金沢の洪水を考えるNo.14
犀川大橋の流下能力のつづき、
もし氾濫するとすれば犀川大橋地点ではない!
――現場踏査から判明した、お粗末な建設コンサルタントの技術の初歩的なミス―― | ||||||||||
(犀川の流下能力を制限する地点) 県が建設コンサルタントに依頼して作成した「犀川現況河道の流下能力評価書」(注1)によれば、現況の犀川で流下能力を制限する地点は犀川大橋地点ではない。 犀川大橋の上流の2地点(大橋から232m、1,120mの地点の右岸)である。 1,230m3/秒が流れた場合、これらの地点で限界の水位となるのでこれ以上の水量は流すことができないとしている。 これらの地点で、計画高水水位と既存の堤防高さとの差が最低必要余裕高1.0mとなる。(注:現実に1m余裕あるという意味ではなく、波浪や土砂の混入などによる水量の膨張を見込んでおり、満杯になることを意味する。) (現場の確認) これまで、筆者は犀川の流下能力を制限するのは犀川大橋地点であると単純に信じていた。それがそうではないということなので、制限する地点を確認するために、現場踏査をした。 犀川大橋から上流は、昭和47年からの「犀川中小河川改修工事」によって川の中央部が掘り下げられ、両側が高水敷の河原となっている。その端に護岸があり、上部に1m程度のコンクリート壁の護岸が設置され、その外側が護岸道路となっている。 制限地点と見られる2地点はつぎのとおりである。 大橋から232m上流付近の右岸は、石積みの護岸の上に1m程度のコンクリートの壁が続いている。ちょうど232m地点に堤防の一部に切り欠きがあって、洪水時用の鋼製の扉がついている。この地点の堤防が一部、特別に低くなっているわけではない。 また、大橋から1,120m地点の右岸の様子は、低いコンクリート壁があり、幾分、護岸の道路が平坦で低いようにも見えるが、この部分だけが特段に低いわけでもない。連続した護岸が続いている。 (河川の流下能力を制限する地点について) 河川の流下能力を制限する地点を、例えば、犀川大橋地点と考えるのであれば、平面的に狭窄部になっており、ここで制限されることが容易に理解できる。しかし、犀川大橋地点ではなく、上記の2地点であると説明されても理解しがたい。いずれも、流下能力を制限する地点には思えなかった。 一般的に、流下能力を制限するところは、水が流れにくい原因(流向の変化、河床勾配の変化、流下断面の縮小など)があるところである。大橋から上流の区間で、流向の変化、河床勾配の変化はほとんど無い。従って、流下断面の縮小が制限となる。川幅は十分あるので、高さ、つまり堤防の高さが制限要因となる。実際の現場はなだらかな堤防が続いており、特に2地点だけが低いわけではない。 仮に、2地点だけが低いとしても、点の部分の堤防高さを上げるのは簡単である。これが制限要因になるとは思えない。 (お粗末な建設コンサルタントのお粗末な評価書!) 制限地点の幅が狭いのを広くするのは、市街地であれば簡単ではない。 制限する区間が線的に長ければ、いくらか困難をともない、簡単ではないかも知れない。制限する区間が点であれば、橋梁部以外の堤防の部分は簡単である。嵩上げすればよい。「評価書」が指摘している2地点は、堤防の一部であり、どう考えても嵩上げすることは容易である。 「評価書」では犀川の流下能力の制限要因を大橋から上流の2点と評価した。しかし、これは上記の理由から制限要因にならない。簡単に改善できるからである。簡単に改善できるものを制限要因と考えること自体が技術的な誤謬である(技術的に、初歩的で致命的なミスである!)。 このような「評価書」をつくる方もつくる方だが、受け取る方も受け取る方である。こんな「評価書」に県費を支払うべきではない(-_-;) (鞍月用水の取水口上流の区間が流下能力を制限するのではないか?) この2地点の上流に上菊橋があり、鞍月用水の取水口がある。通称、「油瀬木」という大きな堰がある。その上流は流下能力を増強するような河川改修がなされておらず、従来のままである。明治7年の大きな洪水で氾濫した地点であるが、放置されているように見える。昔のままであれば、この地点が犀川の流下能力を制限する地点ではないのであろうか? 犀川の流下能力を制限するのは犀川大橋地点ではなく、鞍月用水取水口「油瀬木」(アブラセキ)の上流の城南川上で発生するのか? 平成15年4月24日、犀川水系河川整備検討委員会 玉井委員長、河川計画専門部会 辻本部会長ならびに委員、石川県河川課長宛に提出した、「犀川の治水計画に関する公開質問状」(注2)に加えて、あらたに質問しなければいけないだろう。
(注1):「平成12年度 犀川総合開発事業(辰巳ダム建設)犀川水系河川整備計画作成業務委託参考整理資料[犀川現況河道の流下能力評価]2002-3、潟Aイ・エヌ・エー」 (注2):平成15年4月24日、犀川水系河川整備検討委員会 玉井委員長、河川計画専門部会 辻本部会長ならびに委員、石川県河川課長宛の「犀川の「治水計画」に関する公開質問状」の質問内容 ●疑問3 犀川大橋地点の実際の流下能力はどれだけか? 従来、県は犀川大橋地点の流下能力を1,230m3/秒と説明しているが、そもそも、実際の流下能力はどれかけか? 「犀川中小河川改修事業全体計画書」の添付図面および現場での確認では流水断面にかなり余裕がある。また、県から入手した「流下能力評価資料(2003)」の検討では2点で制限されるので1,230m3/秒が最大としているが、2点の改善すれば容易に流下能力を拡大できると解釈できる。 実際に犀川大橋地点で流下させることができる能力はどれだけなのか? ダム案の根拠としている1,460m3/秒についても簡単な改修で流下させることができないのか? |
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