金沢洪水考えるNo.20           

浸水想定区域図、洪水ハザードマップとは?
――国土交通省の作成した「手取川の浸水想定区域図」は誤り!――
――懸案の「犀川の浸水想定区域図/ハザードマップ」は無い!――

 犀川の「洪水ハザードマップ」は無い。その基本となる「犀川」の基本高水流量が確定していないからである。したがって、県が作成すべき「犀川の浸水想定区域図」も無い!)
 国土交通省が管理する1級河川「手取川」は作成された「浸水想定区域図」があり、ホームページ上で公開されている。参考にのぞいてみた。
 ここでも杜撰な河川管理?の一端が明らかとなった!

(水防法の改正)
 洪水などの水災被害を軽減し、防ぐための法律「水防法」が平成13年6月に改正され、成立した。平成12年9月の東海豪雨被害をきっかけとして、的確な水災関係情報の伝達、住民の迅速な避難を確保するための課題を解決するために見直されたものである。

改正の主な内容は、
@国/都道府県知事が洪水予報
A国/都道府県知事が浸水想定区域を公表
B市町村地域防災計画において円滑で迅速な避難の確保等の措置

具体的には、
@知事は気象庁官と共同して洪水の水位又は流量を示して水防管理者等に通知。
A河川の基本となる計画降雨による河川の氾濫の浸水区域、想定水深を公表。
B浸水想定区域ごとに洪水予報の伝達方法、避難経路、避難場所等を定め、住民に周知(ハザードマップなどで)

つぎのホームページを見ると、改正および拡充された内容が正確にわかる。
http://www.mlit.go.jp/river/saigai/tisiki/syozaiti/suibo/pdf/03.pdf



(手取川の浸水想定区域図)

石川県では、国が「洪水予報河川」として、手取川、梯川を指定している。
金沢河川国道事務所のホームページ
http://www.hrr.mlit.go.jp/kanazawa/
で「手取川」の「浸水想定区域」を紹介している。

(手取川の浸水想定区域図の想定条件)
●100年に一回起こり得るような豪雨を想定(手取川流域の一日の総雨量:316mm)。
●堤防が完成している所では、計画高水位に達したときに破堤はん濫すると想定。堤防が完成していない所では、洪水流量を安全に流下させることができる水位(堤防の断面、浸食対策としての護岸等設置の必要性とその有無などを勘案し設定)を対象とする洪水の水位が超えた瞬間に破堤はん濫すると想定。
●このシミュレーションの実施にあたっては、熊田川、北川等の支派川や隣接する梯川のはん濫、想定を超える降雨、高潮、内水によるはん濫(雨水が河川に排水できなくなり生じる浸水被害)等を考慮していませんので、、、、。


(二つの間違いがある!)
●破堤氾濫の想定の誤り
「堤防が完成している所では、計画高水位に達したときに破堤はん濫するとの想定」は誤りである。計画高水位を超えた場合に破堤するのであって、計画高水位に達しても破堤しない。浸水想定区域図は、整備水準が完了していないところからの氾濫を想定しているはずである。
●正しくは整備水準未達の支川から氾濫
「このシミュレーションの実施にあたっては、熊田川、北川等の支派川や隣接する梯川のはん濫、想定を超える降雨、高潮、内水によるはん濫(雨水が河川に排水できなくなり生じる浸水被害)等を考慮していませんので、、、、」としているが、整備水準に達していない「支派川」から氾濫するのである。これは、東海豪雨でも明らかである。庄内川から氾濫したのではなく、整備水準の劣った支川の新川から氾濫したのである。

浸水想定区域図を作るにあたっての基本的な考えはつぎのようなものであるはずである。河川整備の前提となる計画降雨に基づいて浸水想定区域を設定。河川整備の現状が計画水準に達していないために起きる氾濫によって浸水が起きる。迅速に避難するための措置を講ずることで被害を軽減。河川整備を水災防止措置によって補完するという考え方にたつ。

 したがって、「手取川」のように整備が終わった河川は、氾濫を想定する必要はない。これにつながる、支川の氾濫を想定する必要があるのである。

(懸案の「犀川の浸水想定区域図/ハザードマップ」は無い!)
 ところで、懸案の犀川はどうだろうか。
 前提となる「基本高水」が確定していない。そのため、県は「浸水想定区域図」を公表していない。したがって、金沢市は「浸水想定区域図」に基づいた「地域防災のための洪水ハザードマップ」は未作成である。その代わりとして「浸水実績区域図」を公表している(市河川課)。H3.6.28、H8.6.25、H10.9.22、H11.9.20の浸水箇所を表示した、1/25000図である。

                                                 平成15年12月10日
                                                   中 登史紀


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