その1 能登町公共事業再評価について(平成23年は水道事業3件)

−社会環境激変の中で従来の延長線上で公共事業を進めてよいのだろうか。−

(能登町の公共事業再評価委員会)
能登町でも石川県と同じように公共事業の再評価をしていることをホームページの案内で知った。毎年、町内の学識経験者による委員会が開かれ、今年のテーマは、上水道と下水道の事業3件について議論されていた。
 その様子と議事録、資料は以下のところに掲載されている。
能登町で今年平成23年9月に実施された委員会の議事録と資料のURL.
http://www.town.noto.lg.jp/www/info/detail.jsp?common_id=2985

(委員会の議論)
 学識者に対して町担当部署員が上記の事業に関して、1時間程度の説明があったようだ。議事録によれば、町の説明は、「厳しい財政事情もあり、事業が遅れながらも事業進捗して支出費用は積み上がっていること、一方、収入に関しては、経済情勢の悪化などから、町民の施設利用率があがらないことや利用量の減少などで収入が細る傾向にあり困っている。けれども最善を尽くしている。」である。これに対して、学識経験者の議論は、一言で言えば「それは大変ですね。頑張ってください。」というようなことで、「すべて事業は継続する。」という意見具申がなされている。

(意見具申「事業継続する」?)
上下水道は、町全体の末端の隅々の家まで連続して管をつなぐことでサービスを提供する事業であり、町民全体に等しいレベルのサービスを提供するためには、途中で止めることができないのである。委員会を開かなくても、「事業継続する。」は当然であり、このような議論であれば開催する必要はあまりないのではと感じた。本当にこんな議論をする場なのであろうか、疑問を持ったので、能登町の要綱(能登町公共事業再評価実施要綱)を確認してみた。
 能登町公共事業再評価実施要綱のURL.
http://www.town.noto.lg.jp/open/info/0000003969.pdf

(委員会が「事業は継続する」と具申するのは要綱逸脱!)
 要綱の第4条に(評価の手法)が記述されており、4つの視点(社会情勢の変化など)で再評価することになっており、この再評価の際、学識経験者の意見を聞くこと(第5条)になっている。事業継続の意志決定をするのはあくまでも町であり、委員会ではない。委員会では、4つの視点について、学識を披露すればよいのであって、その学識を受けて町は再評価を行い、結論はおのずと導かれることになるのではないか。チャベチャベと委員会が「事業は継続する」と言うことはないのではないか(^_^;)と感じた次第である。

(石川県の場合は、「事業は継続する」と具申しても要綱逸脱にならない!)
 そういえば、石川県公共事業評価監視委員会も毎年行われて、「事業継続は妥当」の答申がなされている。これも委員会の越権行為かなと思い、石川県の要綱を点検してみた。
石川県公共事業再評価実施要綱のURL.
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kanri/page2.html#1
 これを確認してみると、能登町の要綱の第4条にあたる(評価の手法)のところは抜けており、第5条で、学識経験のあるものの意見を聞くために委員会を開き、県に意見具申するとしか、記載されていない。委員会が「事業継続は妥当」という意見具申をしたとしても要綱には抵触しない?(やっぱり、要綱を作った県の役人の方が頭いい?(-_-;))

(公共事業再評価のしくみをつくった意義)
 行政が学識経験者を集めて「事業継続」のお墨付きをもらえば、議会や住民に説明しやすいという背景がある。行政としては、石川県公共事業評価監視委員会※で「事業継続は妥当」と意見具申してもらえば、行政の目的は達成されたわけである。
(※:年に1,2回、県庁の会議室で行われ、傍聴できる。今年の1回目は10月の下旬に行われ、傍聴者はいなかったようだ。当方も能登町に住むようになってから、久しく傍聴していない。)
 しかし、公共事業の再評価のしくみをつくった本当の意義は、公共事業の効率性と実施過程の透明性だから、透明性の一部は改善されたとしても、効率性、つまり無駄にお金を使わないことについては何も改善されていないのではないだろうか。

(奥能登の社会環境の激変)
 奥能登に住んで一番の関心は、過疎化である。奥能登4市町村の平均の年間人口減少率は約2.5%、10年で25%、20年で50%、つまり、20年で人口が半分になることになる。しかも、若者が流出して住民の平均年齢は年々高齢化しているので、将来的には単に直線的に人口減少するのではなく、加速度的に人口減少が進むことを意味している。さらに、過疎地の中でも人口集中と人口減少する区域に分かれている。このような社会環境の激変の中で従来の延長線上の考え方で公共事業、社会資本整備を進めていっていいのだろうか。何年後かに、末端の家まで水道や下水の管が到達したときに、その家の住人は途絶えていなくなり、集落自体も消滅していた、事業の借金は残ったが、これを利用し、維持負担する住民がいなくなったということにもなりかねない。

(感想)
 多分、役所は行政の継続性や無謬性もあって、事業の方向転換は大変苦手であるのだろう。だからこそ、利害関係のない学識経験のある人たちに広く意見を求める意義もあろうと思われる。社会の激変は身をもって感じているはずであり、もっと厳しく現実を見つめた白熱した議論がなされてもいいような気がした。

(意見書の提出)
 自分なりの意見をまとめて、町へ提出した。11月17日(木)午後、町上下水道課の課長のところへ(不在)。提出した文書のコピー
2011.11.18、中
公共事業再評価監視トップページへ