金沢洪水考えるNo.11           

犀川大橋地点の流下能力は?

県は犀川大橋地点の流下能力は1,230m3/sしかないと説明してきたが?
(1,230m3/秒の歴史)
 犀川大橋地点の流下能力は、犀川ダム事業(昭和40年完成、1965)計画書によれば、
615m3/秒であった。
内川ダム/浅野川導水路事業(昭和49年完成、1974)の時点で、
615m3/秒→2倍の1,230m3/秒
となった。この計画水量にもとづき、昭和47年度起犀川中小河川改修事業で河床が切り下げられ、現況の河川断面となった。

(素人の追求)
 「犀川大橋地点の実際の流下能力はいくらなのだろうか?」と、友人の素人(固定観念にとらわれない人)に尋ねられて小生(いちおう、玄人、固定観念にとらわれている人!)は答えた。「県が言っているように1,230m3/秒だろう。そんなことまで、疑っていては話が前に進まない。県の技術屋がまとめたのだろうが、技術屋はまじめだから、いい加減に決めるわけもないし、明確な根拠もあるはずだ。」 ところが、疑い深い!友人の弁に、若干、気がかりになり、県へ説明と根拠となる文書を公開請求することにした。県の担当者も昔のことでもあり、簡単に答えられず、根拠資料も簡単に見つからなかった。最も基本的で重要な数値であるから、あいまいにしておくわけにはいかない。探してもらうことにした。やっと見つけられた文書によると、若干の違いはあるものの、1,250m3/秒を根拠にした資料がみつかった。加えて、最近、実際の流下能力を検討した資料もでてきた。1,230m3/秒以上になれば、大橋地点から溢れるという単純な話ではなかった。もう少し、複雑であった。

(犀川大橋地点の断面)
 「昭和47年度起犀川中小河川改修事業全体計画認可設計書」(以後、「計画書」と呼ぶ。)の添付図面、「平成12年度 犀川総合開発事業(辰巳ダム建設)犀川水系河川整備計画作成業務委託参考整理資料[犀川現況河道の流下能力評価]2002-3、潟Aイ・エヌ・エー」(以後、「流下能力評価資料」と呼ぶ。)、および現場での簡単な計測をもとにした犀川大橋地点の断面は、(図)犀川大橋地点の横断面図のとおりである。

(犀川大橋地点の断面のゆとりは?)
 犀川大橋地点の横断図を見ると、計画高水位は高水敷の少し上にあり、大橋の橋桁の下端から、かなりのゆとりがある。
「計画書」の計画高水位+18.725からは、約2.3m
「流下能力評価資料」の検討水位+18.090からは約2.9mの離隔がある。
必要な最小の余裕高1.0mを引いて、少なくとも1.3mのゆとりがある。「計画書」の水深5.635mの23%である。断面積ではおおよそ3割以上のゆとりがある。1,230m3/秒に3割を乗じると370m3/秒となる。
しかし、実際には犀川大橋地点で川の断面が絞られる形状となっているため、前後にその影響が及ぶので単純に断面積だけでその流下能力を評価することは出来ない。「流下能力評価資料」で流下能力の検討がなされている。これによると、1,230m3/秒の不等流計算の結果、犀川大橋の上流の2地点(大橋から232m、1,120mの地点)で既存の堤防高さとの差が最低必要余裕高1.0mとなるので、1,230m3/秒が限界の水量としている。
 注:「余裕高」は波浪の影響、土砂などの混入により容積が増加することなどの要因を考慮したものであるので、流量の余裕を意味しない。

(わずかな改修で流下能力は1,460m3/秒となる!)
 「流下能力評価資料」の結論にもかかわらず、縦断図、計算結果表を見ればわかるが、堤防の高さをわずかの区間、嵩上げすれば、1,230m3/秒以上の流量を流すことは可能である。1,460m3/秒の流量を流すと、どの区間でどれだけの嵩上げが必要となるかを、別紙の検討書「河道改修E案(犀川大橋上流の堤防嵩上げ案)」で行った。
 犀川大橋から下菊橋の区間(1200m)で、左岸590m、嵩上げ高さ2センチ〜101センチ、右岸500m、嵩上げ高さ6センチ〜133センチとすれば、流下可能である。
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