の説明によると、金沢の中心市街地を流れる「浅野川」と「犀川」の治水の目標はともに100年確率対応であり、同程度の治水安全度の確保を目指している。 (犀川の現況流下能力) 犀川の基準点(犀川大橋地点)の現況流下能力をダムの調整も含めたもので示すと、 ●第二次犀川総合開発事業(内川ダム)昭和46年→ 1,600m3/秒 ●犀川総合開発事業(辰巳ダム建設)平成16年→ 1,534m3/秒、 (犀川の現況流下能力に対する既往洪水の比率) 前者に対する既往の大洪水に対する比率はつぎのとおりである。 第二次犀川総合開発事業(内川ダム)
20世紀100年間で最大規模であったと推定される昭和8年の洪水量で、現況流下能力の約6割である (新辰巳ダム整備前と後の流下能力に対する既往洪水の比率) 後者に対する既往の大洪水に対する比率、ならびに新辰巳ダムが整備された後の既往の大洪水に対する比率はつぎのとおりである。 犀川総合開発事業(辰巳ダム建設) 新辰巳ダムの調整を加える前、後の犀川大橋基準点の流下能力に対する既往の出水量の比率(%)
新辰巳ダムが整備された後においても流下能力が1割弱向上するに過ぎず、新辰巳ダムを莫大な費用をかけて整備する根拠が薄弱であることが明瞭である。 (浅野川の流下能力に対する既往洪水の比率) 一方、犀川と同様に金沢の中心市街地を流れる浅野川の治水安全度についてはつぎのとおりである。 浅野川の基準点(天神橋地点)の現況流下能力を放水路の調整も含めたもので示すと、 ●第二次犀川総合開発事業(内川ダム)昭和46年→ 710m3/秒 平成14年度大野川床上浸水対策特別緊急工事(設計)業務委託(その2)による「浅野川流下能力図(計画)」によれば、浅野川大橋地点の前後約500m区間で流下能力が計画高水460m3/秒に対して380〜400m3/秒と80〜60m3/秒程度少ない。これを加味すると、実際の現況流下能力は、630m3/秒となる。 ●実際の現況流下能力→ 630m3/秒 現計画および実際の流下能力に対する既往の大洪水量の割合をつぎに示す。 第二次犀川総合開発事業(内川ダム) 浅野川放水路の調整を含めた浅野川天神橋基準点の流下能力に対する既往の出水量の比率(%) @浅野川放水路の調整を含めた浅野川天神橋基準点の流下能力 710m3/秒 A大橋前後の流下能力不足を考慮した浅野川天神橋基準点の流下能力 630m3/秒
浅野川大橋地点を除けば8割程度であり、約2割以上の余裕がある。浅野川大橋地点の現時点の流下能力を考慮すれば約1割の余裕ということになる。 (浅野川の治水は100年確率で完成) 浅野川についての最新の全体計画は、平成3年である。この時点では、中安の解析手法によって710m3/秒でよしとしている。今回、平成16年の犀川総合開発事業(辰巳ダム建設)の見直しと同時に貯留関数法により再検討したが、710m3/秒で1/100確率対応可と結論づけている。つまり、新辰巳ダムが整備された後の犀川の整備水準と同等であると判断している。 (犀川の現在の治水整備水準は100年対応の浅野川と比較し大幅に高い) 上記したように、20世紀の100年間の既往の洪水と比較してみると、現況の犀川(新辰巳ダムが無い)においても整備が100年確率で概略完成した浅野川の整備水準と比較し、大幅に治水安全度が高いことがわかる。この上、さらに新たな治水ダムが必要と石川県は主張しているが、整備の緊急性は全くないことが明瞭である。 平成17年6月19日 中 登史紀 |
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