飽和雨量について
飽和雨量のカバー率はなぜ100%をとらないのか? (降雨波形を選択する時はカバー率を100%にしているにもかかわらず) |
(飽和雨量とは) 飽和雨量は、地表面の湿潤状態を表す。飽和雨量が0mmということは地表面が完全に雨で飽和し、それ以上の雨はすべて地表を流れて川へ到達することを意味する。長い雨が続いて地表が雨で飽和した後に、大きな降雨があると降雨量の大きさに応じて河川のピーク流量が大きくなる。逆にこの数値が大きい値であれば、降雨を地表で受け止める能力が大きいことを表し、地表を流れて川へ到達する量は少なくなる。100mm前後の数値が用いられている。 (貯留関数法の変数) 現在、洪水解析で最も多く用いられている貯留関数法を使用する際に、いくつかの変数が必要となる。飽和雨量以外の変数を標準的な数値をもちい、飽和雨量だけを変えることによって、現実の雨を何とか説明できることがわかった。つまり、貯留関数法を用いる場合、降雨量データ、降雨波形に加えて、この飽和雨量がわかれば、計画洪水量(基本高水流量)を求めることができるわけである。 (県の計画では) 県の計画では、飽和雨量についてつぎのように説明している。 検証洪水ごとに計算ハイドログラフが実績ハイドログラフに適合するように飽和雨量Rsaを修正した。 犀川ダム: 最適Rsa:30〜190mm、平均102mm 内川ダム: 最適Rsa:80〜140mm、平均106mm 桜橋(犀川大橋地点): 最適Rsa:30〜170mm、平均104mm 以上の結果、検証洪水ごとの最適Rsaは比較的ばらつきが大きいものの、平均で約100mmであり、山地流域におけるRsaの標準値は100mmであることを考慮して、流域のRsaは100mmを採用する。 各飽和雨量の中身を見ると、それぞれの数値はつぎのとおりである。 犀川ダム:70,190,160,30,60mm 内川ダム:110,90,140,80,110mm 桜橋(犀川大橋地点):130,40,170,150,30mm かなり、ばらついている。桜橋(犀川大橋地点)で見ると、30,40と130,150,170と大きく2グループに分かれている。100という数値を採用すると、前者は危険側になり、後者は安全すぎるようみ見える。仮に最も大きい190を採用すると(言い換えると、カバー率を100%とすると)、すべての場合を包含し、安全側となる。県は平均値として、100mmを採用しているが、その理由が明確でない。危険な場合が生じるがいいのだろうか? また、平均値といっても各地点でそれぞれ5ケースだけである。ケースの数が少ない。そして、各ケースの洪水生起年月日もバラバラである。その上、基本高水流量の根拠とした平成7年8月30日のケースはどこにもでてこない。平均が100mmになるようにデータを集めてきたのではと指摘されて反論できない。 (平均値の意味) 平均取るという意味がよくわからない。よくわからない処理をするのであれば、飽和雨量を他の変数と区別して取り扱った理由も不明になる。長期間の観測記録から統計学的処理をして導くことができればその数値を採用すればよいのだろうが、できそうもない。各ケースがバラバラだからである。ただ、集中型の雨では飽和雨量が大きく、長時間継続型の雨では飽和雨量が小さくなる傾向があるという。 (飽和雨量は解析を複雑にして意図的な裁量の範囲を大きくしただけか?) 計画洪水量(基本高水流量)を求めるために大きな要素として、つぎの3つ。県は、 降雨の大きさ:確率統計的に求めた、 降雨波形:ありそうもないケースを棄却して最も大きいものを選択、 飽和雨量:平均値を選択。 けれども、 飽和雨量:最も大きいものを選択 するケースもありうる。しかし、馬鹿でかい数値になり、解析がなりたたない。 (問題解決の答えは?) この問題は、 降雨量−降雨波形−飽和雨量を一つと考えること、1/100確率で選択した降雨についた属性として降雨波形も飽和雨量も取り扱えば問題は解決する。この点の詳細な議論は別の機会に行う。 |
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