金沢の洪水を考えるNo.10
引き伸ばし法とは
引き伸ばし倍率は1.8倍以下とするのがよい! | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(引き伸ばし法とは) 計画降雨の降雨量(例えば、314mm/2日)、つまり大きさが与えられても、求める計画洪水量が一義的に決まらない。雨の時間的/空間的変動の形を定めないと川へ流出してくるピーク流量がわからない。時間的/空間的変動の形を定めた計画降雨を作らなければならない。実績降雨の中で見つけることができればよいが、降雨記録が少ないために見つからない。そのために通常、用いられる方法が「引き伸ばし法」である。過去に生起した幾つかの降雨パターンをそのまま伸縮して、時間分布/地域分布を作成して計画降雨を求める。 (引き伸ばし倍率) つまり、小さい雨のデータを何倍かに拡大して大きな雨を創るわけである。計画降雨量と実績降雨量との比率を「引き伸ばし倍率」というわけである。小さい雨と同じ形で大きな雨も降るという根拠がないので、あまり倍率を大きくすると現実離れしてしまう。だから、その引き伸ばし率は2倍程度に止めることがのぞましいとされている。 (引き伸ばし倍率2倍の意味) 具体的に述べると、2倍は100mmの雨を200mmの雨にすることを意味する。これでもかなり、大雑把というか、大胆な取り扱いである。3倍、4倍は馬鹿げているのは誰でも理解できる。では、1.8倍では?、1.6倍では?どうであろうか。1.0倍では、実績降雨量のデータがない。データを集めるためにハードルを下げねばならない(注:引き伸ばし倍率を大きくすることを意味する)。石川県犀川の例を見よう。以下に、引き伸ばし倍率、実績2日雨量、46年間(S31−H13)の出現回数、起きる頻度を一覧表で示す。
1.6倍以下でも13個のデータがあるので(注:「技術基準」では10個以上)必要な統計解析はできる。数を多くしてふところを広げたいとすれば、1.8倍以下とすれば20個となる。どうしても、2.0倍以下にしなければならない理由はない。 (引き伸ばし倍率の大小の違い) 引き伸ばし倍率の大小でどのような違いがあるのか、ピーク流量のバラツキで考えてみる。簡単な計算で調べてみる。(計算した表は末尾に添付する。) 上記と同様に、石川県犀川の例を見よう。引き伸ばし倍率ごとに、ピーク流量とそのバラツキは以下のとおりである。 表1 33パターン選択の場合
表2 24パターン選択の場合(33パターンのうちから、ありそうもないと判断して棄却したものを除いた場合)
算術平均値は前者で1,100前後、後者で1,000前後である。後者が少し小さくなったのは、前者のグループにあった飛び抜けて大きいケースが除かれたためである。いずれの場合も引き伸ばし倍率を下げることによって、バラツキは小さくなっている。 後者の1.6倍以下で、標準偏差が203m3/秒と一番小さくなっている。パターンの数値群が正規分布とすれば、(算術平均が991m3/秒)±(標準偏差203m3/秒)=788〜1,194m3/秒の中に68%のピーク流量が含まれていることを意味する。 24パターン選択の場合、1.8倍以下に広げても標準偏差が近似しており、バラツキが小さい。この16パターンを適当な母集団と考えて検討することは統計学的に意味のあるものであろう。 (参考) ピーク流量ごとの頻度分布図(6表、エクセルで作成) 33パターンの場合の引き伸ばし倍率2.0以下、1.8以下、1.6以下 24パターンの場合の引き伸ばし倍率2.0以下、1.8以下、1.6以下 |
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