カバー率とは

(カバー率とは)
 カバー率のカバー(cover)の意味は、日本語でも使用されている意味「フタをする」の他に、補う、充当する、埋めるという意味があり、一般に充足率と訳されています。カバー率50%とは、全数のうちの50%は補っているという意味です。

(日本人の身長に例えると)
 日本人の身長を例にとって説明します。現在の日本人成人男性の平均身長は171cm(2002年/17歳)だそうです。1mくらいから、2m近い人までいるでしょう。日本人成人男性の身長をカバー率50%で選択すると、171cmになります。50%の男性は171cmよりも小さいことになります。最も大きい人の身長2m?を選択すると、カバー率100%になります。(注:ここでは中位数=平均値と仮定)

(河川工学のカバー率)
 河川工学では、基本高水流量(計画洪水流量)を求める時に「カバー率」が出てきます。1/100確率(例えば、)の降雨の大きさは、気象台などから得られる長期間の観測降雨記録から統計解析することによって求めることができます。大きさが同じ雨(例えば、314mm/2日雨量)でも時間的/空間的変動(降雨波形)によって答え(計画洪水流量)が著しく違ってきます。石川県が作成した犀川の検討書では、547m3/秒〜1,741m3/秒(24降雨波形)。ここで「カバー率」を使用します。50%とすると、938m3/秒となります。100%とすると、1,741m3/秒です。

(50%の値)
 統計学的には「カバー率」50%として求めたものが、その母集団の中で最も頻度が高く、ありそうなものとして選択され、求める数値です。犀川の基本高水流量の選択例を変形して、24個の314gのボールに例えてみます。大きさが547mmから1,741mmにばらついていますが、大きすぎるものや小さすぎるものの数は少なく、最も集中しているのが938mm近辺のボールで少なくともこれよりも小さいボールが50%でした。最もありそうな大きさとして938mmを選ぶことが統計学的に最もありそうな選択ということになります。

(「技術基準」では)
 河川構造物の設計指針である、『改訂建設省河川砂防技術基準(案)計画編』p.16(平成8年発行)の「基本高水の決定」の項では、いわく、
 1. ハイドログラフをピーク流量の大きさの順に並べる。
 2. このハイドログラフ群の中から既往の主要洪水を中心に降雨の地域分布を考慮して1個または数個のハイドログラフを計画として採用する。 ・・・・・・
また、計画に採用するハイドログラフは、既往最大洪水が生起したものを含み、かつ、少なくとも1.によって並べた順の中位数以上のものとする。
 3. これらの諸検討の結果を総合的に考慮して基本高水を決定する。この場合ピーク流量が1.のハイドログラフ群のそれをどの程度充足するかを検討する必要がある。
この充足度を一般にカバー率という。・・・・
 上述の方法によれば、このカバー率は50%以上になるが、1級水系の主要区間を対象とする計画においては、この値が60〜80%程度となった例が多い。

(正規分布が条件)
 ただし、降雨波形の母集団が正規分布である必要があります。正規分布というのは、誤差曲線が左右対称で中央が高く、なだらかな山のような形をしているものです。誤差曲線(例えば)とは、横軸が降雨あるいは流量の大きさ、縦軸が降雨あるいは流量の頻度をあらわすものです。山のピークのところが、最も頻度が高く、ありそうな求める降雨あるいは流量ということになります。降雨は小さい方へ山がずれるが、正規分布するといわれています。

(カバー率の問題)
 カバー率は日本の河川行政で大きな問題?になっています。というよりも、問題にすると、あまりにも影響が大きいので、「問題ではない」ということにしよう、これも言い訳しにくいから、解析手法を変えて「基準」も改訂しようという気配?もあります。
というのは、石川県の犀川(辰巳ダム)ばかりではなく、全国すべての計画でカバー率を100%として計画洪水量を決めているようなのです。筆者の関心は「辰巳ダム」だけだったので、他の県のことはあまり関心がなく、つい最近まで知らなかったのです。
もし、100%とすると、論理的に矛盾が山のようにでてきます。結論は誤りです。長くなりますので、ここではその理由を省略します。(注:今年の1月から3月にかけて県や犀川水系河川整備検討委員会事務局へ提出した「意見書」、「公開質問状」を参照してください。)

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