金沢の洪水を考えるNo.22
辰巳ダムは不要! 犀川は100年確率の洪水に対して安全!
――基本高水1750m3/秒は過大で確率不明――
平成7年以来、石川県と犀川の治水、利水に関して議論を続けてきました。当初から、技術的な疑問を感じたので続けてきたのですが、約10年近い議論の結果、辰巳ダムの根拠である犀川の基本高水ピーク流量は完全に誤りであることがわかりました。 |
(基本高水1750m3/秒は過大で確率不明) 石川県は、「100年確率の治水安全度を確保、平成7年8月30日の降雨パターンで1/100確率2日雨量314mmが降れば、犀川大橋地点で1,750m3/秒の洪水が発生」と説明していますが、1,750m3/秒の洪水は過大であり、何年確率で発生するかは不明です。 (過去の洪水は800m3/秒前後) 過去100年間の最大の出水は800m3/秒前後です。藩政時代400年を含めても500〜1,000m3/秒程度と推定され、これらに比較して1750m3/秒は大き過ぎます。有史以来発生したことのない洪水と言っても過言ではありません。河床を約4m掘り下げた、昭和50年代の改修以前の犀川大橋地点の流下能力は615m3/秒でした。この3倍近い水量です。寺町台地まで水が溢れると言っているようなものです。 (基本高水1750m3/秒の発生確率は1/2400か?) 確かに、314mmの雨は1/100確率の大きさです。平成7年8月30日の降雨パターンで1/100確率2日雨量314mmが降れば、犀川大橋地点で1,750m3/秒の洪水が発生するでしょう。しかし、平成9年7月8日型の降雨パターンではわずか547m3/秒です。おおよそ100年に1回の314mmの雨が降った時に平成7年8月30日型降雨パターンが必ず起きるとは言えません。石川県は24降雨パターンから1つを選択していますので、単純に個々のパターンの発生確率が同じと仮定すれば、1/24となります。1/100確率の314mmの雨があり、平成7年8月30日型降雨パターンとなる事象が重なった場合、乗法の定理により1/2400確率となります。 これは、統計的に1/100確率値を求めたのではなく、恣意的に一つのケースを選択したからです。石川県は、「カバー率を用いて計画を決定したのではありません。」(石川県ホームページQ&A:Q15)と説明し、基本高水のピーク流量を決める際に統計手法を採用していません。この結果、1,750m3/秒は何年確率の洪水か不明となったわけです。最初に掲げた条件「100年確率の治水安全度を確保」と矛盾してしまいました。 (基本高水は1043m3/秒、1/100確率洪水に対して安全) 石川県の解析を統計的に正確に読めば、基本高水のピーク流量は1,043 m3/秒です。現実の過去の大出水とも付合します。浅野川導水路からの水量250 m3/秒を加算して、1,300 m3/秒程度となります。犀川大橋地点の流下能力は1,230 m3/秒です。わずかに70 m3/秒程度を既存のダムの治水容量で低減すればよいことになります。既存の2ダムの治水容量は、880万m3あり、洪水のピークの削減能力は、300m3/秒程度(前計画では370m3/秒、今回の検討では290 m3/秒(1750→1460)の削減能力)ありますので、1/100の洪水に対して十分な余裕があります。 ただし、飽和雨量を100mmと決めるのではなく、実際の降雨の固有値を使えば、1043m3/秒よりさらに小さくなるかも知れません。その場合、既存のダムの洪水調節機能が無くても1/100確率の洪水に対して安全となります。 (意味不明の基本高水1750m3/秒) なお、石川県は、ピーク流量群の中から最も大きい流量を選択したとしていますが、最も大きい洪水を選択したわけでもありません。「実際の現象として起こりえると考えられる(中略)、ピーク流量群の中で、最も大きい1,750m3/sを基本高水のピーク流量として決定し」(石川県ホームページQ&A:Q15)とありますが、飽和雨量を100mmと仮定した上での数値(5ケースの平均値)であり、飽和雨量の実績値30mmとすれば、2,043m3/秒となり、0mm(地表が湿潤して飽和状態)を想定すれば、約2,100 m3/秒になります。したがって、最も大きい流量を選択するのであれば、1,750 m3/秒ではなく、2,100 m3/秒になるはずです。この点からも1,750m3/秒は意味不明の洪水量です。 平成16年6月25日 中 登史紀記
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