ダムの管理考える 5
by Toshiki NAKA
2016.7.29


小規模ダムのダム管理費用は

能登の小規模ダム(総貯水量約三百万立方メートル)の例
小屋ダム、八ヶ川ダム、北河内ダムの維持管理費用は、
それぞれ年あたり43百万円、42百万円、38百万円
ほかに不定期の大規模修繕あり!

石川県内には、12ヶ所の治水ダムがあり、管理中である。奥能登地区には、3つ目の北河内ダムが平成22年5月より、運用開始している。

能登地区3ダムの諸元は以下のとおりである。

名称

小屋ダム

八ヶ川ダム

北河内ダム

所在地

珠洲市宝立町

輪島市門前町

能登町

工期

S.48.4H.5.3

S.54.4H.7.3

H.3.4H.22.4

供用年数(H28現在)

23年

21年

6年

総事業費

189億円

118億円

178億円

目的

洪水、かんがい、上水、発電

洪水、かんがい、上水、工業用水

洪水、かんがい、上水

総貯水量

305万立方メートル

313万立方メートル

286万立方メートル

有効貯水量

270万立方メートル

287万立方メートル

259万立方メートル

ダム型式

ロックフィルダム

重力式コンクリートダム

重力式コンクリートダム

ダム堤高

56.5メートル

52メートル

47メートル

各ダムの諸元の出所:
八ヶ川ダム http://www.pref.ishikawa.jp/kasen/ishikawa-dam/dams/hakka.html
小屋ダム http://www.pref.ishikawa.jp/kasen/ishikawa-dam/dams/oya.html
北河内ダム
 http://www.pref.ishikawa.jp/kasen/ishikawa-dam/kitakawachi/kitakawachi_shogen.html

いずれも、多目的ダムであるが、主たる目的は「洪水調節」である。
以下のとおり、いずれのダムも流域面積は、約10平方キロメートル、洪水量はおおよそ10立方メートル毎秒以上である。

名称

小屋ダム

八ヶ川ダム

北河内ダム

流域面積

12.8km2

10.4km2

10.6km2

洪水量

15.0m3/秒以上

10.0m3/秒以上

10.0m3/秒以上


毎年のダム管理費および修繕・改良費は以下のとおりである。
毎年、おおよそ4千万円の費用が掛かっている。ほとんどが洪水調節に関わる費用であり、石川県が負担している。ただし、上水、かんがいなどに関わる費用については地方自治体が負担している。北河内ダムの例では、かんがい、上水の目的もあるが、建設負担金の割合は1%である。

 名称

小屋ダム

(百万円)

八ヶ川ダム

(百万円)

北河内ダム

(百万円)

毎年のダム管理費用

43

42

38

修繕・改良費(不定期の大規模修繕費)

115


 上記数値の根拠は、石川県河川課「ダム管理費予算調書」、「奥能登土木総合事務所支出命令票」などによる。
表1− 奥能登地区小規模ダムの管理費および修繕・改良費(大規模修繕費)
表2− 毎年のダム管理費と修繕・改良費集計(小屋ダム、八ヶ川ダムおよび北河内ダム)
表3− 毎年の維持管理費内訳集計(小屋ダム、八ヶ川ダムおよび北河内ダム)
表4− 修繕・改良費(八ヶ川ダム)

●毎年のダム管理費用評価のための簡単な思考(北河内ダムの例)
 当方の居住地から4km弱のところに北河内ダムがある。
 町野川流域全体の流域面積168km2(河口の天神橋基準点)に対して、北河内ダムの流域面積は10km2で10分の1以下であり、天神橋基準点における洪水調節機能はほとんど効果がないが、中流の柳田地区は流域面積に占める北河内ダム流域面積の割合は3割程度と大きいので洪水調節効果は期待できる。
ダムがまだ存在していない平成10年の台風7号でかなりの浸水被害が発生した。ダム地点の下流3〜5km付近(野田、石井)で河道から氾濫しておおよそ14億円の被害があった(『柳田村 30年のあゆみ』石川県柳田村,p.63)。
ダムで洪水調節をしていたならば、被害がゼロだったと仮定する。37年まえの昭和33年以来の大水害だということだから、40年に一度、大きな水害が発生するとして、その際の被害額を14億円とすれば、100年間で35億円に相当する。簡単に1年あたりに換算すると35百万円となるが、北河内ダムの毎年のダム管理費38百万円に近似する。

【資料】(平成10年の)台風7号で記録的な大水害(『柳田村 30年のあゆみ』石川県柳田村,p.63より)
「台風7号が9月22日夕、石川県内を襲い、1時間雨量が各地で観測史上最高を記録する「雨台風」となり、生活や産業に深刻な被害をもたらした。柳田村でも、午後8時からの1時間に41mmの雨を記録し、総雨量は99mmに達した。ただちに役場に対策本部が設置され、野田、笹川の一部に避難勧告が出された。町野川の増水で100世帯を超える家屋が浸水するとともに、収穫間近の水田や畑に泥流が流れ込むなどの被害額は14億円に上り、昭和33年以来の記録的な大水害となった。
柳田役場前では、増水した川から道路などに押し寄せる濁流がひざ上までに達した。」

本文のpdfファイル→クリック
2016.7.27,naka

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